妊娠中には考えることや準備することがたくさんあります。中でも、経済的な不安に関してはできるだけ解消してから出産を迎えたいと考える人は少なくないのではないでしょうか。いざお金が必要になってから慌てることなく出産に臨むためにも、必要な出費やもらえるお金について確認しておきましょう。
目次
妊娠から赤ちゃん誕生までの費用
妊娠中に必要な費用
妊娠中に必要な費用のうち大きなものは、妊婦検診費です。一般的な妊婦検診の回数は15回前後で、1回あたり5000円弱がかかります。検査項目が多いときは1万円を超える場合もあり、家計への負担が考えられます。
妊娠・出産には健康保険が適用されないため、全額自己負担が原則です。しかし、妊婦検診には公費による助成があります。助成内容や金額は自治体によって異なるため、母子手帳の交付を受けたら妊婦検診補助券等で確認しておくことが大切です。
マタニティ用品やベビー用品の購入費用については、個人差が大きい傾向にあります。つい色々と購入したくなってしまうという人もいますが、マタニティ用品やベビー用品の使用期間はそれほど長いとは言えません。産後も授乳服として着られるマタニティ服を選んだり、ベビー用品はレンタルやリサイクル品で探したりして出費を抑える工夫をするのも良いでしょう。
出産に必要な費用
帝王切開での出産は自然分娩と比べて入院期間が長く、費用も高額になりやすいと言えます。一般的な分娩費用として自然分娩では15~25万円、帝王切開では20~30万円程度が見込まれ、入院費用や新生児管理保育料などの諸費用が別途必要となります。出産を行う医療機関などによって各費用には違いがあるため、事前に確認しておきたいポイントのひとつです。
妊娠や出産は健康保険の対象になる?
健康保険がおりるケース
妊娠・出産は病気ではないため、健康保険の適用対象外です。しかし、妊娠・出産に伴う疾病についてはその限りでなく、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、流産・切迫流産や早産・切迫早産など、医療行為が必要な出産には健康保険が適用されます。たとえば、自然分娩に健康保険は適用されませんが、帝王切開は手術によって出産を行うため適用の対象となります。
悪阻や切迫流産も「傷病手当金」の対象
妊娠は病気ではないとはいえ、経過が順調な時ばかりとも限りません。妊娠にともなう体調の急激な変化により、それまでどおり働くことができないケースもあります。
「傷病手当金」は、就労中や通勤中以外の病気やけがによる療養のために連続して4日以上仕事を休み、給与を受けられないときに健康保険から支給されます。支給額は標準報酬日額の3分の2です。健康保険の被保険者が妊娠悪阻・切迫流産などで入院したり、医師から自宅安静を指示されたりして連続4日以上欠勤した場合、医師の証明をもらうことによって傷病手当金の申請ができます。
「高額療養費制度」も適用される
健康保険の適用対象であっても自己負担額が高額となった際(帝王切開や切迫流産のための入院など)には「高額療養費制度」が適用されます。「高額療養費制度」とは、自己負担限度額を超えた分の医療費が健康保険から支給されるという制度です。自己負担限度額は収入や年齢、加入している健康保険によって異なりますが、1カ月でおよそ8万円ほどです。
また、入院や手術などの高額な診療を受ける可能性がある場合は、事前に「健康保険限度額適用認定証」の交付を受けておきましょう。この認定証を病院等で提示することにより、医療費を自己負担限度額内での支払いとすることができます。
出産で健康保険から支給されるお金
一律で支給される「出産育児一時金」
健康保険の被保険者または被扶養者が出産したときは、1児につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40万4千円)が支給されます。出産前にまとまった費用の準備が可能な人ばかりではないため、出産育児一時金の直接支払制度を利用することが一般的です。
直接支払制度とは、健康保険から病院等に対して出産育児一時金を直接支払う制度です。つまり、妊婦さんは実際の自己負担額から42万円を差し引いた金額を支払えばよいことになります。出産を希望する医療機関が直接支払制度を取り入れていない場合でも、受取代理制度や出産費資金貸付制度などを活用できることがあるため、一度問い合わせてみましょう。
「出産手当金」は勤務先の健康保険の被保険者のみ
勤務先で健康保険に加入していれば、以下のような場合には標準報酬日額の3分の2にあたる「出産手当金」を受け取ることができます。
・出産予定日以前42日(双子以上は98日)から出産日の翌日以後56日までの期間について出産のために仕事に就けず、給与を受けられない場合
退職などにより被保険者資格を喪失した後でも、被保険者期間が1年以上あり、退職日において出産手当金の受給要件を満たしていれば、出産手当金を請求することができます。ここでポイントとなるのは「退職日において」という点です。退職日に挨拶等のために出勤して給与が発生した場合には出産手当金の支給対象外となるため、注意が必要です。
妊娠・出産で民間保険は加入するべき?
民間保険において保険金をもらえる条件の確認が必要
妊娠や出産には多額の費用がかかるため、民間保険に加入していると、より安心して出産に望むことが可能になります。ただし、加入している保険の条件によっては、保険金がもらえない可能性があるため、しっかりと保険金がもらえる条件を確認する事が必要です。例えば、ほとんどの生命保険の場合、入院保障を付加する場合には特約に入る必要があります。また医療保険では、入院費は保障対象になっていますが、手術費や交通費は、保障対象外となっている場合があります。
現在、保険に加入している人は、自身が必要としている保障内容となっているか否かを確認し、場合によっては、保険の見直しも検討するとよいでしょう。
自然分娩は保険の対象外
一般的に、民間の医療保険において自然分娩は支払いの対象外の場合が多いです。しかし、前期破水からの自然分娩の場合や、自然分娩後に医療行為が必要になった場合は、一部が健康保険の適用対象になるため、医療保険の入院給付金が支払われる可能性があります。民間の医療保険は、健康保険が適用されるかどうかを目安としているケースが多いので、加入している保険会社に問い合わせてみましょう。
帝王切開は医療保険の適用対象
手術を保障対象としている医療保険等に加入していると、帝王切開は支払い対象となるケースが多数です。医療行為による出産であるため、手術給付金と入院給付金についても適用対象となることが多いものの、保険によっては対象外である場合もあります。不明点については事前に確認しておくことが大切です。
また、帝王切開による出産で医療保険の給付金を受けると、そこから5年間は同部位に関する疾患が保障の対象外となることがほとんどです。つまり、5年以内に複数回の帝王切開を行った場合、2回目以降は給付金が支払われないこともあると覚えておきましょう。
保険の加入時期に注意
妊娠が分かってからでも、妊娠27週目までであればほとんどの民間の医療保険に加入できます。ただし、多くは「特定部位の不担保」という条件付きになります。特定部位の不担保とは、特定の体の部位(妊娠中の場合、子宮など)または指定の疾病(異常妊娠や異常分娩)については保障の対象外となることを指します。
例えば、子宮外妊娠や帝王切開といった妊娠・出産に関係する疾病については給付金が支払われないことになります。そのため、妊娠や出産のときに医療保険の給付金を受け取りたいと考えるのであれば、妊娠前の加入がすすめられます。
まとめ
公的な給付金によるサポートがあるとはいえ、妊娠や出産には予定外の出費が発生することもあります。手続きや給付のタイミング、支給される金額などを事前にしっかりと確認し、不備のないように備えておきましょう。