「老後に備える」という名目で若い世代からも保険料を徴収している公的年金ですが、年金を受け取るためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか?ここでは、公的年金の受給資格や、近年短縮された受給資格期間についてまとめています。
目次
公的年金制度でもらえる年金とは
国民年金はすべての人が加入
国民年金には日本のすべての国民が加入することになっています。厚生年金の加入者は、第2号被保険者として国民年金にも加入しています。
また、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されていて、年収130万円未満・20歳~60歳未満の配偶者)、第1号被保険者(第2号にも第3号にも当てはまらない加入者)と、加入状況によって被保険者の種類は異なります。例えば、同じ「年収が106万円未満の主婦」でも、会社員を夫に持つ人は第3号被保険者、自営業者を夫に持つ人は第1号被保険者となります。
厚生年金は会社員や公務員が加入
厚生年金保険の適用を受けている企業・団体に勤務している会社員や公務員は、厚生年金へ加入します。厚生年金の保険料は所得に応じて算出され、雇用主との折半という形で支払われるため、実際に加入者が納める金額は正味の保険料の半額です。また、加入者と生計を同一にする一定条件下の親族は扶養家族として扱われ、保険料を自分で負担する必要がなくなります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金
老齢基礎年金とは、国民年金に10年以上加入した人が加入年数に従って65歳から受け取ることのできる年金です。また、老齢基礎年金の受給資格を満たし、かつ厚生年金に一定期間以上加入した人は、65歳から老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取ることが可能です。
老齢基礎年金の受給資格
受給資格期間に含まれる期間
年金を受け取るために必要な加入期間を「受給資格期間」と言います。受給資格期間の中には、保険料を通常納付した期間の他、次のような期間も合算対象に含まれます。
・保険料の納付が免除された期間
・国民年金の第3号被保険者であった期間
・日本人として海外に居住していた期間
受給資格期間10年以上が要件
国民年金の受給資格期間は10年以上とされています。10年以上保険料を納め続けてきた人はもちろんのこと、5年間保険料を納めた後に会社員と結婚し、5年以上扶養に入っていた人なども老齢基礎年金を受給することができます。他方、保険料を納めていなかった期間が合算対象に該当しなかったなどの理由で受給資格期間を満たしていない人に対しては、老齢基礎年金が支給されません。
受給資格期間短縮前は25年以上
これまでは老齢基礎年金の受給資格が25年以上とされていましたが(一部の特例を除く)、無年金者への救済措置と現役世代の加入促進を目的として、平成29年8月から受給資格期間が見直されることになりました。この変更によって、受給資格期間が10年以上となり、新たに約64万人が老齢基礎年金の支給対象となっています。
老齢厚生年金の受給資格
厚生年金の加入期間があれば対象
老齢厚生年金の受給資格として、老齢基礎年金の支給要件を満たしていることに加えて「厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上あること」が必要です。厚生年金の保険料は給料からの天引きであるため、厚生年金適用の会社に勤務した時期が1ヶ月以上ある人はこの要件を満たしている可能性が高くなります。
年齢によっては特別支給の老齢厚生年金の対象
老齢厚生年金は老齢基礎年金に加算されるかたちで支給されるため、受給開始年齢は老齢基礎年金と同じ65歳以上が原則です。しかし、厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたことによって制度の移行期間が必要とみなされ、厚生年金の被保険者期間が1年以上ある60歳~65歳未満の人については、65歳まで「特別支給の老齢厚生年金」が支給されています。特別支給の老齢厚生年金については支給要件が複雑であるため、詳細は日本年金機構のHPなどを確認してください。
10年間の受給資格でもらえる年金は?
老齢基礎年金は納付済月数で変わる
老齢基礎年金の支給額は、「国民年金に加入できる期間の上限である40年(480ヶ月)のうち、保険料の納付済月数がどれだけあるか」によって決まります。例えば、支給額の満額が80万円だとした場合、納付済月数が120ヶ月の人が65歳以上になったときに受け取ることができる年金額は年額20万円となります。
老齢厚生年金は収入で変わる
老齢厚生年金の支給額は、厚生年金への加入期間だけでなく、被保険者の収入によっても変動します。厚生年金の保険料は給与や賞与の金額に応じて上下しており、高い保険料を納め続けてきた人ほど老後の年金支給額も高くなるという仕組みになっているためです。
10年では年10万~30万円程度
老齢厚生年金の支給額の目安は、1年加入したときで年額1万~3万円程度、10年加入したときでは年額10万~30万円程度です。仮に、会社に10年勤めていた期間以外、国民年金の保険料を納めずに65歳を迎えたとすると、受け取れる年金支給額は多くても年額50万円ほどということになります(老齢基礎年金の満額支給額を80万円とする)。
まとめ
公的年金の受給資格や受給資格期間について説明しました。年金受給期間が短縮されたからといって保険料の支払いを怠ると、老後に自分が困ることになってしまいます。やむを得ない事情がない限り、加入義務がある間はきちんと年金保険料を支払いましょう。