「保険料の支払いが難しくなった」「ライフステージが変わった」など、保険の見直しを行う上で選択肢のひとつとして挙がってくるものが保険の解約です。しかし、現在加入している保険を解約し、新しく入り直すことが得策ではない場合もあります。生命保険を解約する際に注意すべき点をご紹介しましょう。
目次
生命保険の解約返戻金とは?
生命保険には掛け捨てだけでなく、解約返戻金(解約払戻金)があるタイプのものもあります。貯蓄を目的として保険に加入する場合、解約返戻金があるタイプを選ぶ人も少なくありません。解約返戻金のシステムを見ていきましょう。
生命保険によって解約払戻金がある
解約払戻金がある生命保険は、養老保険や終身保険などが多いです。解約払戻金は契約してからの年数によって、返戻率が徐々に高くなる仕組みとなっています。そのため、早い時期に解約をしてしまうと、解約返戻金があまり貰えないことがほとんど。契約から10年を超えなければ、解約返戻金は払い込んだ保険料の7割程度となり、20年目でも8割に達しません。満了時に10割を超えるものが多いため、解約払戻金の上昇率を確認しておくことも、保険選びの際には重要になります。
解約払戻金があるタイプの生命保険
積み立て型の保険であれば、ほとんどは解約払戻金があるタイプとなります。その中でも、特に終身保険や養老保険は返戻率が高く、一定の契約期間が経過していれば、満期以前に解約しても払い込んだ保険料の多くが返ってくる傾向にあります。逆に定期保険や医療保険などは掛け捨ての場合が多いです。終身保険や養老保険に加入していても、特約で定期保険や医療保険を付帯している場合には注意が必要となります。主契約以外で掛け捨て型の保険を付けていると、解約返戻金が少額になってしまうためです。解約返戻金を目的として保険に加入する人は、特約として選ぶ保険も掛け捨てではないものを選びましょう。
解約払戻金の種類による違い
解約払戻金は「従来型」「低解約返戻金型」「無解約返戻金型」の3種類があります。
従来型は、契約年数に応じて返戻率が高くなっていくタイプ。終身保険や養老保険に多く、契約年数が長ければ長いほどメリットがあります。低解約返戻金型は、従来型よりも返戻率が少ないですが、その分保険料を安く抑えられる利点があります。「毎月の保険料は抑えたいけれど、解約払戻金も欲しい」という人にニーズがあります。無解約返戻金型は、掛け捨て型のことです。解約払戻金はありませんが、従来型や低解約返戻金型に比べて、保険料が安いことが利点として挙げられます。
解約返戻金にかかる税金
生命保険の解約返戻金を受け取る場合、条件よっては税金を支払わなければならないケースがあります。原則として、「利益(差益)」に対して税金がかかるため、「支払った保険料の総額」よりも「受け取った解約返戻金」の方が多い場合(=差益が発生する場合)に、税金の支払いが必要になります。
一般の保険商品の場合
一般の保険商品の場合、契約者・被保険者・受取人の関係によって、税金の種類が異なります。
契約人と受取人が同じ場合
契約人と受取人が同じ場合には、解約返戻金に「所得税」がかかります。「所得税」の計算方法は、解約返戻金の受け取り方によって異なるので、受け取り方にも注意が必要です。
- 解約返戻金を「一時金」で受け取った場合(=一時所得になる場合) : (差益 - 50万円)÷ 2 × 【所得税率】
- 解約返戻金を「年金」で受け取った場合(=雑所得の場合) : ※他の給与所得や雑所得の金額と合計し、所得金額を計算
契約人と受取人が異なる場合
契約人と受取人が異なる場合には、解約返戻金に「贈与税」がかかります。「贈与税」の計算式は以下の通りです。
(差益 - 110万円) × 【所得税率】- 控除額
贈与税については、関係性によって計算方法が変わる場合があるため、国税庁のホームページもご確認ください。
生命保険の解約によるリスク
生命保険を解約するにあたり、いくつかのリスクが伴うことがあります。
新しい保険に入れるとは限らない
新しい保険に入る際に、なんらかの病気で数年以内に通院の経験があったり、健康診断や人間ドッグで異常を指摘されていたりすると、加入が難しくなる場合があります。数年のうちに入院や手術が必要になりそうだと見込まれ、保険会社が保険金や給付金を支払う可能性が高いと判断するためです。また、そのような場合に、契約を受け付けないこともありますが、特別条件付きで契約を勧めることもあります。特別条件とは、保険料を一定の金額より高くしたり、特定の病気を保障の対象としなかったりするものです。生命保険の解約前に、自分の健康状態をしっかり把握することが重要です。
保険期間に空白が生じる可能性がある
現在加入している保険を解約した後に、新しい保険に加入しようとすると保障対象外となる期間が発生することがあります。特に、がん保険では、初回の保険料を払いこんだ日か告知日のどちらかから数えて91日目を責任開始日としています。この責任開始日までにがんと診断されると、給付金などを受け取ることができなくなってしまいます。また、補償対象外の期間にがんと診断されると、保険の契約は無効となるため、注意しましょう。
生命保険を解約した方がよいケース
上記のリスクを勘案したうえでも、生命保険を解約することを検討したほうがよいケースは以下の場合が考えられます。
保険料の支払い負担が大きすぎる場合
保険は万が一の場合への保障として、安心を得ることができるモノですが、現状の生活を圧迫しすぎる保険料支払いがある場合には、加入している保険を見直した方がよいかもしれません。
次のよりよい保険が決まっている場合
前述したリスク(新しい保険に入れる/保険期間に空白期間がない)ことがわかっている場合、現在の保険を解約しても問題ないかもしれません。ただし、保険は商品によって保障内容や制限が異なる場合があるため、しっかりと商品の違いを理解してから、解約を行うようにしましょう。
生命保険を解約しない方がよいケース
場合によっては、現在加入している生命保険を解約しない方がお得なこともあります。具体的なパターンを見ていきましょう。
予定利率が高い
現在入っている保険が2000年以前に加入したものであれば、解約をしないほうがお得だと言えます。保険の予定利率や保険料は、その時々の金利情勢に合わせて変動していきます。現在では予定利率が1.0%程度となっていますが、2000年以前はおよそ2.0%でした。このように予定利率が高い保険は「お宝保険」とも呼ばれ、貯蓄に向いた保険となっています。しかし、解約払戻金の金額によっては課税対象となる場合があるため、注意しましょう。
新しく加入する保険の解約払戻金の利率が低い
解約する前には、新しく加入する保険の解約払戻金の利率も忘れずチェックしておきましょう。毎月の支出を抑える目的で保険料が安いものに切り替えると、将来的に解約払戻金が少ないという場合があります。
若い頃に加入している
保険の多くは若い時に加入をすると保険料が安く設定されています。終身保険を例に挙げて説明すると、満期が60歳となっている保険に30歳で加入すると、保険料を30年分割で支払うことになり、もし50歳で加入した場合は10年分割で支払わなくてはいけないためです。定期保険では、払い込む期間はどんな年代でも同じですが、年齢が高くなるにつれて病気のリスクも高まってくるため、保険料も高くなってきます。
保険料の支払いを抑えて生命保険を解約しないための方法
このように、生命保険の解約にはさまざまなリスクが潜みます。それでは、「現在加入している保険料が高いために、新しい保険に切り替えたい」と考えている人はどうすべきでしょうか。保険料の支払い金額を抑えながら、現在の保険に加入し続けていく方法がいくつかあります。
特約を減らす
特約部分を解約することにより保険料を減らす方法です。保障の手厚さを求めて特約を付けることは安心感にも繋がりますが、本当に必要な主契約のみを残すことで毎月の支出を削減することができます。
払済に変更する
現時点までに保険に積み立てられている保険料を利用して、将来の保険料を支払ってしまう方法です。保障額は小さくなり、特約も解約となりますが、保険料の支払いの必要がなくなります。この際に、積み立てたお金が余っていると解約返戻金として戻ってきます。
契約者貸付制度を利用する
現在加入している生命保険の解約返戻金を担保にして、保険会社から貸付を行ってもらう方法です。貸付限度金額は解約返戻金の7~9割の中で設定されます。またお金を借りられるのは契約者本人のみとなり、利子も発生するため注意をしなくてはいけません。
まとめ
生命保険を解約する際には、さまざまなリスクや、解約しないほうがお得な場合などがあります。そうしたリスクを知り、保険料を抑える方法などを実践していくことで不必要な解約を免れることができます。保険に入った目的などを改めて考え、保険内容を見直していきましょう。