家計を支える人が死亡した際、遺された人には遺族年金の受給権が発生する可能性があります。受給者の条件や、万が一のときにどれだけの遺族年金が受給できるのか知る方法などを紹介します。
目次
国民年金で受け取れる遺族年金は?
遺族基礎年金を受給できる人
遺族基礎年金の支給要件は、「国民年金制度の被保険者もしくは25年以上の老齢基礎年金受給可能期間を持つ人が亡くなった場合」とされています。ただし、亡くなった人が免除期間を含めた被保険者期間の2/3以上に相当する保険料を納付している必要があります。
遺族基礎年金の給付対象者とは、亡くなった人の収入によって生計を維持していた「子を持つ配偶者」もしくは次のいずれかの条件を満たす「子」となります。
1. 18歳に到達した年の年度末を跨いでいない
2. 20歳未満で、かつ1級もしくは2級の障害を持っている
「配偶者」は、妻だけでなく夫も該当します。また「生計を維持していた者」とは、年収が850万円未満の人を指します。
寡婦年金を受給できる人
寡婦年金は、国民年金保険に加入していた夫が10年以上保険料を納付しており、かつその夫と10年以上継続した婚姻関係を持っていた妻に受給権が発生する年金です。夫の収入によって生計を維持していた妻が60歳〜65歳の間に受給できます。ただし、妻が老齢基礎年金を繰り上げて受給している場合や、死亡した夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受給していた場合などには受給できない場合があります。
厚生年金で受け取れる遺族年金は?
遺族基礎年金と国民年金は受給者が同じ
本来であれば、遺族基礎年金の受給権を持つ人=国民年金の加入者であると言えます。日本の公的年金制度においては国民年金への加入が義務付けられており、理論上は全員が遺族基礎年金の受給権を持っていることになるためです。しかし、実際には保険料を納めていない人も一定数おり、全員が要件を満たしているわけではないと考えられます。
遺族厚生年金を受給できる人
遺族厚生年金の支給要件は以下の3点です。
1. 厚生年金の被保険者が亡くなった時、もしくは被保険者期間中に病気や怪我を患い、それが元で初診日から5年以内に亡くなった場合(※)
2. 亡くなった人が25年以上の老齢厚生年金の受給権を持っていた場合
3. 1級もしくは2級の障害厚生年金の受給権を持つ者が亡くなった時
※遺族基礎年金の場合と同じく、亡くなった人が、免除期間を含めて被保険者期間の2/3以上保険料を納付している必要があります。
給付の対象者は以下のいずれかを満たし、亡くなった人の収入で生計を維持していた人です。
1. 妻
2. 18歳に到達した年の年度末を跨いでいない、または20歳未満で、かつ1級もしくは2級の障害を持っている子や孫
3. 55歳以上の夫、父母、祖父母
遺族基礎年金の金額の計算方法
「老齢基礎年金の満額」+「子の加算」
老齢基礎年金は、老齢基礎年金の満額である779,300円と子の加算額分を合算することで計算します。子の加算額分は、第2子までは一人当たり224,300円、第3子以降はそれぞれ74,800円が支給されます。ただし「子」は、上記と同様の要件(18歳に到達した年の年度末を跨いでいない、または20歳未満で、かつ1級もしくは2級の障害を持っている)を満たしている人物に限ります。
例えば、第4子まで持つ配偶者が遺族基礎年金を受給する場合、その額は
779,300+224,300×2+74,800×2=1,377,500円
となります。
遺族厚生年金の金額の計算方法
短期要件と長期要件とは
遺族厚生年金の受給額は、短期要件と長期要件で大きく変わる場合があります。短期要件とは厚生年金の被保険者期間中に被保険者が亡くなった場合、長期要件は老齢厚生年金の受給期間中に亡くなった場合を指します。短期要件は年金の最低保障機能を備えているものの、実際の受給額は長期要件の金額を大きく下回るケースも多く見られます。
遺族厚生年金の計算式
遺族厚生年金は、短期要件と長期要件のいずれの場合も
亡くなった人の標準報酬月額×給付乗率/1000×被保険者期間月数×3/4
によって算出されますが、短期要件についてはどんなに被保険者期間月数が短い場合でも300月として計算します。
おおよその目安は報酬比例部分の3/4
遺族厚生年金の計算式は上記の通りですが、標準報酬月額と給付乗率、被保険者期間月数の全てのデータを集めることが難しい場合もあります。そのようなときには、厚生年金の報酬比例部分に3/4を乗じることで給付総額の大まかな数字を算出することができます。概算した金額だけでも算出しておけば、将来得られる遺族厚生年金の見通しを立てることができます。
「年金定期便」をもとに試算可能
厚生年金の加入状況に関する情報が掲載されているのが「ねんきん定期便」です。これは自分の毎年の誕生月に日本年金機構から送付されるハガキで、これまでの被保険者期間や、それに応じた老齢厚生年金の金額が記載されています。記載されている老齢厚生年金の金額に被保険者期間月数と3/4を乗じれば、概算額を算出できます。
「中高齢加算」の要件と加算額
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金を受給している女性が以下2点の要件を満たす場合に年額で585,100円が支給されます。
1. 40歳〜65歳の間に夫が死亡し、かつ子がいない場合
2. 子が年齢要件から外れ、遺族基礎年金の受給権を失った場合
なお、子の年齢要件は先ほど紹介した通りです。
配偶者の職業による遺族年金の違い
上記で説明したように、原則として配偶者が国民年金をもらえる条件を満たしている場合「遺族基礎年金」を、厚生年金をもらえる条件を満たしている場合「貴族厚生年金」を受け取ることができます。
そのため、配偶者の職業によって、もらえる遺族年金には以下のような違いがでます。
- 配偶者が「会社員」の場合 : 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金
- 配偶者が「公務員」の場合 : 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金 ※2015年10月以前は「遺族共済年金」
- 配偶者が「自営業者」の場合 : 遺族基礎年金
公務員の場合、以前は共済年金制度があったため「遺族共済年金」が支給されていましたが、2015年10月の改正により年金制度が厚生年金保険制度に統一されたため、受け取る遺族年金についても「遺族厚生年金」へと変わることになりました。(ただし、10年間の移行措置があり、この期間においては支給される金額が異なる場合があります)
配偶者の職業によって受け取れる金額に差がある状況ですので、念のためしっかりと加入している年金の状況を確認しておくと安心です。
まとめ
遺族年金には遺族基礎年金や遺族厚生年金、中高齢過寡婦加算などの種類があります。それぞれの制度毎に計算方法が定められており、受給金額の概算などに利用することができます。より正確な金額や情報が知りたい場合には、加入先の年金事務所などに問い合わせを行いましょう。