国民健康保険は、自営業者や退職者に加入が義務付けられている公的保険制度の1つです。しかし、所定の条件を満たした時に国民健康保険から脱退するケースもあります。今回は具体的なケースと、脱退に必要な手続きについて説明します。
目次
国民健康保険とは
加入が義務付けられている医療保険
国民健康保険は、自営業を営む人や個人事業主を対象とした公的保険制度です。健康保険は会社に勤める人の多くがが加入しているもので、保険料の支払いは給料から天引きされます。
一方で国民健康保険の場合は、加入者が自分で保険料を支払う必要があります。国民健康保険に加入していれば、医療費の3割負担で病院での治療を受けることが可能です。
国民健康保険の脱退が必要となる場合
会社に就職した場合
会社に就職して健康保険に加入する場合は、国民健康保険から脱退する必要があります。脱退手続きは自動的に行われません。加入手続きを勤務先の会社で行い、脱退手続きを各市町村で行います。
脱退せずに2つの保険に加入していると、保険料が二重に課せられることや、保険料滞納の処分を受ける可能性があります。所定の手続きを行い、速やかに脱退しましょう。
扶養に入る場合
既に健康保険に加入している人の被扶養者になる場合にも、国民健康保険を脱退しなくてはなりません。被扶養者とは、扶養者の収入によって生計を維持している年収が130万円に満たない人を指します。60歳以上の高齢者や障害を持つ人の場合は、180万円未満が条件です。
会社に就職した場合と同様に、脱退手続きは自分で行います。加入手続きは扶養者の会社で行われます。
別の市町村へ引っ越す場合
国民健康保険制度の運営元は各市町村です。そのため、引っ越しなどで他の市区町村に移る場合には、転居先の市区町村で新たに加入します。
他の市町村に引っ越す場合、転出届と転入届をそれぞれ提出します。転居の場合は国民健康保険加入と脱退の手続きは同時に行うため、改めて脱退の手続きをする必要はありません。
生活保護を受給する場合
生活保護受給者となった場合、医療費の本人負担分はゼロです。そのため、国民健康保険から脱退する必要があります。順序としては、生活保護受給が認められ生活保護開始通知書が発行されてから脱退手続きを行います。
手続きは郵送では行えないため、窓口に直接出向いて手続きが必要です。ただし、代理人を通しての手続きも可能です。
75歳になった場合
75歳になると、国民健康保険は後期高齢者医療制度に切り替わります。後期高齢者医療制度とは、国民皆保険制度の1つです。被保険者となることで、医療費の一部負担で治療が受けられ、条件を満たす場合には死亡保険金の給付も行われます。
国民健康保険からの切り替えは、年齢要件を満たすと自動的に行われるため手続きは不要です。
死亡した場合
国民健康保険の被保険者が亡くなった場合にも脱退手続きを行います。被保険者が死亡し、葬儀を行う際には葬祭費の受給が可能です。
葬祭費とは喪主に支払われるもので、金額は国民健康保険の運営元である都道府県ごとに異なります。葬儀は行わずに火葬のみを行う場合や事故死、傷害による死亡の場合には支給されません。
脱退手続きは本人のみ?郵送も可能?
手続きは代理人でも可能
国民健康保険の脱退手続きは代理人に依頼して行うことが可能です。ただし、ケースごとに必要な書類が異なります。
健康保険の加入に伴う脱退の場合は以下の書類が必要です。
・国民健康保険異動届
・新たに加入した健康保険証のコピー
・公的に認められた身分証明書のコピー
・国が発行するマイナンバーが記載された書類
・公的に認められた代理人の身分証明書
被扶養者になる際の脱退の場合は、以下の6つの書類が必要になります。
・国民健康保険異動届
・本人の国民健康保険証の原本
・被扶養者となった後の健康保険証のコピー
・公的に認められた身分証明書のコピー
・国が発行するマイナンバーが記載された書類
・公的に認められた代理人の身分証明書
生活保護受給開始に伴う脱退の場合、健康保険証のコピーの代わりに生活保護開始決定通知書のコピーを持参します。
郵送でも受理される
郵送で手続きを行えるのは健康保険加入に伴う脱退時と被扶養者になる際の脱退時のみで、社会保険受給開始に伴う脱退の場合は受理されません。郵送で手続きする場合は、代理人を通す際に用意する書類から代理人の身分証を除いたものを送付します。送付先は各市区町村の役所の担当課です。
いずれの場合でも国民健康保険届はインターネット上でダウンロード可能です。各市町村のホームページにアクセスしましょう。
手続きの手順は各役所・役場に確認
手続きの手順の詳細は、各自治体によって異なります。東京23区の手続きの流れは以下の通りです。
東京23区の場合
東京23区の場合、区役所の担当課で手続きをします。会社の健康保険に加入した場合には、国保年金課で国民健康保険の喪失の届け出をします。転居によって健康保険をやめる場合は、転出届の提出をもって健康保険も脱退したことになるため、健康保険の喪失の届け出は必要ありません。
自治体によって担当部署名が異なることもあります。不明な点は、住んでいる自治体の担当課に問い合わせると良いでしょう。
期間内に国民健康保険の脱退を
期限は14日間
国民健康保険の脱退手続きは、健康保険への加入や生活保護受給資格の取得など、脱退手続きが必要になってから14日以内に行う必要があります。仕事や家事が忙しく、窓口に出向けないという場合は代理人や郵送を利用して行いましょう。
脱退手続きを行わないと国民健康保険分の保険料が請求され続けます。脱退するときは、期限を覚えておくと良いでしょう。
二重支払いとなった場合は還付がある
万が一脱退を忘れていた場合でも、1年以内に国民健康保険の脱退手続きを済ませれば二重に支払った保険料は還付されます。遡及手続きも2年以内であれば可能です。しかし、手続きに時間がかかることもあるので、二重に払ってしまった場合は早めに手続きを済ませましょう。
まとめ
国民健康保険を脱退する際には、いくつかの書類を用意した上での手続きが必要です。ケースごとに手続きの手順などは異なるので、自分が該当したケースの必要事項を予め見ておくと良いかもしれません。また、場合によっては代理人や郵送といった手段を活用できることも覚えておきましょう。