日本の社会保険制度は「国民皆保険」という考え方に基づいており、国民は何らかの健康保険に加入しなくてはなりません。しかし、国民健康保険に加入する必要はあっても、保険料が高くて支払えないということがあります。今回は、国民健康保険料が高い理由と、なぜ支払いが困難となるのかを解説し、対策法を紹介します。
目次
国民健康保険料はなぜ高い?
会社の健康保険は負担分が半額
まずは、会社員などが加入する健康保険と比べて、国民健康保険の保険料が高い理由について解説します。会社員であればほとんどが加入する会社の健康保険では、従業員と会社側が保険料を折半することになっています。半額を会社が負担しているため、負担が軽くなっているのです。一方、国民健康保険の保険料は全額自分で支払う必要があるため、高額と感じる人もいます。
国保加入者の平均所得が低い
国民健康保険の保険料が高い原因の1つとして、加入者の平均所得が低いことが挙げられます。国民健康保険の加入者は、年金所得者や無職の人が一定の割合を占めており、その他は農林水産業従事者、自営業者、扶養家族といった人たちで構成されています。そのため、会社員などが加入者である健康保険と比較した場合、国民健康保険の加入者は、平均所得が低くなる傾向があるのです。
国民健康保険では、被保険者である加入者から徴収する保険料が運営の資金源です。加入者の多くを占める低所得者層の保険料を補うために、中所得層の保険料負担が大きくなってしまうことが国民健康保険の割高感を生んでいると言えます。
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退職後無職になり払えない
会社員である間は会社側が健康保険料を半額負担してくれますが、退職して無職になると国民健康保険に加入しなければならず、保険料の全額を自己負担することになります。その他にも、会社員時代には給与から天引きされていた住民税や年金の支払いをしなければなりません。
そのため、給与所得以外の収入(不動産所得や株式所有による所得等)が得られる場合を除くと、ある程度の貯金や退職金が無い人は生活が苦しくなることも考えられます。国民健康保険料が支払えない理由の1つは、退職後に次の就職をせず、無職になる人がいるためと言えます。
会社の健康保険は退職後も任意で継続加入できることがありますが、その場合、保険料は全額自己負担となります。「会社の健康保険を任意継続した場合と、国民健康保険へ新たに加入する場合の保険料を比較し、負担が軽い方を選択する」という方法は、保険料を安く抑えるためには有効な手段といえるでしょう。
自営業や個人事業主である
国民健康保険に加入している自営業者や個人事業主などは、国民健康保険料の他にも様々な税金を支払わなければなりません。会社員が給与天引きされている所得税や住民税だけでなく、個人事業税や消費税についても納める必要があるためです。
自営業や個人事業主には、会社員のように給与所得控除がないため税金の負担は重くなる傾向にあります。そのため、税金と保険料の支払いが負担になっていることも考えられます。
母子家庭で生活が困窮
国民健康保険を支払うことが困難な人の中には、母子家庭という家庭状況が影響している場合があります。多くの自治体では、母子家庭に対する手当支給や就労支援などのサポートを行っていますが、すべての家庭が十分な生活水準に達しているとは限りません。子供が大きく成長するにつれて食費や学費などの支出も増加し、国民健康保険や各種税金の支払いが滞ってしまうケースもあるでしょう。
国保が高い自治体ランキング
年収200万円の場合
「介護保険に未加入かつ年収が200万円である単身世帯」という条件で、国民健康保険の保険料が高い自治体ランキングは、1位広島県広島市、2位兵庫県神戸市、3位北海道函館市、4位大阪府東大阪市、5位宮城県仙台市となっています。
1位の広島県広島市では保険料年額が325,335円で、最安の静岡県富士市との差額は、165,615円にものぼります。また、保険料が年間所得の16.3%の割合を占める計算になります。
年収300万円の場合
それでは次に、年収300万円の単身世帯の場合の国民健康保険が高い自治体のランキングを見てみましょう。(その他の条件は、先ほどの年収200万円のランキングと同様です)
1位広島県広島市、2位兵庫県神戸市、3位北海道函館市、4位大阪府東大阪市、5位宮城県仙台市となっています。年収200万円の場合と同じ自治体がそれぞれの順位を変えずランクインしていることが分かります。ちなみに、国民健康保険が最安の自治体も、年収200万円の場合と同じ静岡県富士市です。
国民健康保険料を安くする方法
法人化する
自営業者や個人事業主が国民健康保険料を少しでも安くするためには、法人化することがひとつの手段です。ある程度の収入があるのであれば、法人化することによって、厚生年金と協会けんぽなどといった社会保険に加入することができます。この場合、法人の代表者1人であっても社会保険への加入は可能であり、従業員の雇用の有無は問いません。
国民健康保険料が世帯人数によって増減することに対し、社会保険の健康保険料は、世帯の人数に関係なく被保険者の収入によって決定します。そのため、家族の人数が多い人ほど負担が軽減されると言えます。配偶者がいる場合には、妻(または夫)を第3号被保険者とし、保険料の負担を軽くすることも可能です。
二世帯住宅は世帯合併
自治体によっては、国民健康保険で世帯ごとに「平等割」と言われる保険料を課しているところがあります。該当する地域に住んでいる人は、世帯を2世帯から1世帯にまとめることで、国民健康保険の平等割部分(数万円程度)を節約できることがあるのです。しかし、世帯を合併することにより、利用中の制度や扶養について影響を及ぼすことがあるため、メリットとデメリットを事前にしっかりと理解しておくことが重要です。
窓口に相談して対策を
国民健康保険がどうしても支払えない場合、正当な理由があれば支払いを免除あるいは減額するよう申請することが可能です。正当な理由とは、災害、失業、病気等により、収入が前年度と比較して著しく減少していることなどを指します。申請先は市区町村役場の国民健康保険取り扱い窓口で、保険料の減免については一定の審査があります。
まとめ
国民健康保険料が高額と感じる理由や支払うことが困難なケースについて、それぞれ考えられる理由を述べてきました。将来的に高齢化が進み、国民健康保険料がさらに増大することも考えられるため、制度や負担軽減の方法に関する理解を深めておきましょう。
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