日本では、確定拠出型年金や民間保険会社が運営する個人年金などの年金制度が普及しています。両者には独自の特徴があり、加入する年金によって将来受け取れる年金の金額や所得控除の金額が変化します。今回はそれぞれの特徴や併用の可否についてチェックします。
目次
老後に備えた資産づくりとは?
老後資産を作る3つの要素
老後の資産を形成する際に重要な要素は、資産の「流動性」、「安全性」、「収益性」の3つです。将来の資産活用目的によって、3つの要素のバランスを考えて資産形成を進めますが、老後資産の場合は安全性を確保しつつ収益性を伸ばすことを重視します。この2つの要素を満たした資産形成方法に確定拠出年金と個人年金があります。
個人年金保険と確定拠出年金(ideco)
個人年金は契約する際に将来受け取る保険金額を決定し、その額がある程度保障される特徴があります。また契約後の中途解約も可能ですが、その場合は保険金額が減額されます。
一方確定拠出年金の場合は、年金の運用組織による運用実績によって保険金額が変動します。払った保険料に対して収益率がプラスとマイナスどちらにも成り得るのが特徴の1つです。なお契約後の中途解約は原則不可です。
両方を併用することができる
2つの年金の運用団体は異なり、個人年金は民間保険会社、確定拠出年金は国民年金基金によって運用されています。そのため両方を併用することが可能です。併用することで得られるメリットには、個人年金によってある程度の資産額を安定的に貯蓄しつつ、確定拠出年金でリスクのある資産運用を行って収益率を高められる可能性がある点が挙げられます。
個人年金保険の特徴
老後資金という目的に合致
老後資金を形成する際に重要な要素は、安全性と収益性の2点を挙げましたが、個人年金は契約時に定めた保険金額が保証されるため安全性の確保に優れています。元本と保険金額のバランスの見通しが立てやすい点も特徴です。ただし中途解約すると保険金額が減額され、解約時期によっては元本割れを引き起こす可能性がある点には注意しましょう。
保険商品の種類が多い
個人型保険の種類には、円建てや外貨建てで運用するものから株や債権を活用して投資を行う変額タイプのものがあります。貨幣の安全性の高い円を使用する円建てタイプは安全性が高い保険商品です。一方、市場を通して株や債券の売買する変額タイプや、価値の変動の大きな外貨取引を行う外貨建ては、リスクを背負いながら利益を追求できる保険商品です。
このように契約する保険会社によって取り扱っているものに違いがあり、種類が多いので選びきれないということもあるでしょう。
確定拠出年金(ideco)の特徴
掛け金が全額所得控除される
確定拠出年金に加入して積み立てる保険料、つまり掛け金は全額所得控除となるため税制上のメリットが得られます。具体的には所得税と住民税の課税額が小さくなります。例えば年収が500万円で、毎月1万2,000円を掛け金として積み立てる35歳の人の場合、60歳まで積み立てるとすると、25年で72万円の節税効果となるのです。
一度加入したら途中解約できない
確定拠出年金を一度契約すると、途中解約ができないため保険期間が終了するまで積み立てた掛け金を引き出すことができません。これは途中で資産を崩せないということでもあるため、「老後資産のため」と考えると強制的に積立ができます。
また中途解約はできませんが掛け金の金額を変更することは可能です。ただし積立期間は10年以上が必要なケースが多いため、50歳以降での新規加入を検討する際には注意が必要です。
口座を維持する経費が掛かる
確定拠出年金を契約する際には、専用の口座を開設する必要があり、その口座を維持するために口座管理料を支払います。その値段は各保険会社や証券会社によって異なるため開設時に確認しましょう。
発生する費用は、開設時に発生する初期費用と運用期間中に毎月発生する費用の2つです。開設時費用は企業間で一律ですが、毎月の費用には若干の差があります。
選ぶ時のポイント
加入を考えている年齢
現在の年齢から年金の受け取り時期まで、資産を運用できる期間がどの程度残っているのかを試算しましょう。特に確定拠出年金の場合、20代から長期の保険期間を掛けて運用益を出すため、50代からの加入だと十分な運用益が得られない可能性があります。50代から加入する場合は、保険料を一括で払う一時払い制度を使用して個人年金に新規加入することも可能です。
職業と収入面
確定拠出年金には所得控除のメリットがある一方で、口座を維持するための費用が必要というデメリットもありました。そのため安定したある程度の給与水準のある公務員や会社員、個人事業主の方が確定拠出年金によって得られるメリットが大きくなります。
その理由は、所得額が大きいほど課される所得税や住民税の金額が大きくなるためです。所得のない専業主婦の場合、所得控除を受けることはできないため確定拠出年金のメリットは感じにくいでしょう。
お金の使い道
ここまで年金の契約の主目的を老後の資産形成としてきましたが、保険期間中に病気や怪我の発症や万一のことがあった時にある程度お金が必要になることもあります。
確定拠出年金は中途解約ができませんが、個人年金の場合は中途解約によってそれまでに積み立てた掛け金の一部を引き出せるため、いざというときにも備えたいという人のニーズに応えられます。
基本的には老後の備えですが、いざというとき途中解約できるかできないかも選ぶポイントのひとつでしょう。
まとめ
確定拠出型年金と個人年金には、保険料の調整や中途解約の可否などの特徴に違いがあります。また収入や職業ごとに得られるメリットも異なります。現在の自分の年齢と収入、資産形成の目的を見比べて、適している年金保険を選択しましょう。