日本では、日本に住所がある全ての人が社会保険への加入する必要があることはご存じでしょうか。社会保険に加入すると、毎月定められた金額の保険料を支払います。今回は社会保険の知識や保険料控除の手続きを取り上げます。
目次
社会保険料控除とは?
払った保険料の分、所得控除を受ける
給与所得者の場合は毎月の給料から所得税が天引きされますが、計上されている税額は所得控除が考慮されていません。一方、毎月払っている自分、または家族の保険料は所得控除の対象です。1年間で支払った保険料総額を計算し、所定の手続きを行うことで社会保険料控除として所得控除を受けられるようになります。
上限はなく、支払った全額が控除対象
社会保険料は給与水準によって異なっており、給料が高い人ほど多くの保険料を納めることになります。仮に社会保険料控除に上限が設定されていた場合、給料が高い人と低い人の間で税負担額に大きな差が生じる可能性が高いです。
税負担の差を発生させないために、社会保険料控除には上限が設定されていません。したがって、支払った保険料は全額を控除対象として計上できるようになっています。
国民健康保険や国民年金保険料も対象
会社員や公務員の人は健康保険や厚生年金保険に加入しており、自分の分の社会保険料は会社などによって給料から天引きされます。一方、国民健康保険や国民年金保険に加入している自営業者の場合、保険料は自分で納めます。
国民健康保険や国民年金保険も、自分で手続きを行うことで社会保険料控除の対象です。具体的な申請手続きについては後に説明します。
介護保険料、雇用保険料なども含む
所定の条件を満たすと介護保険や雇用保険への加入が義務付けられ、同時に保険料支払い義務が発生します。社会保険料控除の際には、この2つの保険料も計上します。
介護保険は40歳以上の日本人全てが被保険者です。雇用保険は、労働時間や勤続日数の見込みなどを満たす人が被保険者となります。自営業者の場合は自分で手続きを行います。
扶養家族がいる場合配偶者の保険料も
1年間に支払った社会保険料は、自分の分と家族などの分を合わせた全額が所得控除の対象となります。税負担能力の観点から公平性を保つためです。
独身の人と妻子持ちの人を比較すると、独身の人は、自分の分の保険料のみで済むため保険料負担は小さくなります。一方、妻子持ちの人の場合は妻子の保険料も支払うため、独身の人よりも保険料負担が大きいです。そこで社会保険料控除の制度を設け、家族構成などに関係なく社会保険料と所得税のバランスを個人間で公平にしています。
社会保険料控除を受けるための手続き
会社員は年末調整時に申告
会社員の場合、自分の分の保険料は会社から既に天引きされているため、改めて申告する必要はありません。しかし、家族の保険料を社会保険料控除の対象にする場合には申請が必要です。
申請が必要な場合は、家族が加入している社会保険の種類や支払先など必要な情報を記入した上で、年末調整の際に会社に申告します。申告に使用する書類は、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」です。
個人事業主などは確定申告する
会社員の場合とは異なり、フリーランスや個人事業主の場合は、社会保険料は自動的に計上されません。社会保険料控除を受けるためには、掛かった保険料を自分で計算し、定められた期間に忘れずに確定申告を行う必要があります。確定申告の期間は決められているので、忘れないように申告して控除を受けましょう。
国民年金の申告には控除証明書が必要
国民保険料の支払い分を社会保険料控除の申請に加える場合には、国民年金保険料を支払ったことを証明する書類を用意して提出する必要があります。会社員、個人事業主、フリーランスでも同様です。会社員であれば年末調整時に会社に提出し、個人事業主やフリーランスの場合は確定申告書に証明書類を添付して提出します。
その他知っておきたい所得控除の種類
医療費を一定以上払うと医療費控除に
医療費控除の金額は、1年間に支払った医療費の総額で変化します。計算によって控除額がマイナスになる場合は、控除の対象とはなりません。つまり、1年間の医療費総額が(保険金)-(所定の所得条件)を上回っている場合に医療費控除が受けられます。
医療費を計上する際には公共交通機関を使用して発生した通院費も加算可能です。計算式は、総所得が2,000,000円を上回るか否かで変わります。
2,000,000円以上の場合は、以下の式で控除額を算出します。
1年間の医療費総額 - 保険金等 - 100,000円
2,000,000円未満の場合は、以下の通りです。
1年間の医療費総額 - 保険金等 - 総所得 × 5%
生命保険料が控除される生命保険料控除
介護保険や個人年金保険も生命保険料控除の対象に含まれます。控除額は保険ごとに算出しますが、保険間での控除額の算出に違いはありません。
平成24年1月1日以降の契約に該当する新契約の場合は、支払い保険料額が20,000円であれば全額、20,000円〜40,000の場合には保険料の50%に10,000円を追加した額が控除されます。40,000円〜80,000円の場合には保険料の25%に20,000円を追加した額、80,000円以上の場合は40,000円が控除されます。
配偶者が被扶養者の場合、配偶者控除
配偶者控除は、控除対象に配偶者が含まれる際に適用されます。ただし、配偶者は納税者の収入だけで生活している被扶養者でなければいけません。被扶養者であれば、380,000円の配偶者控除が適用されます。年間の所得総額は380,000円以下、もしくは給与収入のみであれば年間1,030,000円以下であれば被扶養者と判断されます。
まとめ
社会保険料控除は、支払った保険料に応じて所得控除が受けられる制度です。実際に控除を受けるための手続きは、会社員か個人事業主で異なります。自分の社会保険の種類を確認すると同時に、生命保険や家族の保険の加入状況、その他の所得控除制度も把握しておきましょう。