勤務先の退職に伴い社会保険から脱退したときには、国民健康保険への変更手続きをしなければなりません。変更手続きをしなかった場合、いくつかの不便を招くこととなります。この記事では、国民健康保険への切り替え方法を解説します。速やかな手続きを行い、未加入により起こるトラブルを防ぎましょう。
目次
国民健康保険とは?
金額は人それぞれ
国民健康保険の保険料は、人それぞれ金額が異なります。その理由は2つあります。
1つ目は、健康保険を運営している各市区町村によって保険料が違うからです。2つ目は、健康保険料は前年の1月~12月までの総所得金額や年齢・家族構成などをもとに加入者ごとに計算されるからです。
所得や家族構成にもよりますが、社会保険から国民健康保険へ切り替えたときには、保険料が高くなってしまう人もいます。切り替え後の保険料額が心配な人は、各市区町村の窓口に問い合わせましょう。
退職翌日から加入義務が始まる
退職日の翌日をもって勤務先で加入していた社会保険からは脱退することととなり、すぐに新たな健康保険への加入義務が発生します。なぜなら現在の日本では「国民皆保険制度」が敷かれているからです。国民皆保険制度とは、日本に住所がある国民が何らかの公的医療保険に加入する制度のことです。
社会保険から国民健康保険に切り替えるときには、退職した翌日から14日以内に各市町村の窓口で手続きをする必要があります。
退職後、社会保険の任意継続もできる
「健康保険任意継続制度」を利用すれば、退職後も在職中に加入していた社会保険を継続することができます。全国健康保険協会(略称:協会けんぽ)によると、この制度を利用するには以下の要件を満たしている必要があります。
1.退職日までに、継続して2カ月以上の社会保険加入期間があること
2.退職日の翌日から20日以内に手続きを行っていること
(手続きは、居住する市区町村の年金事務所に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する)
ここで紹介したのは、協会けんぽの健康保険任意継続制度についてです。在職中に加入していた社会保険によっては、手続き方法や要件が異なることがあります。
社会保険の任意継続手続きについては以下の記事から確認してください。
国民健康保険に加入しないとどうなる?
病院へ行った時の窓口支払額
国民皆保険の制度のもと国民は何らかの公的な医療保険に加入しているため、病院窓口での医療費の支払いはある一定の割合に抑えられています。ところが、勤務先の健康保険を脱退したにもかかわらず国民健康保険への加入手続きを行わないと無保険状態となり、医療費は全額自己負担となります。急な体調変化にも安心して対応できるよう、国民健康保険への加入手続きは忘れずに行うようにしましょう。
加入時に過去保険料も請求される
国民健康保険への切り替えは、退職日の翌日から14日以内に手続きをすることが原則ですが、14日を超過しても加入の手続きをすることは可能です。
ただし、14日を過ぎてから加入の手続きをした場合であっても、退職の翌日から加入していたものとして保険料を支払わなければなりません。国民健康保険への加入を遅らせたからといって、支払わなければならない保険料額が減るわけではないのです。
国民健康保険へ加入しないとどのようなことが起きるのか、詳細は以下の記事にもまとめてあります。
国民健康保険加入手続き方法は?
社会保険からの切り替え方法
社会保険から国民健康保険への切り替え手続きは、居住する市区町村の役所窓口で行います。取扱い窓口は「国民健康保険課」や「保険年金課」などと呼ばれますが、正式な窓口名は市区町村により異なります。
手続きに必要なものは、印鑑、世帯主と切り替えを必要とする人それぞれのマイナンバー、健康保険の資格喪失証明書です。
加入手続き期限
国民健康保険への切り替え手続きは退職日の翌日から行うことができ、14日以内に完了させなければなりません。14日を過ぎても加入手続きはできますが、手続きを行うまでの間は無保険状態となります。
また、自治体によっては、遅延金の請求や滞納処分による財産の差し押さえが行われることもあるので、国民健康保険への加入を忘れることがないよう注意が必要です。
必要書類の資格喪失連絡票について
健康保険の資格喪失連絡票は資格喪失証明書とも呼ばれる書類で、国民健康保険への切り替え手続きの際に必要となります。資格喪失連絡票は、勤務先に申告して作成してもらわなければなりません。退職時に受け取ることができるよう、あらかじめ作成の依頼をしておきましょう。
資格喪失連絡票は、会社に申告する以外にも居住している地域の年金事務所で発行してもらうことができます。喪失連絡票を会社から受取る前に国民健康保険への切り替え手続きをしなければならないときなどは、年金事務所で発行してもらうと手続きがスムーズになることもあります。
代理加入手続きについて
国民健康保険への切り替え手続きは、代理人でも行うことができます。切り替えを必要とする人と同一世帯以外の人が手続きをするときには、資格喪失証明書などの他に委任状と手続きを行う人の身分証明書が必要です。
委任状は各市町村長のホームページからダウンロードして使用します。切り替えを必要とする本人が記入する必要があるため、余裕をもって用意すると良いでしょう。
国民健康保険への加入手続きや、保険証が届くタイミングなどについては以下の記事をご覧ください。
役所で一緒に国民年金の手続きも
会社を退職したときには、厚生年金から国民年金への切り替え手続きも行わなければなりません。年金は原則として「20歳以上60歳未満の国民は全員加入する」という、国民皆年金の制度をとっています。国民年金への切り替え手続きを行っておらず滞納した状態が続くと、遅延金が発生したり財産の差し押さえをされたりすることがあるため注意が必要です。
厚生年金から国民年金への変更手続きは、国民健康保険の切り替え手続きと同じく各市区町村の窓口で行います。必要となる物もほとんど一緒なので、国民健康保険と国民年金への変更手続きは同時に終わらせてしまうと良いでしょう。年金の手続きには年金手帳も必要です。
厚生年金・国民年金の仕組みや切り替え手続きについては以下の記事もあわせてお読みください。
国民健康保険から社会保険への切り替えは?
国民健康保険と社会保険の違い
国民健康保険と社会保険の違いは以下の通りです。
国民健康保険 | 社会保険 | |
---|---|---|
対象者 | 個人事業主、無職など | 会社員 |
加入団体 | 各市区町村 | 各健康保険組合 |
扶養 | なし。家族が多いと、その分保険料が増える。 | あり。扶養家族であれば、何人いても保険料は上がらない。 |
保険料 | 全額自己負担 | 会社と折半 |
転職、就職した先の会社で行う
国民健康保険の加入者が転職や就職をすると、新しい勤務先の社会保険に加入することとなります。社会保険への加入手続きは会社が行ってくれますが、国民健康保険からの脱退は自分で手続きを行わなければなりません。
脱退手続きは各市区町村の窓口で行います。手続きに必要なものは、以下の通りです。
・加入した社会保険の保険証(扶養家族がいれば扶養家族の分も必要)
・使用していた国民健康保険証(扶養家族として切り替わる人がいれば、その人の分も必要)
・本人確認資料
・印鑑
市区町村によっては、脱退の手続きを郵便で受け付けているところもあります。役所まで手続きに行くことができないという人は、郵送で手続きができないか問い合わせると良いかもしれません。
誰かの扶養に入った時に行う
誰かの扶養として新しく社会保険に加入するときには、社会保険加入の手続きと国民健康保険脱退の手続きが必要です。社会保険に加入するには、まず会社へ申請書類を提出します。
扶養に入ったら、国民健康保険からの脱退手続きをします。脱退手続きは、新たな健康保険証が届いてから手続きをします。国民健康保険証と健康保険証の両方をもって、市区町村の窓口で脱退の手続きを行ってください。
国民健康保険の脱退については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
健康保険であれば、会社が各種手続きを行ってくれることがほとんどです。しかし、国民健康保険の場合は手続きや保険料の支払いなどを自分で行う必要があります。うっかり手続きを忘れてしまい未加入状態になってしまった、ということが起きないように職場や家族環境が変わったときにはきちんと手続きをしていきましょう。
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