老後資金を自分でつくる制度として関心が高まっている確定拠出年金は、公的年金に上乗せできる点が魅力です。ただ、掛金の運用は加入者自身の判断に委ねられており、思うように資産が増えないリスクや、資金を長期間動かせない不便さも抱えています。
確定拠出年金への加入を検討しているものの、「元本割れが不安」「途中でやめられないのでは」と感じている方は多いのではないでしょうか。この記事では、確定拠出年金の基本的な仕組みから、企業型・個人型(iDeCo)それぞれのデメリットまで、加入前に押さえておきたいポイントを整理します。
確定拠出年金とは
確定拠出年金の特徴
確定拠出年金は、毎月の掛金があらかじめ決まっている一方で、将来受け取る年金額は運用実績によって変動する制度です。最大の特徴は、加入者自身が掛金の運用先を選び、その責任を負う点にあります。
運用先は銀行や証券会社、生命保険会社・損害保険会社などが提供する商品から選びます。元本を確保できる商品と、確保できない商品があり、後者は運用成績によって受取額が掛金を下回ることもあれば、元本確保型より大きく増える可能性もあります。老後の年金を自分でつくる制度が確定拠出年金であり、その手段が投資であるとイメージすると理解しやすいでしょう。
企業型と個人型(iDeCo)がある
確定拠出年金には「企業型年金」と「個人型年金(iDeCo)」の2種類があります。企業型は、勤務先が実施している場合に加入できる制度で、対象は厚生年金保険の加入者や私立学校教職員共済制度の加入者です。2022年5月の法改正により加入可能年齢が拡大され、現在は原則70歳未満の人が対象となっています。
一方、個人型は60歳未満の国民年金加入者や公務員、企業年金のない会社に勤めている人などが対象です(企業型確定拠出年金の加入者の一部も対象に含まれます)。どちらに加入できるかは、勤務先の制度の有無によって決まる仕組みです。
| 企業型年金 | 個人型年金(iDeCo) | |
|---|---|---|
| 加入対象 | 原則70歳未満の厚生年金保険加入者等(勤務先が実施している場合) | 60歳未満の国民年金加入者、公務員、企業年金のない会社員など |
| 運用先の選択 | 会社が用意した選択肢から選ぶ | 自分で金融機関・商品を選ぶ |
| 手数料の負担 | 基本的に会社が負担するケースが多い | 加入者本人が負担 |
確定拠出年金に共通するデメリット
企業型・個人型のどちらを選ぶにしても、確定拠出年金という制度そのものに由来する注意点があります。まず、両方に共通するデメリットから見ていきましょう。
将来の年金額が確定せず元本割れする可能性がある
加入者や企業が拠出する掛金の額は決まっていますが、受け取る年金額は運用成績によって変わります。将来手にする金額を事前に確定できず、元本割れの可能性がある以上、細かな生活設計を立てにくいという面は避けられません。
運用先を元本確保型に絞れば元本割れのリスクは抑えられますが、その分リターンも小さくなります。リスクとリターンのバランスをどう取るかは、加入者自身の判断に委ねられています。
60歳まで資金を引き出せない
確定拠出年金は老後資金づくりを目的とした制度のため、原則として60歳になるまで積立金を引き出せません。途中解約もできない決まりです。
何らかの事情で掛金が未納になった場合も、解約はできず、口座の管理手数料だけは継続して発生します。急な出費に対応できる資金は、確定拠出年金とは別に確保しておく必要があるでしょう。
管理コストが発生する
拠出金の運用は、関係する各機関によって加入者ごとに管理されており、口座管理手数料が発生します。運用先によって手数料は異なり、1カ月あたりの金額は少額に見えるかもしれません。ただ、運用は長期間に及ぶため、積み重なれば無視できない負担になります。加入前に、各機関の手数料をあらかじめ比較しておくことが重要です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)のデメリット
iDeCoは自分で金融機関や商品を選べる自由度の高さが特徴ですが、その裏返しとして手数料や手続きの負担が加入者自身にかかってきます。
口座の開設・管理に手数料がかかる
iDeCoに加入するには、まず口座を開設する必要があります。2026年8月時点で、新規加入時や企業型DCからの移換時には国民年金基金連合会へ2,829円(税込・1回のみ)の手数料を支払います。
口座開設後も、国民年金基金連合会へ月105円、事務委託先金融機関(信託銀行)へ月66円、合わせて月171円の手数料が継続的に発生します。これに加えて、運営管理機関(証券会社など)が独自に設定する手数料が上乗せされる場合もあります。運営管理機関の手数料は金融機関によって差があるとされているため、実際の金額は加入を検討している金融機関の公式情報で確認しておくとよいでしょう。
金融機関を自分で選ぶ必要がある
運用先の金融機関を自分で選べることは、経済事情に詳しい人にとってはメリットになるかもしれません。しかし、よほど詳しくない限り、どこを選べばよいか迷い、多くの時間を費やしてしまうのではないでしょうか。
各金融機関が取り扱う商品は、特徴も手数料もそれぞれ異なります。加入前には複数の金融機関の情報を比較し、自分に合った選択肢を見つける手間がかかると考えておいたほうがよいでしょう。
企業型確定拠出年金のデメリット
企業型年金は会社が制度を整えてくれる分、iDeCoほど自分で選ぶ手間はかかりません。一方で、会社の制度に依存するがゆえの制約もあります。
運営管理機関を自分で選べない
企業型確定拠出年金を実施している会社に勤めている人は、その企業型年金に加入できます。しかし、運用先の金融機関は会社が選定しているため、加入者は会社が示した選択肢の中から商品を選ぶことになります。自分好みの金融機関を自由に選べるわけではない点は、iDeCoとの大きな違いです。
転職時に手続きが必要
企業型年金の加入者が転職する際は、転職先が企業型年金を実施しているかどうかをまず確認しましょう。転職先が企業型年金を実施していれば、資格喪失日から6カ月以内に移換手続き(積み立てた資産を新しい運営管理機関に移す手続き)をおこないます。
転職先が企業型年金を実施していない場合や、退職して働かない場合は、自分でiDeCoなどへの移換手続きを進める必要があります。複数の金融機関の案内では、この移換手続きをせずに6カ月が経過すると、資産が現金化され国民年金基金連合会へ自動的に移換されるとされています。この自動移換に関する条件や具体的な取り扱いは、加入している金融機関や国民年金基金連合会の公式情報で確認しておくと安心です。
一度自動移換された資金は運用できなくなるため、資産が増える見込みはないにもかかわらず、管理手数料だけは継続してかかります。転職や退職のタイミングでは、移換手続きを後回しにしないことが肝心です。
まとめ
確定拠出年金には、定期預金や投資信託のように途中で解約できないという明確なルールがあります。運用先を自分で選び、そのリスクも自分で負う必要がある点は、企業型・個人型を問わず共通しています。
加入を検討する際は、手数料や運用商品の情報を十分に確認し、制度の仕組みを理解したうえで判断することが大切です。ひとりで判断するのが難しいと感じたら、専門家に相談してみるのも一つの方法でしょう。





