国民健康保険制度の運営費用を賄う財源の1つに国民健康保険税がありますが、国民健康保険料とは制度上異なる部分があります。今回は2つの違いをはじめ、年末調整の方法や滞納した場合の手続きなどを解説します。
目次
国民健康保険税とは
医療に関わる費用を支える制度
自営業者や個人事業主は国民健康保険制度に加入することが義務付けられています。この制度に加入していると、医療機関で病気や怪我の治療を受ける際の自己負担分が3割になります。
国民健康保険税や国民健康保険料は、残りの7割分を国民に変わって国が負担するための財源を賄うものです。各市町村は、徴収方法を税方式と両方式から選択できます。
国民健康保険料との違い
国民健康保険税と国民健康保険料は、「国民からお金を徴収する」という点では同じですが、制度を運営する上で違いがあります。まず、適用される法令が異なります。保険料には国税徴収法、保険税には地方税法がそれぞれ適用されます。
次に時効の長さです。国民健康保険料の場合は2年、国民健康保険税の場合は5年で徴収権の時効が消滅します。また、国民健康保険料の請求可能期間は2年・国民健康保険税は3年となっており、時効と同様に国民健康保険税の方が長い期間に設定されています。
市町村によって計算方法は異なる
国民健康保険税や保険料は、所得金額から基礎控除分の33万円を差し引いた基準額を元に、所得割や均等割、資産割、平等割を算出した合計によって求められます。
所得割額に使用する割合・均等割額の加入者1人当たりの金額などは市町村ごとに異なります。計算式としては、次のように表記されます。
(基準額)×(所得割の割合)+(世帯人数)×(1人当たり均等割額)+(世帯数)×(1世帯当たり平等割額)+資産割額
この計算式を医療分、介護分、支援分にそれぞれ適用させ、その総計を算出し国民保険料の金額とします。
ここで45歳の夫婦と子供の3人家族の世帯を想定したときの小樽市と札幌市のケースをそれぞれ算出します。いずれについても夫の給与収入は500万円・妻は専業主婦とし、副収入等や固定資産税は考慮しないこととして計算すると、小樽市の場合には年間の総保険料額が680,750円、札幌市の場合は年間597,003円となります。
保険税が高い場合の対処法
確定申告で控除を受ける
国民健康保険税の税額は、所得に比例して大きくなります。そのため、確定申告の際に可能な限り多くの所得控除を受ければ、それだけ課税される所得金額が小さくなり、保険税で徴収される金額も少なくなります。確定申告の際には、自分以外の家族の生命保険・国民健康保険の保険料についても計上し、課税部分を小さくすることが可能です。
保険料の上限を利用する
国民健康保険料には、1世帯あたりの上限が設定されています。そのため、2世帯や3世帯がそれぞれに保険料を支払っている場合には、それらの世帯を統合して「1世帯」という扱いにし、保険料の支払いをまとめることが可能です。世帯統合後の保険料の支払額が、統合前の各世帯の保険料の合計を下回れば、保険料の軽減ができたということになります。
保険料の軽減・減免措置
国民健康保険料の支払いが難しい場合、所定の条件を満たすことによって保険料の軽減や減免の措置が施されることがあります。まず軽減措置は、33万円を基準とした世帯所得に応じて変化します。
7割軽減:世帯所得が33万円以下の世帯
5割軽減:世帯所得が33万円+(世帯主以外の国民健康保険被保険者数)×24万5千円
2割軽減:世帯所得が33万円+(国民健康保険被保険者数)×35万円
次に減免制度は、以下の3つの条件のいずれかに該当する場合に適用されます。
1.天災などの影響から保険料の支払いが難しい
2.失業して所得を失った
3.健康保険などの国民健康保険以外で保険料を支払っていた人が、後期高齢者医療制度に加入したことで、65歳以上の人が新たに国民健康保険に加入した
国民健康保険の控除について
国民健康保険税は年末調整で控除可能
国民健康保険税は、年末調整を行うことで控除されます。これは自営業者や個人事業主だけでなく、会社員や公務員の人も対象です。会社などで健康保険に加入している人は、会社が一括で保険料の支払いと年末調整を行うため、自分の分の手続きは不要です。一方、妻や子供などの被扶養者の保険料や過去の未納分を納付している場合には年末調整の適用対象です。
確定申告でも控除可能
前述の通り、確定申告を利用して控除を受けることもできます。例えば、年末調整で国民健康保険料を計上できなかった人・転職などによって年末調整までに健康保険の手続きが間に合わなかった人などについては、確定申告のタイミングで控除を申請することが可能です。
もし滞納してしまったら?
滞納すると起きるリスク
国民健康保険税を滞納すると、各市町村から保険料納付を促す督促状が送付されます。これを無視し続けると、段階的に被保険者としての権利が失われていきます。
まずは有効期限が短縮された短期保険証が交付され、通常の健康保険証を使用することができなくなります。さらに滞納が続くと、資格証明書が交付されます。その時点で短期保険証の使用も不可能となります。
資格証明書を提示して医療機関を受診する場合には、一時的に医療費を全額自己負担し、後に各市町村へ申請して差額分を受け取るという手順を踏むことになります。その後も保険税の滞納を続けると、最終的には財産の差し押さえをされる可能性もあります。
すぐに窓口へ相談しよう
国民健康保険税を払うことが難しい場合には、各市町村の窓口へ速やかに相談しましょう。置かれている状況次第では、軽減や未納分の分割支払いなどが認められる可能性があります。相談に行く際には、所得や支出といった自分の経済状況などを正直に伝え、保険税を支払う意思があると示すことが大切です。
注意!時効はないと考えよう
国民健康保険税では、時効期間は5年に設定されています。ただし、この時効は「督促状の送付がないまま5年が経過した場合」を意味しています。督促状は原則として、保険税の納付期限を過ぎた翌月の20日前後に送付されます。
送付された時点で時効が無効化されている可能性は高いと考えてください。支払えない場合には窓口へ相談に向かいましょう。
まとめ
国民健康保険税は、自分の世帯構成や所得を用いて算出することが可能です。年末調整や確定申告によって所得控除が受けられるため、活用して負担を軽減しましょう。また、支払いが難しそうな場合には担当窓口などへ早めに相談することを心がけてください。