生命保険や個人年金については確定申告・年末調整の時に所得税の控除が受けられますが、確定拠出年金の場合は認められているのでしょうか。申告が必要なケースと不要なケース、申告の方法などについて解説します。
目次
企業型や個人型の確定拠出年金の掛金は年末調整できる?
確定拠出年金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象
本来、「小規模企業共済等掛金」とは小規模企業の個人事業主や役員が自らの退職金(共済金)準備のために積み立てるお金のことです。確定拠出年金も自身の老後資金に備え、60歳以降に一時金(または年金)として受け取れるという点で共通しており、所得税の申告時には同じ控除枠を使用します。
企業型の場合
企業型確定拠出年金(以下、企業型年金)を実施している会社に勤務する人は、企業型年金の加入者となることができます(※)。掛金は会社が負担しているため、申告の必要はありません。
※加入するかどうかが任意である場合・加入者があらかじめ決められている場合などもあるため、詳細は各企業へ確認してください。
会社の企業型年金規約内に「企業の掛金拠出に加え、加入者の拠出を認める」旨が記載されている場合は、企業型年金に上乗せする形で個人による掛金拠出(マッチング拠出)をすることが可能です。個人型確定拠出年金(以下、個人型年金)を上乗せとして選択する企業は増加傾向にあり、マッチング拠出・個人型年金ともに、掛金の全額が所得控除の対象になっています。
個人型(iDeCo)の場合
企業型年金を実施していない会社員や公務員、自営業の人を対象にしている個人型年金は、掛金全額が所得税控除の対象になります。
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会社員や公務員
企業型年金におけるマッチング拠出部分の掛金や個人型年金の掛金を給与から天引きされている場合、年末調整時の申告は不要です。天引きされていない場合には申告を行う必要があります。
自営業者など
個人型年金の加入者は、掛金の全額を所得控除として確定申告します。しかし、課税対象となる収入自体がない専業主婦(主夫)が加入者である場合、確定申告の必要はありません。
では、「夫 = 実質の掛金負担者、妻(主婦) = 個人型年金加入者、」というケースでは、妻の個人型年金の掛金分を夫の所得控除として申告できるのでしょうか。
答えは「NO」です。生命保険料であれば控除の申告をすることができますが、個人型年金は個々人の専用口座として管理されます。そのため、夫が実質の掛金負担者だとしても、所得控除の対象にはなりません。一方で、以前の勤務先で確定拠出年金に加入していた場合、その年の収入によっては確定申告をした方が有利なケースもあります。
個人型確定拠出年金の年末調整書類の書き方
年末調整には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要
個人型年金の加入者に対し、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が発行されます(毎年10〜11月)。その年の掛金負担がいくらあったのかを証明する大切な書類ですので、確定申告まで大切に保管してください。
※掛金が給与から天引きされている個人型年金加入者である場合、証明書は発行されません。
もし、記載内容が事実と相違している場合には、証明書の再発行が必要です。「掛金の額を変更した分が反映されていない」「払込実績が証明書の内容と合致していない」というようなケースがあれば、必ず再発行の手続きをしましょう。国民年金基金連合会や運営管理機関(証券会社など)と連携を取る必要があり、再発行までには2〜3週間を要することがあるため、早めの依頼を心がけましょう。
年末調整での申告方法
掛金を給与天引きされていない会社員や公務員は、年末調整時に配布される申告書に年間の払込掛金を記載し、勤務先に提出します。
年末調整の時期には、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」が勤務先から配布されます。用紙の右下にある「小規模企業共済等掛金控除」という太枠の中の「個人型又は企業年金加入者掛金」という欄に、払込証明書記載の「年間払込金額」を記入します。
確定申告での申告方法
個人事業主や年末調整時に申告できなかった人は、確定申告をします。確定申告書には申告書A(簡易版)、申告書B(汎用版)があります。自営業やフリーランス、不動産収入がある人は申告書Bを使用しますが、それ以外の人はどちらを使用してもかまいません。
申告書A・Bともに記入欄は同じです。まず、申告書第二表の右上あたりの「小規模企業共済等掛金控除」の欄にある「掛金の種類」に「確定拠出年金」、「支払掛金」に「払込金額(証明書の金額)」、控除の合計欄に金額を記入します。
次に申告書第一表の左側にある「所得から差し引かれる金額(赤い部分)」の「小規模企業共済等掛金控除」欄に、第二表の合計額を記入します。
まとめ
確定拠出年金は掛金全額が所得控除の対象になるため、所得税や住民税の軽減につながります。見慣れない言葉が使用されている年末調整の申告書は記入が難しく感じることもあるかもしれませんが、節税を実現するためにも欠かさず申告しましょう。
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