万が一の備えのための生命保険ですが、生活保護受給中は加入できるのでしょうか。また、生活保護の申請以前から加入している生命保険は継続可能なのでしょうか。今回は生活保護受給と生命保険加入の関係性について解説します。
目次
生活保護申請時加入している保険は?
解約返戻金30万以上は解約する
生活保護を申請した際に加入している生命保険がある場合、その生命保険の解約返戻金も資産とみなされるため、ほとんどの場合で生活保護の受給は認められません。まずは生命保険を解約し、受け取った解約返戻金を生活費に充てる必要があります。解約返戻金が30万円以上になる場合には、生活保護の申請前に加入中の生命保険を解約する必要があるということを覚えておきましょう。
保険会社に確認されるのでばれる
生活保護の申請を受け付ける福祉事務所は、申請者について親族の有無、収入や資産状況などを調査します。その際に各金融機関や保険会社、日本年金機構や雇用主等への調査を行いますので、生命保険に加入していることを隠していたり、虚偽の申請をしたりしても露呈する仕組みになっています。
生活保護者でも加入できる条件は?
死亡や障害を保障する保険
加入者の死亡や障害を保障する掛け捨ての保険へは加入できることがあります。掛け捨て保険は貯蓄型保険とは異なり、支払った保険料が戻ってこないため、生活保護費による生活保護受給者の資産形成にはならないからです。ただし、生活保護受給者には医療扶助や葬祭扶助が支給されるため、生命保険へ加入する必要性は低いと考えられています。
保険料が低額な保険
支払う保険料が低額であることも加入の条件のひとつです。生活保護受給中は、加入継続が許される保険料の上限額が決まっています。各市区町村によって金額は異なりますが、世帯あたり最低生活費の約10~15%が一般的です。しかし、生命保険の保障内容やその他の条件によっては解約を求められるケースもあります。
貯蓄型保険や高額な保険は継続できない
生活保護申請時に貯蓄型保険や高額な保険などに加入している場合、原則として生命保険を解約する必要があります。貯蓄性型保険や高額な保険の加入継続を認めると、保険料を生活保護費で支払うことになり、元は税金である生活保護費が個人の資産形成に使われることになるためです。また、「最低限度の生活」を保障するための生活保護制度と矛盾するという見方もあります。
保険加入の際の注意点
保険金の収入申告、返還の義務
生命保険の加入継続が認められても、生活保護受給中に保険金や解約返戻金を受け取った場合には、速やかに福祉事務所に収入申告しなければなりません。申告を行うと、その額に応じた生活保護費を返還する必要が生じます。
申告漏れを不正受給とみなされる可能性
生活保護受給者は年に1回、収入を申告する義務があります。このときに保険金の収入があったことが発覚すると、生活保護費の不正受給とみなされて生活保護の停止や廃止処分を受けるおそれがあります。また、生活保護の申請時に生命保険へ加入している事実を申告していなかった場合、解約返戻金・保険料の額などによっては解約を求められることがあります。
契約者の変更で契約・継続できる?
被保険者としてなら契約可能な場合も
生活保護受給者を被保険者とするケースであれば、生活保護者自身が保険料を支払うわけではないため、保険契約が可能となる場合もあります。ただし、生命保険の契約者が親や子、兄弟である場合には、支払う保険料分を生活費として生活保護受給者に現物支給するように福祉事務所から指導されることが多いようです。この場合、親族から支給された生活費は、生活保護費から差し引かれることになります。
契約者の名義変更で継続可能な場合も
契約者が生活保護受給者・その近親者などである場合、生命保険の加入継続が難しいことは前述のとおりです。しかし、「病気等によって就労が難しくなったために生活保護を一時的に受給し、治療後に社会復帰を希望する」という人であれば、生命保険を解約することに抵抗があるかもしれません。そのような場合、契約者の名義を別世帯の祖父母等に変更することで加入継続が認められるケースもあります。
保険継続、加入の際は役所に要相談
生活保護の受給や生命保険の加入が認められるか否かはケースバイケースと言えます。そのため、ひとりで判断をせず、担当窓口である福祉事務所やケースワーカーに相談してから手続きを行うことがすすめられます。その際、生活保護を受給する理由と併せて、生命保険に加入する必要性をしっかり説明できるように自分の中でも整理しておきましょう。
まとめ
生活保護は「最低限度の生活」を保障するための制度であるため、受給中には原則として生命保険への加入はできません。その理由を踏まえた上で加入を希望する場合には、福祉事務所やケースワーカーなどに相談して適正な手続きを行いましょう。