介護保険法が改正され、2018年度からは介護保険制度が段階的に移行されることが決定しています。改正の内容は介護費用の自己負担割合の変化や各介護施設の新設を開始するといったものです。今回は改正されたポイントを詳細に解説します。
目次
そもそも介護保険制度の仕組みは?
社会全体で高齢者を支える
介護保険制度は、社会の構成員全員で高齢者を支えることを目的としています。介護保険制度が整備される前は、「高齢者の介護を行うのは家族の役目である」と考えられる傾向にありました。しかし、家族形態や働き方の変化、少子高齢化の影響などによって社会の状況は変化し、2000年に介護保険制度が成立する運びとなります。なお介護保険制度は、「社会全体による支援を得ながら高齢者の自立生活を促す」ということも目的の一つに掲げています。
要介護認定か要支援認定を受ける
介護保険による保障を受けるためには、要介護・要支援のどちらかに該当すると認定される必要があります。認定の申請が受理されるまでの手順は以下の通りです。
まず、介護保険制度を運営する市区町村に申請を出します。申請を受けた市区町村は、申請者の自宅を訪問して症状のチェックをします。主治医の意見書なども参考にしながら介護や支援が必要か否かの判定を行い、承認されれば要介護・要支援認定が得られます。
財源の半分は税金で賄われている
介護保険制度で受けられる保障は、税金と保険料を半分ずつ財源として行われています。税金は消費税や所得税という形で国民全体から徴収され、保険料は40歳以降の介護保険被保険者から徴収されます。税金を財源に当てることで、「全ての国民による高齢者支援への参加」が間接的に実現されている点も特徴の1つです。
様々な介護サービスが受けられる
介護サービスは、自宅や施設で利用することができます。自宅で利用できるサービスには、ホームヘルパーが自宅に来て食事などの介護をする訪問介護・ケアマネージャーによる支援を受ける居宅介護支援などが該当します。施設で利用できるサービスには、食事や機能訓練などのサポートを受けるデイサービス・リハビリを受けるデイケアなどがあります。
2018年度介護保険法の改正点は?
自己負担額の3割負担が導入される
改正後は、一部の介護サービスを利用する際の自己負担分が2割から3割に引き上げられます(ただし月額44,000円以下とする)。少子高齢化が進む人口構造では、少数の現役世代が多数の高齢者を支える必要があります。そのため、世代間で不公平性が高まるとして、負担割合が高く設定されたというのが背景です。
保険者へ財政的な支援が行われる
介護保険法の改正によって、制度を運営している市町村へ財政的インセンティブが与えられることになります。介護保険の目的には、被保険者の自立支援と介護があります。これらの領域で成果を上げる保険者(市町村)に対して追加的な交付金を支給することで、今まで以上に介護保険制度による支援を充実させようという狙いがあります。
介護医療院が新しく創設される
要介護・要支援認定を受けている人の中には、症状が慢性化している人もいます。そのような人が持つ長期的な療養・介護のニーズに応えられる施設が介護医療院です。
利用者は、日常生活の支援と介護が同時に受けられるようになります。なお、介護医療院の前身に当たる介護療養病床は、2024年の3月末までに廃止されることが決定されています。
共生型サービスが創設される
共生型サービスとは、介護を必要とする高齢者や障害を持つ子供が1つの事業所で支援サービスを受けられる形態を指します。これまで両者は異なる施設で支援を受けており、障害支援を受けていた人が高齢になると施設を移動する必要がありました。共生型サービスは、こういった不便さの解消・支援サービスの一貫化などを目的として導入されたものと言えます。
福祉用具貸与価格の平均が公表される
福祉用具とは、介護や支援の際に必要な用具(車椅子や手すり・歩行器など)のことです。福祉用具の貸与は各業者によって行われており、価格も業者ごとに異なります。介護保険法の改正によって、用具貸与価格の全国平均が開示されることになるため、利用者は業者の価格と平均価格を比較して利用を検討することができます。
介護保険制度は何年ごとに変わる?
介護保険制度は3年ごとに改正される
介護保険制度は、3年に一度見直しを行うように設定されています。改正の目的は、介護制度自体の在り方や人口構造の変化を考慮に加え、それらに対応しやすい制度に設計し直すことにあります。
これまでにも保険金額の調整や自己負担割合の引き上げなどが行われてきました。ただし、いずれの改正にしても、被保険者の自助努力が前提とされています。
まとめ
介護保険制度の改正により、被保険者(利用者)が今まで以上に介護や支援を受けやすい環境づくりが図られました。一方で介護費用の自己負担割合が変化し、被保険者の負担が増加する内容も見られます。自分でも改正内容を改めて確認し、必要な時に保障を受けられるようにしましょう。