自営業や個人事業を営む人には、国民健康保険への加入が義務付けられており、被保険者になると毎月保険料の支払いが発生します。今回は国民健康保険料の計算方法や、保険料を安く抑える方法について紹介します。
目次
国民健康保険料の計算方法とは
世帯収入を調べる
国民健康保険料のうち所得割を計算する際には、総世帯収入を大元の数字として使用するため、まずは総世帯収入から算出します。算出する際には扶養者だけでなくアルバイトやパートである被扶養者の収入も計上します。
次に収入から経費を除いた所得金額を算出します。個人事業主や自営業者の場合は、総収入から諸経費を引き、アルバイトなどの場合は総収入から所得控除額分を減額します。この2つを足すと総所得額になります。
基準額を計算
基準額は所得金額を使用して算出します。算出の際には所得金額から基礎控除額分を減額しますが、基礎控除額は対象者すべてに33万円が適用されます。
つまり、基準額を算出する際の式は以下のようになります。
基準額=総世帯収入-諸経費-アルバイトの所得控除-基礎控除額×世帯人数
所得割・資産割・均等割・平等割
所得割は、上記で求めた基準額に料率を掛け合わせて算出します。所得が一定以上の人に対して適用されるため、基準額が0円以下には所得割がかかりません。資産割は、世帯が保有する固定資産を元にした固定資産税額に料率を掛けて算出します。
3つ目の均等割には料率はなく、世帯人数に定められた均等割額を掛けます。最後の平等割は1世帯当たりで金額が設定されています。
なお、算出に使用した料率や金額などは市町村ごとに異なるため、詳しい数値を知りたい場合には問い合わせる必要があります。また各金額は医療分と後期高齢者支援分、さらに介護分の3つから構成されており、それぞれに料率や金額が設定されています。
国民健康保険料をシミュレーション
ここでは両親と子供1人の家庭を想定してシミュレーションをします。なお、世帯の基準額は100万円とし、式の左側の項から順に医療分、後期高齢者支援分、介護分とし、介護保険加入者は1人とします。
東京都千代田区の場合、所得割額は
100万円×6.13%+100万円×1.96%+100万円×0.77%=88,600円
となります。
100万円×6.13%=6万1300円が医療分、100万円×1.96%=1万9600円が後期高齢者支援分、100万円×0.77%=7700円が介護分に該当します。
均等割額は、
31,200円×3+8,700円×3+13,200円×1=132,900円
となります。
31,200円×3人=93,600円が医療分、8,700円×3人=25,100円が後期高齢者支援分、13,200円×1人=13,200円が介護分に該当します。
資産割額と平等割額は市区町村ごとに設定されている場合とそうでない場合があり、千代田区では設定されていません。そのため、1年の保険料総額は88,600円と132,900円を足した221,500円となります。
次に大阪市の場合、所得割額は、
100万円×8.18%+100万円×2.83%+100万円×2.82%=150,620円
となります。
100万円×8.18%=8万1800円が医療分、100万円×2.83%=2万8300円が後期高齢者支援分、100万円×2.82%=2万8200円分が介護分に該当します。
均等割額は、
20,583円×3+7,147円×3+8,678円×1=91,868円
となります。
20,583円×3人=61,749円が医療分、7,147×3人=21,441円が後期高齢者支援分、8,678円×1人=8,678円が介護分に該当します。
平等割額は、
32,896円×1+11,421円×1+10,264円×1=54,581円
平等割額は各市町村で定められた金額に世帯数を掛けるため、ここでは1としています。
大阪府の場合、資産割額は設定されていないため、1年の保険料総額は150,620円・91,868円・54,581円を合計した297,069円となります。
国民健康保険料はなぜ高いのか?
加入者の平均所得が低い
国民年金保険制度によって支払われる保険金の多くは、被保険者が納める保険料によって賄われています。被保険者は自営業者や個人事業主の他、無職の人などの低所得者によって構成されており、十分な保険料を支払えない人や未納の人も少なくありません。そのため、中所得者の負担が大きくなる傾向にあります。
保険料に上限がある
国民年金保険料には上限が設けられており、どれほど所得の高い人であっても一定以上の保険料は払わなくて良い仕組みになっています。そのため、中所得者が高所得者と同額の保険料を支払うことになるケースが考えられ、その場合の負担割合は高くなると言えます。
国民健康保険料を安くする5つの方法
確定申告して年収を減らす
確定申告を行うと、所得控除を受けられる場合があります。社会保険料控除や生命保険料控除、寡婦控除などいくつかの項目があるため、該当するものについては確定申告で計上しましょう。
所得控除を受けると総所得の金額が小さくなるため保険料が抑えられます。また、所得税や住民税の負担を軽減することにも繋がります。
世帯人数を減らす
前述した均等割額は「世帯の人数によって総額が決定する」という仕組みであるため、世帯を構成する人数が増えるほどその金額も増えるということになります。つまり、世帯人数を減らせば均等割額による保険料を減らすことができます。労働時間の調整によって会社の健康保険の被保険者になったり、既に被保険者である人の扶養に入ったりすることで保険料を抑えることができる場合があるため、確認してみましょう。
軽減措置を利用する
収入に対する保険料の負担割合が大きいと感じる場合には、保険料の軽減措置を取るという方法があります。申請を行うには国民健康保険を運営する市区町村の役所を訪問し、担当課に相談しましょう。
申請が通れば、均等割額や平等割額が2割~7割の範囲で軽減されます。保険を滞納すると保障を受ける権利を失う可能性もあるため、納付が難しい時には軽減措置を利用しましょう。
減免措置を利用する
保険料の納付が全く行えないという場合には、減免の措置も行われます。ただし減免が適用されるためには以下の3点のうちいずれかに該当している必要があります。
1. 天災による被害をはじめとした諸事情がある
2. 失業により収入が得られなくなった
3. 会社員など健康保険の被保険者が、後期高齢者医療制度に移行したことで、国民健康保険の被保険者に移行した65歳以上の人
保険料が安い地域に引っ越しする
国民健康保険制度を運営するのは各市区町村であるため、料率や金額は地域ごとに異なります。料率や金額が安く設定されている地域に引っ越せば、保険料も安く抑えられます。年額で数十万程度の差が発生する場合もあるため、引越しを検討している人は保険料について確認してみても良いかもしれません。
まとめ
国民健康保険料の計算方法を理解しておくと、毎年払っている保険料の内訳を算出することができます。保険料が高いと感じる場合には負担を軽減できるケースもあるため、詳細については確認を行ったり、市区町村に問い合わせたりしてみましょう。