2016年10月に法改正が行われ、社会保険の加入条件が変更されました。その結果として、条件が揃っていれば短時間労働者も社会保険に加入することができるようになっています。本ページでは、社会保険に加入できる条件・扶養に関する情報などをまとめています。
目次
社会保険の加入義務がある事業所とは
社会保険の強制加入事業所の要件
社会保険は公的機関が運営する社会保障制度であるため、条件に当てはまる事業所やその従業員には加入義務があります。
①従業員を1人以上雇用している法人事業所
②従業員を常時5人以上雇用している法定された業種の個人事業所(製造業、土木建築業など16業種)
この2点が、加入義務が発生する事業所の条件です。
加入義務のない事業所も任意加入可能
上記に当てはまらない事業所についても、以下の条件を満たしていれば社会保険へ任意に加入することができます。
①雇用している従業員数が5人未満の個人事業所
②法定された16業種以外の個人事業所
社会保険への加入を希望する場合には、勤め先が社会保険への加入条件を満たしているかどうか確認しましょう。
社会保険の加入対象の拡大とは
従来の短時間労働者の加入条件
以前は、以下のいずれかを満たすことが、従業員が社会保険に加入する条件でした。
①年収130万円以上
②1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上
しかし、2015年4月にパートタイム労働法が大きく見直され、さらに翌年10月には、短時間労働者も社会保険に加入できるよう改正が行われました。
2016年10月以降の短時間労働者の加入条件
2016年10月の法改正により、短時間労働者も、次に挙げる全ての条件を満たしていれば社会保険に加入対象になりました。
①労働時間が週20時間以上であること
②月額賃金が88,000円以上、年額で106万円以上であること
③1年以上の雇用が見込まれること
④雇用先の従業員が501名以上であること
⑤学生でないこと
2017年4月以降は労使の合意で任意加入可能
さらに、平成29年4月からは、従業員数500人以下の企業に雇用されている短時間労働者も、労使間の合意があれば社会保険への加入が可能となりました。なお、「労使間の合意」には、対象者(社会保険の被保険者、および所定条件を全て満たす短時間労働者等)の1/2以上の同意が必要です。
社会保険や税金で扶養に入れる基準
103万円の壁
年収が103万円未満である場合、基礎控除38万円と給与所得控除65万円、合計で103万円が所得税の計算基準から控除されます。さらに、
①婚姻関係(内縁は含まれない)にある
②納税者と生計を同じくしている
③青色申告の専従者としての給料を受けていない、または白色事業専従者の対象でない
以上全ての条件を満たせば、配偶者控除も受けることができます。配偶者控除とは、配偶者の所得税の計算基準からも38万円が控除されるもので、この制度をどちらも活用するための年収上限は「103万円の壁」と呼ばれています。
106万円の壁
現在では、家族の扶養に入っている人にとっては「106万円の壁」という新たな年収上限があります。これは、社会保険に加入するための全ての条件と「年収が106万円以上であること」を満たすと、短時間労働者にも社会保険への加入義務が生じることを意味します。つまり、家族の扶養に入っていても社会保険料を支払わなければならないということです。
ただし、「掛け持ちしている2社以上の勤め先から受け取る給料がそれぞれ年額106万円以下である」という場合であれば「106万円の壁」の影響を受けない場合もあります。複数の勤務先の給与合算額が106万円を超えていても、社会保険へ加入する必要はありません。
130万円の壁
「130万円の壁」とは、家族の社会保険の扶養に入ることのできる被扶養者の年収の上限です(被扶養者が60歳以上または障害を持っている場合、180万円)。この金額を超えると、家族の扶養から外れることになり、勤め先の社会保険に加入する条件を満たしていなくても、自ら国民年金や国民健康保険の保険料を負担しなくてはならなくなります。これらの社会保険料は、年収が130万円の壁を越えた時点で課せられ、年間で20~30万円程度の負担額となります。
社会保険の加入条件に該当しないためには?
従業員が501人以下の企業で働く
社会保険に加入する条件を満たさないようにするためのひとつの方法として、従業員数が501人以下の企業で働く、ということが考えられます。しかし、従業員数501人以下の企業でも、労使間の合意があれば条件次第で社会保険に加入することになるため、単純に従業員数だけで判断することはできません。求人情報などに書かれている「社保完備」という言葉は「従業員が社会保険に加入できる」ということを示しているため、勤務先を選ぶ際のチェックポイントにしましょう。
年収を106万円未満に抑える
年収を106万円未満に抑えれば社会保険に加入する条件を満たさないため、勤務先に関係なく社会保険料を納める必要はなくなります。なお、この場合の「年収」には交通費や残業代は含まれないため、106万円未満にするには「平均月収が88,000円以下」である必要があります。年末が迫ってきたときに慌てないよう、日頃から給料明細はしっかり管理するようにしましょう。
週20時間未満で働く
勤務時間が週20時間未満であれば、社会保険の加入条件から外れるので、週5日勤務の場合は1日当たりの勤務時間を4時間未満に抑えるようにします。ちょうど週20時間程度働いている人の場合、やむを得ず勤務時間が増えた週があったときには、他の週で調整することを心掛けましょう。
まとめ
「保険料が手取り給料から減ってしまうため、社会保険に加入すると損をする」という捉え方がある一方、「保険料を支払えば将来の年金受給額が増えたり、手厚い保障が受けられるようになったりする」という面があるのも社会保険です。正しい内容を知り、加入するかどうかを検討しましょう。