保険会社を評価する「格付け」という指標があります。格付けとは何を基準にして決められるのでしょうか。格付けをしているのはどんな会社でしょうか。今回は保険会社の格付けについて解説します。
目次
保険会社の格付けとは
保険会社の格付けは、通常は保険会社が民間の格付け会社に依頼して行われますが、「保険金支払能力」や「保険財務力」などを独自に調べ、その結果を総合的に判断します。金融庁に登録されている主な格付け会社は以下のとおりです。
・S&P グローバル SF ジャパン株式会社
・株式会社日本格付研究所(JCR)
・ムーディーズ・ジャパン株式会社
・株式会社格付投資情報センター(R&I)
格付け会社はS&PやR&Iなどで表記されますが、それぞれの会社の略語です。格付けの基準は格付けする会社の判断になるため、複数の格付け会社を見て判断するとよいでしょう。
保険会社の信用力や健全性の指標
生命保険会社の格付けは、保険会社の財務や資産などの信用力と、経営状態の健全性を知ることができる指標です。評価が高いほど、保障額の支払いに問題がない会社とみなされるため、生命保険に加入するときの判断基準として利用ができます。
保険会社の格付けの種類
保険会社の格付けの種類は、AAAやAaaなどアルファベットで表記したものが多く、Aが多いほど評価が高い健全な経営状態の会社で、B、Cの順番でランクが下がりますが、A+やB-などもありA+ならAより上位で、A-ならAより下位です。AAAやAaaの評価であれば、保険契約を正常に履行する能力が高いと判断されますが、BBBに満たない会社は、不安要素を持った会社とみなされるケースが多いです。
保険会社の格付け以外の指標とは
保険会社の経営状態を調べるものには、格付けのほかに「ソルベンシーマージン比率」や「新規契約者数」「新契約年換算保険料」「保有契約年換算保険料」があります。保障額の支払い余力や、会社の業績の伸びを表しており、格付けと同様に会社の状態を知ることができる重要な指標と言えるため、生命保険の加入時には確認しておきたい指標です。
ソルベンシーマージン比率
保険会社には格付けと同じような「ソルベンシーマージン比率」があります。生命保険会社は保険金などの支払額を事前に予測しますが、自然現象などで支払いが大幅に増えたときに、どれだけ余力があるかを計算したものです。
ソルベンシーマージン比率は、格付け会社ではなく生命保険会社が発表するもので格付けとは分けて考える必要があります。この数字が大きいほど、リスクに対しての準備ができている会社で、保有資産をリスクと指数で割った結果をパーセントで表記します。通常は200%以上の会社が安心して加入できる目安ですが、比率が大きいほど安定性がある会社と判断されています。
新規契約者数や新契約年換算保険料、保有契約年換算保険料
格付けは保険会社からの申請で行われるため格付けのない会社もあります。その場合、「新規契約者数」や「新契約年換算保険料」「保有契約年換算保険料」を調べる方法があります。年換算保険料は、月払いや年払いなど異なる支払い方法を調整して契約期間中に平均して支払うと仮定した場合、生命保険会社が保険契約から1年で保険収入をいくら得ているかを表す数字です。
保険会社の格付けが重要な理由
格付けの低い保険会社は破綻するリスクがある
保険会社は保険料の収入や運用で収益を上げますが、格付けが低い会社は破綻するリスクがあります。約束した保障額の支払いに耐えられなければ、会社は経営を続けられず、保険に加入した人たちも受け取りができるかどうかわかりません。格付けが低ければ会社の経営に何か問題があるため、評価を確認することには重要な意味があります。
保険は給付金が高ければよいとは限らない
保険料に対して給付金が高い保険がよいとは限りません。会社の財力に見合った給付金ならよいですが、保険料収入が伸びず、新規契約を獲得するために無理をして給付金を払っている可能性もあります。
保険は信用で成り立つ商品
保険は信用で成り立つ商品で、加入者は大事なお金を保険会社に預けます。保険会社はよい商品を提供するだけでなく預かったお金を管理・運用して、将来の支払いのために準備をすることが重要です。格付けは保険会社への信用度がわかる指標で、第三者機関の客観的な評価を見ることで、信用のある会社かどうかの判断ができるでしょう。
保険会社が破綻したらどうなる?
保険会社が経営破綻したらどうなるのでしょうか。保険会社は保険業法で保護されているため、一定の契約者保護が行われます。救済方法は「救済保険会社」か「生命保険契約者保護機構」が引継ぎします。
救済保険会社が現れたケース
加入している保険会社が破綻しても、救済保険会社が現れたケースでは保障内容を変えずにそのまま継続できる可能性があります。
生命保険契約者保護機構が引き継ぐケース
「救済保険会社」が現れなければ、「生命保険契約者保護機構」が契約を引き継ぐケースがあります。保護されるのは破綻した保険会社が積み立てた準備金(責任準備金)の90%までであり、保険金や年金額ではないことに注意しましょう。
保険会社の格付けはどう役立てる?
保険会社選びのひとつの目安
生命保険に加入するなら評価が高い会社を選びたいのはもちろんですが、自分のライフサイクルに合った商品を選ぶことも大事です。またケガや入院のときの手続きが簡単で、担当者が親切で相談がしやすい点も重要なポイントです。格付けは保険会社選びのひとつの目安として役立てましょう。
格付けは将来を保証するものではありません。一時的な結果だけでなく、過去の実績も含めて長期的に評価が高い会社を見極める必要があります。
まとめ
生命保険会社の格付けは普段は目にすることが少なく、基準もわかりにくいものです。格付けの意味をよく理解すれば、かしこい生命保険選びに活用できるでしょう。保障内容も合わせて総合的に判断することが大事です。