一家の大黒柱が亡くなった時、遺族の生活の支えとなる遺族年金ですが、「年金に加入していれば必ず支給される」というものではありません。この記事では、遺族年金を受給できる条件や受給の対象となる人、手続きの方法などを詳しく説明しています。いざという時に困ることのないようにしっかりと確認しましょう。
目次
遺族年金って何?
遺族に給付される公的年金
年金制度は「公的年金」と「私的年金」に分けられます。公的年金は国が保険者(保険事故が発生した時に保険金の支払いを引き受けるもの)で、私的年金は民間の金融機関などが主体となって運営されています。
家計を主に支えてきた人が死亡した場合、遺された家族の生活基盤は損なわれてしまう可能性があります。遺族の生活を少しでも支えるために、国が遺族へ支給する年金が「遺族年金」です。
遺族年金は2種類に分かれる
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。「遺族基礎年金」とは、子どもがいる配偶者や子ども自身が遺族となった場合に「国民年金」から支給される年金です。「遺族厚生年金」は、遺族に対して「厚生年金」から支給される年金で、子どもがいなくても支給されるように定められています。
遺族基礎年金の受給条件は?
遺族基礎年金(以後、遺族年金という)の受給条件を満たすのは、次のいずれかに該当する人が死亡した時です。
・国民年金の被保険者
・国民年金の被保険者だった60歳以上65歳未満の日本国内在住者
・老齢基礎年金の受給権者
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人
以下では「国民年金の被保険者」が亡くなった場合について説明します。
亡くなった人が国民年金加入者である
日本に住民登録をした20歳以上60歳未満の人は、国籍に関係なく年金への加入が義務付けられています。そのため、全員が国民年金の加入者(被保険者)であり、一定の条件を満たしていれば、遺された親族は遺族年金の受給対象者となります。
支払うべき保険料を納付済み
原則として、年金保険料を納付しなくてはならない期間の2/3以上を納付していることが受給の条件です。もし、納付期間が2/3以上に満たない場合でも、2026年4月1日までの期間であれば次のような特例が認められています。
・65歳未満の被保険者が死亡した場合、死亡した月の前々月までの直近1年間に年金保険料の未納がなければ遺族年金の受給条件を満たすこと
受給資格があるのは配偶者と子供
遺族年金は、死亡した人と生計を一にしていた「子どもがいる配偶者(事実婚含む)」または「子ども」に支給されます。子どもとして認められるのは「18歳に到達する年度末まで」もしくは「1級・2級の障がい状態にある20歳未満」です。養子縁組による子や、被保険者の死亡時にまだお腹の中にいた子(胎児)についても「子ども」に含まれます。
遺族基礎年金がもらえない場合とは?
遺された妻(夫)が再婚したとき
死亡した被保険者の配偶者が再婚すると、遺族年金の受給権利を喪失します。婚姻届を提出していなくても、事実上の婚姻関係が認められれば受給の権利を失います。
年収が所得制限額を超える場合
死亡した被保険者の配偶者または子どもが、年間850万円以上の収入(年間所得655.5万円)を将来にわたって得ることができると認められる場合、遺族年金の受給対象外となります。ただし、5年以内に年収が850万円未満になることが確実であれば、受給の対象となります。
遺族厚生年金の受給条件は?
亡くなった人が厚生年金の加入者
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者(被保険者)または加入者だった人が死亡した時に支給される年金です。また、被保険者期間中に初診を受けた傷病が原因で初診日から5年以内の期間に死亡した場合や、1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡した場合も受給対象に含まれます。
支払うべき保険料を納付済み
遺族基礎年金と同様に、原則として年金保険料を納付しなくてはならない期間の2/3以上について納付があることが受給資格を満たす条件です。納付期間が2/3以上に満たない場合の特例についても遺族基礎年金と同様です。
受給資格があるのは扶養親族等
死亡した人に生計を維持(扶養)されていた配偶者(内縁関係含む)や子どもが遺族厚生年金の受給対象者です。また、父母、孫、祖父母も対象となっています。子どもと孫には年齢要件があり、18歳に到達する年度末を迎えておらず(1級・2級の障害状態の人は20歳未満)、かつ結婚していない人に限られます。
配偶者と父母、祖父母にも年齢要件があり、「被保険者が死亡した時、受給対象者(配偶者など)の年齢が55歳以上である場合に限る」とされています。また、受給対象者が60歳になるまでは、年金の支給を停止するように定められています。
遺族年金をもらうための手続きとは?
死亡届の提出
死亡が確認された日を初日とし、7日以内に役所や関係支所の担当窓口へ死亡届を提出します。葬祭業者が死亡届の提出を代行してくれるケースもあります。
年金請求に必要な書類の作成と提出
死亡した人が国民年金に加入していた場合は「市区町村役場の担当窓口」で、厚生年金に加入していた場合や厚生年金加入者の扶養に入っていた配偶者である場合には「各都道府県の年金事務所」で手続きを行います。
手続きには「年金手帳」や「戸籍謄本」、「請求者の所得証明書」など、複数の書類を添える必要があります。人によって揃えなければならない書類は異なりますので、詳細は担当窓口へ確認しましょう。
もし、何らかの理由で請求手続きができない状態にある場合、社会保険労務士に手続きを代行してもらうことができます。代行手続きは有料ですが、遺族年金の請求者が体調を崩してしまったり、書類の取り寄せなどが大変だったりする場合に利用されることがあります。
遺族年金の請求可能期間は死亡日から5年以内となっており、5年を超えると時効になります。やむを得ない理由で5年を超えてしまった場合、申し立てを行うことで時効が撤回されるケースもありますが、手続きは複雑になる傾向にあります。なるべく早めに済ませておくようにしましょう。
まとめ
遺族年金の給付条件から、年金保険料をきちんと払っておくことは重要であるとわかりました。その他、受給対象となる人や手続きについても様々な要件があるため、情報を整理して把握しておきましょう。