厚生労働省が近年推進しているのが、訪問看護(在宅看護)です。訪問看護では、住みなれた家や地域で療養ができる一方、家族の負担が増えるという一面もあります。この記事では、訪問看護の種類や利用方法について紹介します。サービスを受ける際の参考にしてみてください。
目次
訪問看護の種類は?
介護保険による訪問看護
訪問看護サービスを受けられる法的制度のひとつが、介護保険です。介護保険は40歳以上の人全員が収入に応じた保険料を支払い、介護が必要となったときに適切なサービスを受けられるよう備えるための制度です。
介護保険を利用できる人
1.65歳以上で要支援・要介護と認定された人
2.40歳以上65歳未満、16特定疾患の人で、要支援・要介護と認定された人
要介護認定された人は、原則として利用額の1割で訪問看護サービスを利用することができるようになります。ただし、支給額や利用時間・利用回数には限度があるので注意してください。
介護保険による訪問看護を利用したい人は、まず市区町村に申請しなければなりません。その後認定調査などを経て要介護認定を受けたのち、医師に訪問看護指示書を作成してもらい、サービス業者と契約をします。
医療保険による訪問看護
公的な保険制度を利用した訪問看護の2つ目が、医療保険です。各世帯の世帯主が各自の収入に応じた保険料を納めることで、看護が必要になったときに一定のサービスを受けることができる制度です。
医療保険の訪問看護を利用できる人
1.介護保険の対象とならない人
2.厚生労働大臣が認める疾病等に該当する人
3.症状が悪化し、医師によって特別な指示が出された人
こちらは市区町村への申請ではなく、医師による判定となります。対象と判断された場合には医師から訪問看護指示書の交付を受け、サービス業者と個別に契約します。
医療保険の訪問看護は、年齢によって利用額の1~3割で看護サービスを利用することができます。支給額に制限はありませんが、やはり利用時間・利用回数には限度があります。介護保険・医療保険どちらとも対象になった場合には、医療保険の訪問看護が優先されるケースが多いため、不明点については事前に確認しておきましょう。
民間の訪問看護
民間の訪問看護は公的な保険制度と違い、あらかじめ保険料を納める必要がありません。その代わり、サービスを受ける際に掛かる費用は全額自己負担となります。
民間の訪問看護を利用する際には年齢や疾病による制限がなく、市区町村の認定審査や医師の判断も不要です。利用を希望する場合は電話などで依頼し、任意の看護サービスと個別に契約してください。
「訪問介護」との違い
訪問看護と訪問介護の大きな違いは、「医療処置を行うかどうか」にあります。訪問介護は、介護福祉士などの資格を有したホームヘルパーと呼ばれるスタッフが行います。食事や排せつなどといった身体的な介護のほか、掃除・洗濯・買い物などの家事を代行することもあります。
一方、訪問看護を行うのは、看護師や保健師といった医療従事者です。そのため、身体的な介護の他に、点滴や胃ろう、人工呼吸器の管理なども行うことができます。
訪問看護指示書・特別指示書
公的な保険を利用する際に必要
訪問看護指示書や特別訪問看護指示書(特別指示書)は、介護保険や医療保険の訪問看護サービスを受ける際に必要となる書類です。訪問看護指示書は、訪問看護師の依頼により主治医が交付します。
訪問看護師から医師へは、定期的に訪問看護計画書と訪問看護報告書が提出されます。これらの報告書をもとに、看護の必要性の有無や適切な看護が行われているかどうかの判断を主治医が行います。
訪問看護指示書の有効期限は、交付後6カ月です。期限が過ぎた後も引き続き訪問看護を希望する場合は、訪問看護ステーションの看護師から主治医へ新たに交付の依頼をします。
2つの指示書の違い
特別訪問看護指示書は単体で作成されることはなく、訪問看護指示書が交付されていることが条件となります。訪問看護指示書を交付されている人が、病状の悪化や終末期であること・退院直後であることなどを理由に、さらに頻繁な訪問看護が必要であると判断された場合、特別訪問看護指示書が交付されることになります。
特別指示書の有効期限は「医師の診察を受けた日から14日以内」で、原則として月1回の交付が可能です。ただし、気管カニューレを使用している人や真皮を超える床ずれがある人などについては、月2回の交付が可能となります。
複数の訪問看護を併用できる?
公的・民間の訪問看護は併用可能
公的な看護訪問サービスには、利用時間や利用回数に制限があります。そのため、人によっては希望するサービス内容には足りないと感じることがあるかもしれません。
公的制度だけでは看護が不足であるという場合には、民間の看護サービスを併用することができます。患者の状況や、看護をしてくれる家族の状態によって使い分けるようにしてください。
公的な訪問看護は利用制限がある
前述の通り、公的な訪問看護には利用の回数や時間、支給額に制限があります。制限内容は医療保険・介護保険によってそれぞれ異なります。
医療保険では、週に1~3回までの訪問看護を受けることができます。1回の利用時間は30分~90分です。支給額の制限はありません。
医療保険では患者の抱える疾患により、以下のような特例が適用されることがあります。
・「厚生労働大臣が定める疾病などの患者」の場合は、週4回以上の訪問看護の利用が可能です。また「厚生労働大臣が定める長時間の訪問を要する者」は、週1回に限り90分を超える長時間の利用も可能です。
・特別訪問看護指示書を交付された人は、通常の医療保険での訪問看護を超えた看護を受けることができます。
介護保険の訪問看護を利用する場合、利用回数に制限はありません。1回の利用時間は20分未満・30分未満・30分以上60分未満・60分以上90分未満の4つから選ぶことができます。ただし、介護保険には支給限度額が設けられているため、限度額内でサービスを選択する必要があります。
訪問看護で請求される料金や自己負担割合は?
訪問介護保険は限度額を超えると自己負担
介護保険には要介護度という判定基準が設けられており、要支援1・2、要介護1~5の7段階に分かれています。介護保険で訪問看護を受けるときには、この要支援・要介護度に応じて毎月の支給限度額が決められています。
限度額以内の利用の場合は、原則として利用額の1割が利用者負担です。限度額を超えた分については自己負担をしなければなりません。
医療保険は一部・民間は全額自己負担
医療保険によるサービスを受けたときの費用は、「診療報酬点数」という点数の形式で表されます。在宅看護により患者に必要な医療行為を行った場合、診療報酬は一日単位で計算され、実際の金額は1点=10円で換算されます。
医療保険には、支給限度額はありません。患者の所得や年齢により、原則として医療費の1~3割(70歳以上の人は1割、70歳未満の人は3割、未就学児は2割)を負担することとなりますが、前述の通り医療保険の訪問看護には回数・時間に制限があります。制限を超えた分は全額自己負担となるので注意してください。
一方、民間の看護サービスは利用回数や利用時間に制限が無いだけでなく、24時間利用が可能であるなど柔軟に対応してくれる場合が多い点が特徴です。ただし、費用は全て全額自己負担となります。公的な看護サービスと併せて活用していくようにしましょう。
まとめ
在宅による看護は今後も増加すると考えられ、自分も当事者となる可能性があるということは念頭に置いておいた方が良いかもしれません。看護に直面したときに慌てなくてすむよう、日ごろから在宅看護についての知識を蓄えて、準備をしておくことが大切です。