「介護保険料はどのようにして決められているの?」と疑問に思ったことはありませんか?介護保険料は全国一律なのか、それとも居住地域によって差があるのか、詳しく知っている人は多くないかもしれません。今回は、介護保険料の計算方法や納付方法などについて、分かりやすく紹介します。
目次
介護保険制度についておさらい
介護保険制度は、加齢による体の変化に起因した疾病などのために介護を必要とする人を多方面から支えることを目的としています。対象者は満65歳以上の第1号被保険者と、満40〜65歳未満で公的医療保険に加入している第2号被保険者とに分けられており、国が強制的に保障を行う保険(強制加入の社会保険)として2000年にスタートしました。
介護サービスを受けるにあたり、第1号被保険者は介護や支援を必要とする原因を問いません。しかし、第2号被保険者は指定の特定疾病に該当する場合のみサービスが受けられる仕組みになっています。
国全体の介護事業にかかる費用のうち50%は被保険者の保険料を財源とし、残りの50%に関しては国が25%、都道府県と市町村がそれぞれ12.5%ずつ負担しています(特定施設入居者の生活介護にかかる施設等給付費の負担割合は国20%、都道府県17.5%、市町村12.5%)。
介護保険料の計算式【第1号被保険者】
市町村の区域内に住所がある満65歳以上の人は、介護保険の第1号被保険者です。国全体の年間介護費用のうち22%に相当する金額を第1号被保険者全員で負担するようになっており、個人が負担する保険料は市町村民税の課税状況(前年の所得)に応じて設定されています。
65歳以上の人が納付する介護保険料は、保険料基準額に介護保険料率を乗じて算出することができます。しかし、保険料基準額や介護保険料率は市区町村や特別区ごとに異なるため、正確な計算式を求めるには担当窓口への問い合わせが必要です。
参考として、東京・沖縄・北海道のそれぞれの保険料(平成27〜29年度分)を見てみましょう。
・東京都世田谷区の場合 : 保険料を決める段階は16段階。前年の合計所得金額が120万円以上190万円未満である場合の年間保険料は年額87,750円。
・沖縄県那覇市の場合 : 保険料を決める段階は11段階。前年の合計所得金額が125万円以上200万円未満である場合の年間保険料は年額92,244円。
・北海道札幌市の場合 : 保険料を決める段階は10段階。前年の合計所得金額が125万円以上200万円未満である場合の年間保険料は年額77,654円。
※合計所得金額…年金などの収入から必要経費に相当する額(所得控除)を差し引いたもの
また、介護保険の事業計画は3年毎に見直しが行われるため、それにともなって保険料も見直されます。厚生労働省により、2015年時点には5,514円であった介護保険料の全国平均月額が2025年には8,165円程度になるだろうと見込まれています。
介護保険料の計算式【第2号被保険者】
40〜64歳で公的医療保険に加入している人は、介護保険の第2号被保険者です。国全体の年間介護費用のうち28%相当が第2号被保険者の保険料にあたり、その金額を第2号被保険者の数で割ると一人当たりの介護保険料が算出されます。
国民健康保険に加入している場合
加入している公的医療保険が国民健康保険である場合、介護保険料は前年の所得に応じて計算されます。保険料は「所得割 + 均等割 + 平等割 + 資産割 = 介護保険料」という式によって求めることができますが、算出方法は市区町村ごとに異なるため、正確な保険料を知りたい場合には市区町村窓口で確認しましょう。
計算式に使用している項目の大まかな計算方法は次のようになっています。
所得割 : 被保険者(または世帯)の前年所得に応じて算出。
均等割 : 被保険者ごと、平等割は世帯ごとに算出。
資産割 : 土地や家屋などの保有資産に応じて算出。
国民健康保険以外の公的医療保険に加入している場合
勤務先で全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)や組合管掌健康保険、共済保険などに加入している第2号被保険者は、給与や賞与に介護保険料率を乗じて保険料を算出します。介護保険料の計算式は以下のとおりです。
(標準報酬月額 + 標準賞与額)× 保険料率 = 介護保険料
「標準報酬月額」とは通常4〜6月に支払われた給与の平均であり、「標準賞与額」は3カ月を超える期間ごとに受け取る賞与から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です(上限150万円)。保険料率は加入している健康保険の種類によって異なります。
介護保険料の支払い方法
第1号被保険者のうち、年額18万円(月額1万5,000円)以上の年金を継続して受給している人は、年金から介護保険料が徴収(天引き)されます。対象となる年金の種類は老齢年金・遺族年金・障害年金です。年金から天引きされない人は、納付書や口座振替で保険料を納付します。
国民健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料は、口座振替や納付書で納付します。国民健康保険以外の健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料は、健康保険料に上乗せした形で給与から天引きされます。
健康保険に加入している被保険者の扶養者(配偶者など)の保険料は、第2号被保険者の保険料で賄われるため、個別に納付する必要はありません。
介護保険料を滞納したらどうなる?
何らかの理由で介護保険料を滞納してしまった場合には延滞金が加算され、滞納処分を課せられることがあります。また、保険料の滞納期間によっては保険給付の制限を受ける場合もあります。
例えば、保険料を1年以上滞納した場合、サービスを利用した際に支払う利用料は全額自己負担(後日の申請で利用料の8〜9割が還付)となります。1年6カ月以上の滞納では、利用料を全額自己負担した後に申請を行えば、自己負担額(利用料)から延滞分の保険料と利用料の1〜2割を差し引いた額が還付されます。
もし保険料を2年以上滞納してしまった場合は、一定期間が経過するまで、通常1〜2割負担の利用料を3割負担に引き上げられます。なお、滞納した保険料をさかのぼって納められる期間は過去2年分までと定められています。
いざ介護が必要になった時に、過去の未納が原因でサービスを受けづらい状況になってしまうことも考えられます。事情により保険料の納付が困難になってしまった時などにはそのままにせず、市区町村の担当窓口に相談しましょう。
まとめ
介護保険料は、住んでいる地域や職業、それぞれの年齢や経済状況に合わせた基準によって、なるべく均等な配分で負担するように考えられています。保険料や制度自体に対する知識を今のうちから深めておき、今後の介護保険制度の動向に注目しましょう。