公的年金制度の一つである厚生年金は、老後の生活の収入を維持する社会保障制度です。厚生年金は給与所得者の多くが加入を義務付けられる制度ですが、詳しい内容を知らない人も多いのではないでしょうか。今回は厚生年金の被保険者期間の保険料や加入条件、そして国民年金との違いなどを説明します。
目次
厚生年金保険料とは?加入条件など
将来に対するリスクに備えるもの
厚生年金は、将来病気やけが、あるいは定年退職によって働けなくなり収入が得られなくなるリスクに備えるためのものです。厚生年金制度に加入している場合、毎月保険料を支払う必要があります。厚生年金の保険料を納付した期間に応じて、将来の厚生年金給付金額が変化します。
厚生年金加入者は自動的に国民年金にも加入するため、給付を受ける際は国民年金に報酬比例部分が上乗せされます。
企業勤めの会社員・公務員が加入
厚生年金制度は会社員や公務員の人が加入するものです。保険料は毎月の給料から天引きされ、会社等が一括して支払いを行います。
職種によって、厚生年金被保険者としての分類が異なります。会社員の人は第1号被保険者、国家公務員の人は第2号被保険者と分類されます。地方公務員の人は第3号被保険者、私立学校の教職員は第4号被保険者です。
共済年金は厚生年金に統一された
以前は公務員が加入する共済年金制度と、会社員などが加入する厚生年金制度は分類されていました。しかし、保険料率や納付要件、保障内容が公務員の方が有利に設定されていたため厚生年金に統一されました。その結果、会社員と公務員、または私立学校の教職員は厚生年金制度内では号数によって分類されるようになりました。
パートも厚生・健康保険の対象
パートタイマーや派遣社員であっても、条件を満たせば厚生年金や健康保険に加入することができます。厚生年金や健康保険の加入は事業主に義務付けられていることですが、徹底していない企業もあるので求人情報の福利厚生内容をチェックしましょう。
ただし、加入の対象となるためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。一つ目の条件は、勤務時間や勤務日数が正社員の勤務時間や日数の3/4を上回ることです。さらに以下の5つの条件を満たす必要があります。
1.1週間に20時間以上働いていること
2.残業代や賞与、その他手当を除いた月額賃金が8.8万円以上
3.1年以上の雇用状況が続く見通しがあること
4.勤務先に501名以上の厚生年金に加入する従業員が所属していること
5.学生でないこと
厚生年金支給額とはどのくらい?
厚生年金受給額の平均は15万円ほど
厚生年金の第一号被保険者、つまり会社員の厚生年金の受給額は月額平均で15万円程度となっています。しかし、実際の受給額には男女間で差があり、男性の場合は平均月額18万円程度、女性の場合は月額9万円程度です。これは現役時代の所得格差が原因にあります。
厚生年金は報酬比例制なので収入が多いほど受給額も大きくなります。また、保険料を積み立てた額が多いほど将来の受給額も大きくなるので、現役時代に長期間加入しておくことがポイントです。
標準報酬月額は日本年金機構が決定
厚生年金の保険料を決定する際に使用する標準報酬月額は、決められた3つのタイミングで日本年金機構によって決定されます。一つ目は「資格取得時の決定」時で、事業主が契約内容に即して報酬月額を届け出た時です。
二つ目は「定時決定」時で、事業主に届け出された4、5、6月の報酬月額の平均が算出された時です。3つ目は「臨時決定」時で、昇給や降給によって大きく報酬月額が変化した時です。
受給年齢について
厚生年金の受給開始年齢は、基本的には65歳に設定されています。しかし、希望の届け出をすることで受給時期を遅らせる繰り下げや、逆に早める繰り上げの措置が可能です。
65歳に達した後も働きたい人の場合、引き続き給料を得ながら保険料を支払います。年金の受給時期は遅くなりますが、受給総額は増えるため働き方によってはメリットがあるでしょう。
厚生年金と国民年金の違いとは
国民年金は国民全員が加入するもの
厚生年金制度は会社員や公務員が加入するものですが、国民年金制度は日本の国民全員に加入義務があります。つまり、厚生年金は国民年金の上乗せ部分として存在しており、国民年金が基礎年金部分と呼ばれるのに対して厚生年金は報酬比例部分と呼ばれます。国民年金の被保険者期間は20歳〜60歳に設定されています。
国民年金は一定額だが厚生年金は違う
国民年金の月額保険料は、収入によらず一定金額です。その時点での景気や情勢によって調整が図られることもありますが、その場合は向こう1年の月額保険料が決定されます。
一方、厚生年金の保険料は標準報酬月額に基づいて決定されます。収入が増えるほど保険料納付額も大きくなりますが、その分将来受け取る保険金額も大きくなるため厚生年金の保険料が上がっても老後の備えになると言えます。
切り替える場合の手続きについて
まず厚生年金から国民年金への切り替えについて説明します。会社員だった人が退職後、他の企業に所属しない場合がこのケースに当たります。
切り替えの手続きは市役所で行いましょう。印鑑と年金手帳、もしくは基礎年金番号通知書を持って市役所に行き、国民年金被保険者資格届出書を記入して提出します。手続きはその場で完了します。
次に国民年金から厚生年金への切り替えについての説明です。個人事業主だった人が会社員になる場合などがこのケースに当たります。切り替え手続きは勤務先で行いますが、その際に基礎年金番号が必要なので年金手帳を持参しましょう。
厚生年金に関する注意点
厚生年金と厚生年金基金は別物
厚生年金は日本年金機構という団体が単体で運営しているものです。一方、厚生年金基金は各企業毎に設置している年金運用組織で、労使間の合意の元で運営されています。政府が行う年金制度の運営の一部を代行していますが、現在基金の新設は認められていません。
年金を請求する場合、運営団体によって請求先が異なります。自分が所属する組織の厚生年金運営団体を事前に確認しておきましょう。
厚生年金番号は基礎年金番号に統一
以前は厚生年金番号など加入している年金ごとに番号が存在しており、年金請求時の手続きが複雑でした。しかし、平成9年1月に基礎年金番号が導入され、国民年金も厚生年金も基礎年金番号で管理されるようになりました。したがって、厚生年金を請求する際などの年金番号は、基礎年金番号を使用するようにしましょう。
まとめ
厚生年金の仕組みは、国民年金の仕組みとは大きく異なります。保険料の金額と納付期間などの違いを確認し、受給できる年金の総額を見積もることで、老後のライフプランも立てやすくなるのではないでしょうか。あらかじめ年金の請求先等を確認しておくことも大切です。