日々の生活に潜むリスクに対し、備えることができるのが生命保険です。生命保険には色々な種類がありますが、保険料は各商品によってさまざまです。この記事では、生命保険料がどのように決まっているのかについて説明します。生命保険を選ぶ際の参考にしてみてください。
目次
生命保険料の値上がりの原因は?
日銀のマイナス金利政策導入
保険会社は、加入者から支払われる保険料から事務経費や手数料などを引いた分を国内外の債券や株で運用し、保険金や満期金の支払いに備えています(これを「責任準備金」といいます)。責任準備金の主な運用先は、リスクが比較的少なく安定してお金を増やせるとされる国債であるため、責任準備金をどのくらい増やすことができるかという点には国債の利回りが影響すると考えられています。
日本では2016年2月にマイナス金利政策が導入されたことによって国債の利率が下がり、生命保険会社はこれまでと同じように責任準備金を準備していくことが難しくなりました。そのため、従来と同じ保障内容の保険を提供するにはより多くの資金を集める必要が生じ、このことが保険料の値上がりの一因とされています。
標準利率の引き下げを国が決定
保険料を決める要素のひとつに、責任準備金の運用指標となる「予定利率」があります。「予定利率」が高くなると、効率的にお金を運用することができるようになり、保険料は下がる傾向にあります。反対に、「予定利率」が低くなれば運用効率が下がり、保険料は上がることが多くなります。
「予定利率」を決める際に参考とされるのが、金融庁の定める「標準利率」です。「標準利率」は、2017年4月にそれまでの1%から0.25%に引き下げられました。これにより、保険会社は責任準備金の確保が困難となり、保険料の値上げや一部商品の販売停止へ踏み切らざるを得なくなったという背景があります。
標準死亡率の低下
平均寿命が延びていることを受け、2018年には「標準死亡率」が11年ぶりに見直されることとなりました。標準死亡率が下がると、死亡保険金の支払いも減少することが予想されるため、死亡保険や定期保険の保険料は下がるといわれています。
一方、医療保険やガン保険については、標準死亡率の低下は保険料値上げの要因になるとされています。なぜなら、平均寿命が延びると病気やガンの治療をする人が増え、保険金の支払いも増加すると考えられるからです。
保険によって値上げや値下げがある?
改定の原因は予定死亡率の低下
「予定死亡率」も生命保険料を決める一因とされています。「予定死亡率」は、過去の統計に基づいて年齢・性別ごとに被保険者の死亡者数を予測し、将来必要となる責任準備金額などを算出するために用いられるものです。この「予定死亡率」が低下すると、保険料の値上げ・値下げなどが発生する保険もあります。
医療保険とガン保険は値上げの方向
予定死亡率の低下は「長生きをする人が増えていること」を意味します。長生きをする人が増えると、病気になって病院での治療を受ける人が増加し、医療保険やガン保険の保険金支払いの機会も増えることが予想されます。標準死亡率の低下と同様の理由で、医療保険やガン保険などの保険料は値上がりすると考えられます。
掛け捨ての死亡保険は値下げの方向
掛け捨ての死亡保険は解約返戻金や満期金が無い分、保険料が安く設定されている保険です。契約期間中に被保険者が死亡した場合には保険金が支払われますが、健康なまま保険期間を終了すると保障を受けずに契約が終わることとなります。
掛け捨ての死亡保険の場合、「予定死亡率」が低下すると保険料が下がるといわれています。それは長生きの人が増えると保険期間中に死亡する人が減り、保険会社が支払う保険金が少なくなるとされるためです。
保険加入や見直しの際のポイントは?
保険料が安いという理由で選ばない
保険とはそもそも、自分が直面するかも知れないリスクに備えるためのものであるため、保障内容や保障額をよく検討したうえで契約する必要があります。保険料の安さを決め手として保険を選ぶと、不要な契約につながりかねません。また保険商品は、契約後すぐに解約すると損をしてしまうこともあります。保険料のみを基準に選ぶのではなく、保障内容についてもきちんと確認してから契約するようにしてください。
自分のリスクに備えた保険選びが重要
どのような保障をどのくらい得たいのかは、人によって異なります。性別や年齢だけでなく資産や家族の状況なども考慮したうえで、自分にとって必要な保険を検討していくことが大切です。
保険には多くの商品があります。死亡保険だけをみても掛け捨て型や貯蓄型などがあり、医療保険も求める保障によってさまざまな種類があります。自分一人では決めきれないという人は、保険会社の窓口で相談するようにしましょう。
保険料を手取りの3~5%に抑える
一般的に、保険料を手取りの3~5%程度に抑えるとバランスがよいといわれます。自分の収入と照らし合わせて保険料の目安を確認し、その中から必要な保険を選んでいくようにしましょう。リスクに備えるためとはいえ、保障や保険料が過多な保険に加入して家計が圧迫されるようなことが無いよう注意してください。
人生の転換期には見直しが必要
必要な保険は、その人の状況によっても異なります。そのため、結婚や住宅の購入、退職などがあったときには、その時々で保険の見直しをした方が良いと考えられます。
例えば、結婚・子供の誕生などで家族が増えたときには、必要とされる保障も変わります。また、住宅を購入したときには、ローンの支払いが増えたり団体信用生命保険に加入したりすることがあるため、保険のタイプを変えることが必要となるかもしれません。定年退職を迎えて収入が減少すれば、それまでと同様に保険料を支払うことが難しくなる場合もあります。
このように、ライフイベントがあったときや状況に変化があったときなどには、その後の人生に合わせた保険を選び直していくことが必要と言えます。
まとめ
生命保険は、経済や社会情勢によって保険料が上下します。保険料が決定される仕組みを知り、損をしない保険選びをしていくことが大切です。また自分の状況により、定期的に保険の見直しをしていくのも忘れてはいけません。現在契約中の保険について疑問がある人や保険の見直しをしたいという人は、保険会社の窓口で相談をしてみてはいかがでしょうか。