公的年金には、国民年金と厚生年金保険があります。厚生年金保険へは、公務員や厚生年金保険適用事業所の社員などが加入できます。今回は、厚生年金保険の保険料がどのように算出されているのかについて解説します。
目次
会社員や公務員が加入する年金
会社員や公務員が加入する年金
厚生年金保険とは、公務員・厚生年金適用事業所に勤める70歳未満の会社員などが加入できる年金です。また、厚生年金保険の加入者は、厚生年金制度を通じて国民年金にも入っているため、厚生年金・国民年金(基礎年金)の両方を受け取ることができます。
厚生年金保険は国が管理・給付を行っています。年金保険料は被保険者と事業主が半分ずつ負担し、納付方法は給与や賞与からの天引きとなります。
厚生年金の保険料計算に使う標準報酬月額とは
報酬を一定の幅で区切ったもの
保険料を計算する際は、給与の金額をそのまま利用するのではなく、報酬を一定の幅で区切った「標準報酬」というものを使います。しかし、「標準報酬月額」が毎月の給与と同額というわけではありません。
標準報酬月額は、報酬月額(4月から6月の間の給与の平均)による等級から算出されます。等級は31段階に分かれており、標準報酬月額の上限は62万円です。
報酬には手当も含まれる
標準報酬月額には、通勤交通費や残業手当などの各種手当も含まれます。ただし、臨時収入であるお見舞金・賞与などは算入されません。賞与は「標準賞与額」という扱いとなり、別途保険料がかかることになります。
基本給が同じであっても、通勤交通費がかかる人ほど標準報酬月額は高くなります。また、標準報酬月額は4月から6月の間の平均給与を用いて算出するため、4月から6月に残業が多くなると標準報酬月額も高くなります。
標準報酬月額は原則年1回決定
標準報酬月額は給与に大きな増減がない限り、原則1年間変わりません。毎年一定の時期に、4月から6月の給与の額を届け出て標準報酬月額を見直しています。この見直しを「定時決定」と言います。
給与額へ大きな増減があった場合には、定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されることもあり、それを「随時改定」と言います。随時改定は給与に大きな変動があった月以後3カ月の平均が2等級以上変動したときに適用されます。
厚生年金の保険料計算に使う標準賞与額とは
賞与は年3回以下で支給されるもの
賞与は、標準報酬月額とは別に「標準賞与額」として扱われます。厚生年金保険において標準賞与額の対象となるのは、「労働者が労働の対価として受け取る賞与のうち、年3回以下で支給されるもの」とされています。
標準賞与額には、ボーナス、繁忙手当、年末一時金などが該当します。この他にも年3回以下で支給されるもの、自社製品などで現物支給されるもの、一時的に支給されるものなどについても含まれることがあります。
標準賞与額は1,000円未満切り捨て
標準賞与額は、実際に支払われた賞与額(税引き前)の1,000円未満の端数を切り捨てて算出されます。標準報酬月額と同様に、標準賞与額にも上限があります。例えば、同月に2回賞与が支給された場合には合算され、1カ月の支給につき150万円が限度と決められています。
毎月の厚生年金の保険料計算の方法
給与の厚生年金の保険料計算の式
毎月の厚生年金保険料は、標準報酬月額に共通の保険料率をかけることで算出されます。保険料率は2004年から段階的な引き上げをしていましたが、2017年9月に引き上げが終わり、18.3%に固定されています。なお、この数値は今後も変わることがあるため、最新の情報を参照するようにしてください。
給与の厚生年金の保険料計算の例
毎月の厚生年金保険料の計算例を紹介します。(独自の企業年金である厚生年金基金がない場合)。4月から6月の給与額の平均が25万5,000円である場合、厚生年金保険料額表による等級は17等級、標準報酬月額は26万円となります。そこへ保険料率である18.3%と労使折半のため1/2をかけると、以下のようになります。
26万円×18.3%×1/2=23,790円
算出された端数のうち、50銭を超える部分は切り上げます。
賞与の厚生年金の保険料計算の方法
賞与の厚生年金の保険料計算の式
賞与の計算には標準報酬月額のような等級は用いないため、税引き前の賞与の額から1,000円未満を切り捨てて出した標準賞与額に保険料率をかけて計算します。保険料率は標準報酬月額と同じく18.3%です。
賞与の厚生年金の保険料計算の例
では、賞与が41万500円だった場合を例にとって計算してみます(給与と同様、厚生年金基金がない場合)。賞与に関しては1,000円未満を切り捨てるため、標準賞与額は41万円となります。そこへ保険料率と労使折半の1/2をかけると、
41万円×18.3%×1/2=37515円
となります。計算で出た50銭以下の端数は切り捨てます。
まとめ
厚生年金保険料の計算方法について紹介しました。標準報酬月額と標準賞与額を自分で算出することが難しい場合には、毎年送られてくる「ねんきん定期便」へも記載があるため、そちらを参照してみてください。