公的保険制度には社会保険や雇用保険がありますが、2つの保険は保障内容が異なります。また被保険者資格を得るためには所定の条件を満たす必要があります。今回は社会保険と雇用保険について、それぞれの仕組みや内容を解説します。
目次
社会保険とは
国民の生活を保障する公的な保険
社会保険制度は、日本の社会保障制度の1つで、国民の病気や怪我、稼得能力の低下などといったリスクを保障するための公的保険です。日本人であれば、職業・年齢などの条件を満たした時点で加入が義務付けられます。社会保険の被保険者となった場合、毎月保険料を支払うことで保障を受ける権利が発生します。
健康保険や厚生年金など
社会保険制度の中には、健康保険と厚生年金が含まれます。健康保険とは、病院で治療を受ける際に医療費の自己負担額を全体の3割に抑えられる制度です。
一方、厚生年金は、会社員や公務員として働いていた人が定年退職した後、基礎年金へ所得比例部分を上乗せした年金を受け取ることができる公的年金制度です。国民健康保険制度は自営業者や個人事業主が加入するものですが、健康保険や厚生年金の主な加入者は会社員です。
医療保険、介護保険、年金保険も含む
また、社会保険には、医療保険、介護保険、年金保険も含まれ、この3点を指して「狭義の社会保険」と呼ばれることがあります。上記の厚生年金保険は年金保険の、健康保険は医療保険の一部として扱われます。
医療保険制度には、健康保険の他に船員保険・共済組合・国民健康保険が含まれます。退職者医療もそのうちの一つです。厚生年金と同様、条件を満たした人に保険金が支払われます。
介護保険は、要介護認定を受けた人が介護サービスなどを一部の費用負担で利用できる保険制度です。要介護認定は各都道府県を通して申請し、認められた場合に取得できます。
パートやアルバイトも加入できる
パートやアルバイトの人であっても、条件を満たせば社会保険に加入できます。具体的な条件は以下の通りです。
1. 1週間の労働時間や労働日数が、正規労働者の労働時間や労働日数の3/4以上である
2. 以下の条件を全て満たしている
・ 時間外労働を含めない1週間の労働時間が20時間以上
・ 残業代や割増賃金を除外した1ヶ月の賃金が8.8万円以上、もしくは年収が106万円以上
・ この先1年以上、雇われる見込みがある
・ 雇われている企業に501名以上の従業員がいること
・ 学生でないこと
1か2のうちどちらかを満たせば社会保険に加入することができます。
雇用保険とは
労働者の生活を保障するための保険
雇用保険は、被雇用者の生活を幅広く保障する機能を持つ公的保険の1つです。設置されている目的は、失業や稼得能力の低下のリスクから被雇用者を守ることにあります。
雇用保険は厚生労働省によって運用されており、保険金給付の手続きや実際の給付は、全国の公共職業安定所を通して行われています。その財源は労使折半で納付される保険料によって賄われています。
育児休業給付や失業者給付など
雇用保険には育児休業給付制度や失業者給付の制度があります。育児休暇を取得すると、その間の稼得能力は低下し、多くの人は収入が減少します。同様に失業期間中も収入が減少する人がほとんどです。そのような人を対象に期限付きで保険金を給付し、被保険者の生活を支えるのがこの制度と言えます。
育児休業給付は、1歳2ヶ月未満の子供の育児を目的として休業する場合に受け取ることができます。保育施設が利用できないなどの事情がある場合には1歳6ヶ月になるまで給付されることもあります。
様々な給付や手当金がある
その他にも、介護のために休業する際に支給される介護休業給付や、60歳~65歳になってからも仕事を続ける人に支給される高年齢雇用継続給付などがあります。このように、被雇用者として労働に従事する人が直面し得るリスクを様々な角度から保障するのが雇用保険の役割です。
扶養の範囲内でも雇用保険に加入できる
扶養の範囲内とは、被扶養者が扶養者の収入によって生計を立てている状態を指すもので、被扶養者の年収は130万円未満である必要があります。つまりこの条件を満たしつつ、パートやアルバイトが雇用保険に加入するための条件を満たしていれば、扶養の範囲内で雇用保険へ加入することが可能となります。
パートやアルバイトも加入できる
雇用保険に加入するための条件は次の3つです。
1. 31日以上雇用し続ける見込みがある
2. 時間外労働を含めない1週間の労働時間が20時間以上ある
3. 学生ではない
この3つの条件を全て満たす場合、パート・アルバイト・正規労働者などに関わらず、雇用者にはその人を雇用保険に加入させる義務が発生します。
それぞれの保険料について
社会保険料は標準報酬月額を元に計算
社会保険料は健康保険料と厚生年金保険料の2点から構成されています。健康保険料は、日本年金機構によって設定される標準報酬月額に、健康保険料率を掛け合わせて算出します。
次に厚生年金保険料は、同様の標準報酬月額に厚生年金保険料を掛け合わせて算出します。これら2つの合計が月額社会保険料となります。
雇用保険料は毎月の給与額を元に計算
社会保険料の算出の際に用いた標準報酬月額は、3ヶ月分の報酬月額の平均値を取ったものです。一方、雇用保険料を算出する際には月額報酬の総額(所得税や社会保険料が控除される前の金額)をそのまま使用します。
まとめ
社会保険や雇用保険には、年金保険や医療保険、失業保険など様々な保障内容が含まれています。所定の条件を満たすことで、非正規労働者であっても被保険者となることが可能です。2つの保険による保障を受けたいと考える人は、加入条件をチェックして労働時間などを見直してみましょう。