家計を支える人が万一の出来事で亡くなった場合、保障が無ければ生活に困ってしまうことがあります。その際に役立つのが公的年金制度の一つ、遺族年金です。今回は遺族年金の支給要件や、妻や子供の有無による支給金額の違いを紹介します。
目次
遺族年金とは
遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類
遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類が遺族年金に当たります。遺族基礎年金は、国民年金に加入している人とその家族が一定の要件を満たした場合に支給されます。遺族厚生年金についても同様ですが、厚生年金に加入している人(会社員など)が対象となります。
遺族基礎年金は誰がいつまでもらえる?
被保険者の支給要件
まずは遺族基礎年金の支給要件をチェックしましょう。国民年金の被保険者、または「被保険者期間の保険料支払実績によって、老後に年金を受け取れる期間が25年以上ある人」が亡くなった場合に遺族基礎年金の支給要件は満たされます。ただし、亡くなった人は「過去に保険料の納付を行った期間と支払いを免除されていた期間の合計が国民年金に加入していた期間の2/3以上」である必要があります。
もらえる人は「子のいる配偶者」と「子」
支給の対象となるのは、亡くなった人の収入で生計を立てていた「子のいる配偶者」と「子」です(「生計を立てていた人」とは、年収が850万円未満である人を指します)。子供を持たない配偶者や、次に紹介する条件を満たさない子供については遺族基礎年金が支給されないという点に注意が必要です。
「子」が18歳になる年度までもらえる
「子」とは、「18歳になった年度末である3月31日を跨いでいない人」もしくは「20歳未満で、障害年金で設定されている障害等級の1級もしくは2級に当たる人」に限られます。つまり、健常な子供が18歳を過ぎると遺族基礎年金の受給要件は消滅します。これは、18歳を過ぎてからは自分で収入を得るなど、自立した生活を送れると判断されているためです。
遺族基礎年金を受給できる金額
遺族基礎年金の受給金額は、779,300円に子供の数に応じた金額を加算して算出することができます。第1子と第2子にはそれぞれ224,300円、第3子以降にはそれぞれ74,800円が支給されます。
例えば妻+18歳未満の子3人の場合、遺族基礎年金の年金総額は
779,300円+224,300円+224,300円+74,800円=1,302,700円
となります。
遺族厚生年金は誰がいつまでもらえる?
被保険者の支給要件
支給要件は次の3点です。1点目は「厚生年金加入者が亡くなった場合、もしくは被保険者期間中に怪我や病気を発症し、それが原因で初診日から5年以内に亡くなった場合」です。遺族基礎年金の支給要件と同様、「亡くなった人が過去に保険料を納付、または免除されていた期間が国民年金の加入期間の2/3以上」である必要があります。
支給要件の2点目は「老齢厚生年金を受給できる期間が25年以上ある人が亡くなった場合」、3点目は「1級または2級の障害厚生年金もしくは障害共済年金の受給権を持つ人が亡くなった場合」です。
受給できる遺族の順位
支給要件を満たした遺族の受給順位は、亡くなった人の収入で生計を立てていた人のうち次の順番となります。
1. 妻、55歳以上の夫
2. 遺族基礎年金の支給要件と同様の要件を満たす子
3. 父母
4. 遺族基礎年金の「子」支給要件と同様の要件を満たす孫
5. 祖父母
なお、「子供を持つ配偶者」と、遺族基礎年金の支給要件と同様の要件を満たす「子」については、遺族基礎年金と遺族厚生年金の併給が認められています。なお、この場合の「生計を立てていた」人も、遺族基礎年金の場合と同様に「年収850万円未満の人」を指します。
もらえる期間は対象者によって違う
要件の通り、子は「18歳になった年度末である3月31日を跨ぐまで」もしくは「障害年金で設定されている障害等級の1級もしくは2級に当たる人が20歳を迎えるまで」が支給期間となります。「55歳以上の夫、父母、祖父母」の場合には60歳から支給が開始されますが、夫は遺族基礎年金を受給している最中でなければ遺族厚生年金を併給することはできません。「30歳未満の子供を持たない妻」については、5年間の期限付きの給付となります。
老齢厚生年金を受給できる金額
老齢厚生年金は、基礎年金部分と報酬比例部分に分けられます。報酬比例部分の計算は、以下の式に基づいて行います。
平均標準報酬月額×給付乗率/1000×厚生年金被保険者期間月数×3/4
給付乗率は、被保険者期間となっていた年度によって異なり、平成15年3月までの期間については7.125、平成15年4月以後の期間については5.481を使用して計算します。
老齢厚生年金を受給できる場合は差額となる
自分が既に老齢厚生年金を受給している場合は、遺族厚生年金に対して老齢厚生年金が優先して支給されます。つまり、自分の年金額を上回る金額部分のみが遺族厚生年金として支給されます。そのため自分の老齢厚生年金の受給額が遺族厚生年金を上回る場合は、年金の受給額が十分であると判断され、遺族厚生年金は支給されません。
まとめ
遺族年金は、受給要件や受給可能期間が細かく設定されています。老齢年金・遺族年金それぞれについて「自分はどの程度の金額を受給できるのか」ということをチェックしておくと、将来の見通しが立てやすくなるかもしれません。