退職をすると、年金の支払いなどこれまで会社に任せていた手続きを自分で行わなければならなくなることがあります。この記事では、厚生年金加入者が会社を退職して国民年金に切り替える際の手続きや、再就職したときの注意点などを紹介します。
目次
退職前後に行う年金の手続きとは
年金窓口で国民年金に切り替え
会社を退職すると、これまで厚生年金に加入していた人は国民年金に切り替えなければなりません。原則として退職した日から14日以内に行うこととされており、切り替えの手続きは最寄りの市区町村役場の国民年金担当窓口で行います。健康保険の任意継続をしたり配偶者や家族の扶養に入ったりせず国民健康保険に加入する場合は、国民年金と国民健康保険の手続きを同時に行うのが一般的です。
手続きに必要となる書類は3点
国民年金への切り替えの手続きには、年金手帳と印鑑に加えて、退職日が確認できるものとして離職票や健康保険の資格喪失証明書、退職証明書などが必要になります。離職票はハローワークが退職の事実を証明するもので、資格喪失証明書と退職証明書は会社が発行する証明書です。切り替えの手続きにおいて有効な確認書類のため、必ず用意しましょう。
扶養者がいる場合は同時に手続き
夫が厚生年金に加入している世帯で専業主婦やパートの妻を扶養に入れている場合、妻は国民年金第3号被保険者になるため、国民年金の保険料を納める必要がありません。しかし、国民年金には扶養の制度がないので、夫が厚生年金から国民年金に切り替えるのと同時に、妻も保険料を納めなければならなくなります。その際、妻の種別も国民年金第3号被保険者から国民年金第1号被保険者に変わります。
離職票がない場合
離職票は国民年金への切り替えの手続きだけではなく、失業保険受給のための手続きにも必要なものです。原則として、会社は退職後10日以内にハローワークで離職票を発行する義務があります。しかし、手続きをしても本人に離職票を渡すのを忘れていたり、退職時のトラブルにより離職者に離職票が届かないこともあります。
離職票がないときには、会社に問い合わせてみるか、ハローワークに相談してみましょう。ハローワークに相談すると、ハローワークの担当者から会社へ確認をしてもらえることもあります。
国民年金の保険料はいくら?
平成30年は月額16,340円
平成30年度の国民年金保険料は月額16,340円で、平成31年度は16,410円となっています。国民年金は毎月の保険料を翌月末日までに納付するのが原則となっていますが、2年前納や1年前納、6か月前納の制度があり、前もってまとめて納付することもできます。前納制度を利用すると一定額が割り引かれますので、保険料の負担を抑えることができます。
退職日によっては支払いが重複する
退職のタイミングによっては、保険料の支払いが重複することがあります。例えば、毎月の厚生年金保険料を当月20日払いの給与から控除している会社を3月25日に退職したとすると、3月は国民年金の保険料を納めなければなりません。
しかし、すでに給与から厚生年金保険料が控除されている場合は支払いが重複してしまいます。この場合、3月の厚生年金保険料は支払う必要がありませんので、会社に連絡をして厚生年金保険料の還付を受けましょう。ちなみに、退職日によって手続きなどは異なります。
年金制度は未加入期間NG
原則として、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人は何らかの公的年金制度に加入することになっています。そのため、厚生年金や共済組合の資格を喪失したときは、国民年金へ切り替えなければなりません。切り替えが遅れると後日まとまった期間分の保険料納付書が届くことになり、一度に多くの負担が掛かりますので、切り替えの手続きは早めに行うようにしましょう。
未納があると支給額が減る
2018年現在、保険料を納付した期間や免除になった期間が合計10年あれば年金の受給資格が得られます。しかし、10年納めたとしても未納があれば支給額は減額され、納めた分の年金しか受け取ることができません。
また、年金の受給期間を満たしていない人は、障害年金や遺族年金の受給資格がありません。つまり、事故や病気で障害を負ったとしても障害年金をもらうことができず、突然夫が亡くなったとしても遺族年金を受け取ることができないというリスクがあります。
「免除」と「猶予」の制度
再就職が困難な場合や生活に困窮して保険料を納めるのが難しい場合は、保険料の免除制度や納付猶予制度を活用するのも方法の一つです。前年の所得状況に基づいて審査が行われ、「免除」では保険料の全部または一部の支払いが免除され、「猶予」では保険料の支払いを遅らせることができます。ただし、満額の年金を受け取るためには、免除や猶予により納めなかった保険料を追納する必要があるので注意しましょう。
再就職したら国民年金はどうなるの?
月の途中で再就職しても支払う
国民年金や厚生年金は1か月単位で計算するものであり、月の途中で退職したり再就職したりしても日割りされることはありません。例えば、4月15日に退職して4月25日に再就職した場合は、4月は再就職先の会社から厚生年金保険料が控除されるため国民年金保険料を納める必要はありません。しかし、4月15日に退職して5月25日に再就職する場合は、4月分の国民年金保険料を納める必要があります。
厚生年金に加入したら自動で種別変更
国民年金に加入していた人が再就職し、再就職先の会社が厚生年金への加入の手続きを行うと、国民年金の資格は自動的に喪失するため自ら国民年金の手続きをすることはありません。ただし、国民健康保険については資格の喪失をして保険証を返却しなければなりませんので、最寄りの市区町村役場で手続きをする必要があります。
払いすぎた国民年金は還付される
国民年金を前納していた人が、前納期間中に厚生年金に加入すると、国民年金と厚生年金の保険料の支払いが二重になってしまいます。この場合、会社が厚生年金の加入の手続きをすると、日本年金機構で保険料の納付状況の確認が行われます。後日、「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」が送られてきますので、振込先口座を記入して返送すると、払いすぎた国民年金が還付される仕組みとなっています。
まとめ
厚生年金加入者が退職した場合、国民年金への切り替え手続きは自ら行わなければならず、未納があると、その分だけ将来受け取る年金が少なくなってしまいます。免除や猶予の制度なども正しく理解して、忘れずに国民年金への加入手続きを行うようにしましょう。