2016年10月に行われた法改正によって社会保険の加入対象者の範囲は拡大され、パートやアルバイトで働く人も所定の条件を満たせば社会保険に加入できるようになりました。本ページでは、パートやアルバイトが社会保険に加入する条件や加入方法、加入後のメリットなどについてまとめています。
目次
社会保険とはどういう仕組み?
国民のための公的な保険
社会保険とは、病気やケガなどのリスクに備え、国民の生活を保障することを目的とした公的保険制度です。加入者が支払う保険料や国庫負担金などを原資にしています。国民の相互扶助(ふじょ)が制度の根底理念であり、ほぼ確実に保障が受けられる一方で、対象となる国民へは社会保険への加入と保険料の負担が義務づけられます。
主に国民年金や健康保険など
国民年金や国民健康保険は、社会保険の一種です。その他、老後の生活を保障するための介護保険、労働者が仕事を失い収入が得られなくなったときのための雇用保険、勤務中のケガや病気を保障する労災保険も社会保険に含まれます。
パートが社会保険に加入するメリット
将来の年金が増える
社会保険のひとつである厚生年金保険に加入すると、在職中の給与額から算出される厚生年金が国民年金へ加算されます。例えば、厚生年金保険に20年間加入して毎月8,000円の保険料を納めた場合、国民年金の他に厚生年金として将来受け取れる金額は毎月9,700円となります。厚生年金の金額は、厚生年金保険への加入期間が長いほど大きくなります。
手厚い社会保障を受けることができる
社会保険のひとつである健康保険に加入すると、医療給付の面でも保障を受けることができます。例えば、病気やケガ、出産などで会社を休まなければならなくなったときには、傷病手当金や出産手当金として賃金の3分の2程度の金額が給付されます。
会社と社会保険料を折半できる
厚生年金保険や健康保険において被保険者の負担は保険料の半額であり、残りの半分は雇用者である会社が負担します。これは「自身が支払った社会保険料の倍額が将来の給付の基礎となる」ということを意味しており、被保険者にとってのメリットであると言えます。
パートの社会保険加入条件とは
2016年10月にパートタイム労働法が改正され、以下の条件全てを満たしている場合はパートやアルバイトの人も社会保険の加入対象となりました。
労働時間が週20時間以上
1つ目の条件は、「労働時間が週20時間以上であること」です。週5日勤務と仮定すると、1日あたり4時間以上シフトが入っている必要があります。
月額賃金8.8万円以上
条件の2つ目は、「月額賃金が88,000円以上、年額で106万円以上であること」です。なお、この賃金基準には交通費や残業代は計算に含めません。法改正前の年収条件が「130万円以上」であったことを考えると、対象が大きく広がったと言えるかもしれません。
1年以上の雇用が見込まれること
3つ目は「雇用が1年以上継続されているか、1年以上継続される見込みがあること」です。短期契約のパートやアルバイトについては該当しませんが、しばらく仕事を辞める予定がない場合には1年以上の雇用が見込まれると判断できるため、条件に当てはまることがあります。
雇用先の従業員が501名以上
4つ目は、「雇用先の従業員数(社会保険の被保険者に限る)が501名以上であること」です。ここで言う「雇用先」とは雇い主としての事業者を指します。
例えば、コンビニなどのフランチャイズ店舗に勤めている場合、その看板を掲げる店舗全体ではなく、個々のフランチャイズを経営する事業者単位で従業員数をカウントします。また、全従業員数が501名以上の企業であっても、そのうち社会保険の被保険者に該当する従業員の数が501名を超えない場合は、条件を満たさないことになります。
パートが保険に加入するためには
扶養から外れる手続きをする
パートやアルバイトの人が社会保険に加入するには、家族の扶養から外れる必要があります。夫の扶養に入っている妻が勤務先の社会保険に加入する場合、扶養者である夫は「健康保険被扶養者(異動)届」や「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」など、複数の書類について記入・提出が必要になります。
会社を通して年金や健康保険に加入する
厚生年金や健康保険への加入手続きは、勤務先の会社を通して行います。基本的には、勤務先の担当者の指示に従って手続きを進めましょう。
社会保険に加入すると生じる変化として、保険料を自分で負担するようになるという点が挙げられます。扶養に入っていれば社会保険料はかからず、所得税の配偶者控除も適用されるため、メリット・デメリットを加味して十分な検討を行ってください。
まとめ
パートやアルバイトの人も社会保険の保障が受けられるという点はメリットと言えますが、扶養から外れることで生じるデメリットにも注意しなければなりません。不明点は専門家に相談するなどして、社会保険への加入を慎重に見極めましょう。