生命保険について考えなければならない年齢になったけれど、難しくてよく分からないという人もいるかもしれません。生命保険について今更知り合いにも恥ずかしくて聞けない、ということもあるでしょう。そんな人のために生命保険の基礎をまとめました。生命保険の種類から選び方などもご紹介します。
目次
そもそも生命保険とは?
まず、生命保険の目的や構成、契約時までに決めておくべきことなどの基本的な部分を確認していきましょう。
死亡や病気で必要となるお金の準備
生命保険の目的は、将来、死亡や病気で必要となるであろう資金を準備することにあります。突然の病気や怪我、介護、死亡時にかかる経済的な負担に備えるために加入する保険が生命保険です。また、生命保険の加入者全員が公平に保険料を支払い負担することで、万一の場合に給付が受けられる仕組みになっています。
「主契約+特約」が基本の構成
生命保険には主契約と特約があります。主契約は、死亡保障やがん保障といったような保険の基礎となる部分を指します。特約とは、主契約の補償内容に上乗せをするオプションの補償です。主契約では賄いきれない細かい部分をカバーするために加入します。大きく分けると、死亡保障を手厚くするもの、死亡や障害状態のために準備するもの、病気や怪我の治療のために準備するもの、特定の病気や怪我の治療のために備えるものなどが特約の性格です。
また、特約は保険会社によって保障内容や給付条件が多様になっており、主契約によっては付加できない特約もあるため、事前に十分な確認をしておきましょう。
契約時に決めておくべきこととは
生命保険加入時には、保険契約者・被保険者・受取人を決めなければなりません。保険契約者とは、保険会社と契約を結ぶ人です。保険契約者になると、契約上のさまざまな権利と義務が課されます。例えば、契約上の権利とは契約内容変更の請求権といった権利、義務とは保険料の支払い義務などを指します。被保険者とは、保険の対象となる人です。保険契約者と被保険者は同一にも不同にもできます。
受取人とは、保険会社から支払われる保険金や給付金、年金などを受け取ることができる人です。受取人として指名できる人は、基本的には配偶者か二親等以内の親族に限られますが、事情によりやむを得ない場合は例外も発生します。保険会社によっては、内縁関係や婚約関係にある人でも指名でき、同性のパートナーでも受取人にすることができる場合があります。また、受取人の人数は一人だけではなく複数の指定もでき、契約後の受取人の変更も可能です。
生命保険の基本的な種類は?
生命保険の基本的な種類は3つしかありません。それぞれご紹介していきましょう。
保険料が安く掛け捨てが多い定期保険
保障期間が一定期間内で、掛け捨て型のために保険料が安く抑えられている保険です。「掛け捨て」とは、保険を途中で解約した際に戻ってくる解約返戻金や、満期時に支払われる満期保険金が少ないものを指します。また、解約返戻金や満期保険金が少ないため、保険料が抑えられていることが特徴的です。決められた期間だけ保障を備えたい人に適しています。
保険料は高くても貯蓄型の養老保険
定期保険と同じく一定期間の保障期間を持つ保険ですが、解約返戻金や満期保険金などがしっかりと支払われる保険です。万が一、被保険者が保険期間内に死亡した際には死亡保険金を受け取ることができ、満期の際には死亡保険金と同じ額の満期保険金が給付されます。そのため、「貯蓄型」の性格が強い定期保険です。掛け捨て型の定期保険よりかは保険料が高い傾向があります。
保障が一生涯続く終身保険
保障が一生涯続くため、被保険者が何歳で死亡したとしても保険金が支払われる保険です。途中で解約した場合は、解約返戻金を老後の資金や葬儀費用として使用することもできます。
死亡保険との違い
生命保険と似た言葉で死亡保険というものがあります。死亡保険は被保険者が死亡した場合や、所定の高度障害状態になった場合に、死亡保険金や高度障害保険金を受け取ることができる保険です。支払われる保険金の額を一定範囲内で設定することが可能で、それによって保険料額が変動します。保険会社によっては、「死亡保険」という呼称を生命保険と同じ意味で用いているところもあり、生命保険のことを死亡保険と呼んでいるところもあります。
死亡保険と生命保険の違いは、死亡や高度障害状態に特化して保障が受けられる点にあります。被保険者が死亡した場合や高度障害状態に陥ってしまった場合のための保険なので、家族のための備えとしての側面が大きい保険です。遺族や、被保険者を支えなくてはならない家族の経済的負担を減らす目的があります。
生命保険の選び方や注意点は?
各保険会社が多くの保険商品を取り扱っていますが、自分に合った保険を選ぶには何を基準にして選べばよいのでしょうか。3つのパターンに分け、チェックしていきましょう。
保険料や保険期間、払込期間で選ぶ
年収ごとの保険料の平均から自分に見合った保険を探す方法です。保険料は保険期間や保険料払込期間によっても変わってきます。保険期間(保障期間とも言います)とは、保険会社が給付金や保険金の支払いを保障する期間を指します。被保険者の死亡や入院などのような保険事故が生じた場合に、支払いの対象となる期間です。
保険料払込期間とは、保険契約者が保険料を支払う期間を指します。例えば、終身満了保険の場合、保険料払込期間は一生涯です。
基本的には、保険期間を長くすれば月払いの保険料は上がり、短くすれば保険料は下がります。また、保険料払込期間を長くすれば月払いの保険料は下がり、短くすれば保険料は上がります。総支払額においては大きな差とはなりませんが、月々の支払額を自分の収入に見合ったものにすると負担になりにくいでしょう。
年収別の払込保険料の平均ですが、生命保健文化センターの2010年度の調査によると、年収300万円未満だと1.45万円、300~500万円未満だと1.63万円、500~700万円未満でだと1.75万円、700~1000万円未満では2.05万円という結果が出ています(学資保険、個人年金保険なども含む)。このように年収の約3~6%を平均月額保険料にあてている世帯が多いようです。
死亡保障をシミュレーションして選ぶ
将来のために備えておかなければならない必要保障額をシミュレーションし、保険金額の目安を算出して保険を選ぶ方法があります。必要保障額は独身なのか、夫婦なのか、子どもの有無などで変化します。
例えば、独身では葬儀費用など、夫婦では葬儀費用や遺族の生活費など、子どもがいる夫婦では葬儀費用や遺族の生活費に加え、子どもの養育費なども必要になってきます。実際にいくらぐらいかかるのかは、web上のシミュレーションサイトなどで試算が可能です。そこで算出された金額をまかなえるような保険を検討してみるのもいいでしょう。
積立を重視したい時は途中解約に注意
老後の貯蓄として生命保険の加入を考える場合は、積み立て型の保険が適しています。しかし、積み立て型の保険は途中で解約をすると、解約返戻金が払込保険料を下回る場合もあるため、注意しましょう。
死亡保険金に税金はかかる?
死亡保障金にかかる税金は契約時の内容により3つのパターンに分かれます。それぞれを見ていきましょう。
保険契約者=受取人の場合…所得税
保険契約者と受取人が同じである場合、所得税になります。保険契約者は保険料の支払いをしている人です。そして受取人も同じということは、自分で支払った保険料を受け取ることになるので、所得税がかかるという仕組みになります。ただし、所得税がかかるのは、受け取る保険金が支払った保険料よりも多い場合です。
さらに、死亡保険金を一括で受け取った際は、一時所得となり、50万円を控除することができます。支払った保険料に50万円を足した金額を、受け取った死亡保険金の総額から引くと一時所得の金額が算出できます。そして算出された一時所得の半分が課税対象となります。
保険契約者=被保険者の場合…相続税
保険契約者と被保険者が同じであり、被保険者が亡くなった場合、相続税になります。例えば、保険契約者と被保険者が夫で、受取人を妻とすると、夫が払い込んだ保険料が妻に相続されることと同じになります。
また、500万円×法定相続人の数により非課税枠が変動します。法定相続人が1人の場合の非課税枠は500万円、二人の場合は1000万円というように算出できます。相続人を受取人としないと非課税枠が適用されないので注意しましょう。
いずれも異なる場合…贈与税
保険契約者と被保険者、受取人のすべてが異なる場合は贈与税になります。例えば、被保険者が夫で、契約者が妻、受取人を子どもとします。契約者である妻が支払った保険料を子どもが受け取るかたちになり、かつ契約者はまだ生きているので、生前贈与として考えられます。
年末調整の手続きはどうすればいい?
生命保険に加入している場合、年末調整や確定申告の際に申告をすると、生命保険料控除を受けることができます。
生命保険料控除がある理由
生命保険料控除は税負担を軽減する制度で、所得控除のひとつです。生命保険に加入していると、社会保障だけに頼らずに自助努力をしているという点から、税負担が軽減されます。
新制度・旧制度とは
2012年1月から生命保険料控除が改正されたため、生命保険料控除制度が旧制度と新制度とに分かれました。旧制度は2011年12月31日以前に契約した生命保険を対象としており、新制度は2012年1月1日以後に契約したものが対象です。生命保険料控除の計算方法は、所得税と住民税でも違ってきます。
生命保険料控除は保険の種類によってさらに3つに分けられるため、旧制度と新制度が適用される保険の両方に加入している場合もあるでしょう。その場合は、旧制度だけを適用するか、新制度だけを適用するか、新旧を組み合わせて適用するかの3パターンがあります。新旧を組み合わせて適用する場合は、上限額が決められており、所得税で12万円、住民税で7万円となっています。
会社員は会社が代行してくれる
会社員や公務員、パートタイマーやアルバイトの場合は、生命保険料控除の手続きを会社が代行してくれます。保険料控除申告書が配られるため、必要事項を記入し、会社に提出するだけで完了します。
自営業者は自分で確定申告
自営業者は年末調整がないため、確定申告で生命保険料控除の申請をしなければなりません。確定申告書に控除証明書を添付することで完了します。
控除証明書をなくしてしまったら
もし控除証明書を紛失してしまった場合、保険会社に再発行を依頼すれば再発行が可能になります。また、再発行にかかる日数は依頼方法などによって異なるため、保険会社にしっかり確認しましょう。
継続・見直し・解約の判断ポイントは?
生命保険も定期的に見直しをすることで保険料を節約することができたり、自分に合った保障を受けたりすることができます。
契約更新時期や満期の到来
保険には更新型と呼ばれる、更新ごとに保険料が上がるものがあります。また、医療保険などは最新の保険商品のほうが現代の医療事情に適していることが多いでしょう。また、貯蓄型の保険だと、古いものは予定利率が高めだったりするために、他の商品に切り替えないほうが得をすることもあります。契約更新期間が近づいてきたら、医療保険の内容と貯蓄性を再度確認してみましょう。
ライフステージや収入の変化
例えば、独身時代であれば死亡保険の必要性はあまりありませんが、結婚をして子どもが生まれるなど、扶養家族が増えると必要保障額も変わってきます。このようにライフステージが変化すると、保険に入る目的や保険金の金額も合わせて変化します。
また、収入の変化により、保険料を上げて手厚い保障を受けられるようにしたり、反対に保険料を下げたりという必要が出てくることもあります。
解約返戻金の金額をチェック
上のように、ライフステージやライフサイクルの変化によって必要な保障額が変化するため、解約返戻金や満期金に過不足がないかも見直すポイントになります。また、ある時期を過ぎると解約返戻金が払込金額を超える保険もあるため、いま解約したら解約返戻金はいくら貰えるのか、解約時期と金額を確認しておくといいかもしれません。
1人で悩むより専門家に相談を
より自分に適した生命保険は、それぞれの家庭の状況やニーズによって異なります。特に生命保険の継続や見直し、解約に関しては、専門家の視点も必要になるでしょう。1人で悩んでいても分からない場合は、専門家に相談をするほうがいいでしょう。
まとめ
生命保険は保険会社がさまざまな商品を出していますが、基本的には3種類に分かれることが分かりました。また、自分に適した保険を選ぶには保険料や必要保障額、貯蓄性の有無などが重要になります。生命保険の基本が理解できたら、各保険会社の商品を比較してみるといいでしょう。