自分に “もしも” のことがあったら、家族をどうやって守っていくか。そんな “もしも” のときに助かる生命保険ですが、生活の保障としてだけでなく、生命保険を相続対策として利用する人も少なくありません。なぜ生命保険が相続対策になるのでしょうか。受取人の違いと税金の違いをみていきましょう。
目次
生命保険は相続対象になる?
生命保険の死亡保険金は、一定の条件を満たすと相続の対象となります。厳密にいうと「相続財産」とは異なりますが、相続人が財産を受け取る形になるため、「みなし相続財産」と考えられます。
ただし、保険の契約者や受取人の指定によっては、「相続」ではなく、「所得」や「贈与」とみなされる場合があります。「相続」にすることで、相続税の非課税枠の控除を利用することができるため、「生命保険が相続税対策になる」形となります。以下で、相続対策をするための条件・計算方法について確認していきます。
生命保険の契約者や受取人による税金の違い
生命保険金の受け取りで発生する税金は、契約者や被保険者、または保険金受取人がだれかで変わってきます。
死亡保険金が「相続税」の対象となるケース
契約者と被保険者が同じで、受取人を配偶者または子どもにしている場合の死亡保険金は相続税の対象となります。相続税とは、そもそも故人から財産を相続する場合にかかる税金のこと。被保険者である契約者が支払ってきた生命保険料を元にした保険金を受け取るのは別の家族になるため、相続税の適用を受けます。相続税を節税したいと考えた場合は、この生命保険の活用が大きなポイントです。
死亡保険金が「所得税」の対象となるケース
契約者と受取人が同じで、被保険者が配偶者など、被保険者のみ違う場合は所得税の対象です。保険の対象となる人物は違うものの、契約者が支払ってきた保険を契約者自身が受け取るためです。自身で積み立ててきたものをもとに支払いを受けるので所得税の対象となります。相続税と贈与税は額に応じて10~55%、所得税は5~45%の税率となりますが、そもそも課税対象となる額が異なるので注意が必要です。
死亡保険金が「贈与税」の対象となるケース
契約者、被保険者、保険金受取人ともに違う場合は贈与税の対象となります。被保険者が亡くなった場合、基本的に契約者と保険金受取人は存命と考えられ、実質、契約者の積み立てた保険料から保険金受取人へ保険金が譲渡されたような形になるためです。贈与税の基礎控除は110万円ですが、ほとんどの場合で控除額を超える保険金が入ることが多いので、贈与税が発生するようにするのは、節税面ではよくありません。
相続税の非課税枠・基礎控除とは?
生命保険の死亡保険金の受け取りが相続税対策となる理由は、生命保険に非課税枠があるためです。非課税枠は税金のかからない額なので、非課税額の分だけ、死亡保険金から控除することができ、税金の支払いを少なくなります。
非課税枠があるのは法定相続人が相続する場合のみ
節税のために活用したい非課税枠ですが、注意点があります。非課税枠を適用できるのは、法定相続人が死亡保険金を受け取る場合のみだということです。法定相続人は、法律によって定められた相続人のこと。配偶者と被保険者の子どもが基本的な対象となります。配偶者も子どももいない場合は、孫などの直系の子孫、子孫がいない場合は被保険者直系の父母や祖父母。直系の親族が誰もいない場合は、被保険者の兄弟姉妹という順で法定相続人となれます。法定相続人でも相続放棄をした人、内縁の夫や妻は対象となりません。
死亡保険金の非課税枠の計算方法
生命保険金の非課税枠は法定相続人1人につき、500万円です。被保険者が死亡して、配偶者1人と子ども1人が残され、妻が2,000万円の死亡保険金を受け取った場合を考えてみましょう。
500万円×2人=1,000万円(非課税枠)
2,000万円-1,000万円=1,000万円(課税額)
課税額は1,000万円となるので、生命保険だけでみると1,000万円に対して相続税が課されることとなります。ただし配偶者に関しては税額の軽減があるため、他の相続分を加味しても相続税が発生しないこともあります。
死亡保険金が所得税や贈与税の対象となる場合の計算方法
それでは相続税ではなく、所得税や贈与税の対象となった場合はどうでしょうか。それぞれの死亡保険金の課税対象額を確認してみましょう。・所得税の場合
(死亡保険金 - 払い込んだ保険料の額 - 50万円)÷ 2
死亡保険金は、一時所得に該当します。50万円というのは、一時所得の特別控除の額です。払い込んだ額に対して死亡保険金の額が大きいと、それだけ所得税がかかることになります。
贈与税の場合
(死亡保険金 - 110万円) × 贈与税の税率 - 控除額
110万円は贈与の額が多くても一律に差し引ける基礎控除です。税率は死亡保険金から基礎控除額を引いた額に応じて変わってきます。基礎控除後の額が200万円以下なら10%、300万円以下なら15%、など最大55%まで金額に応じて税率が上がるしくみです。なお、税率と合わせて、基礎控除後の額が200万円を超えた時点から控除額が発生します。基本的に110万円しか保険金から差し引くことができないのが、贈与税にしてしまうことでのデメリットです。
生命保険の相続における注意点
相続放棄をした場合でも死亡保険金は受け取れる
生命保険の保険金は、亡くなった方の財産ではなく、保険受取人の財産となります。そのため「亡くなった方」の財産相続を放棄した場合でも、「保険受取人」の財産となる死亡保険金を受け取ることが可能です。
受取人が兄弟姉妹になっている場合
保険金の受取人は配偶者や子供となっている場合が多いですが、兄弟姉妹を受取人としている場合もあるかもしれません。受取人に兄弟姉妹を指定すること事態には問題がありませんが、相続との兼ね合いで親族間でトラブルになる可能性があるため、相続まで配慮して受取人を考えるとよいでしょう。
まとめ
生命保険が相続対策になる理由は、相続税の非課税枠があるためです。法定相続人の受け取りであれば、税金的に賢く死亡保険金を処理することができます。生命保険の契約を行う場合は、契約者以外に被保険者と受取人で損しないか、受取人は法定相続人か確認して進めるようにしましょう。