年金は老後の生活を支える大切なものですが、仕組みがわかりにくいと感じている人も多いのではないでしょうか。国民基礎年金の保険料納付済期間が25年から10年に引き下げられたことにより、多くの人が受給資格を得られるようになりました。今回は、今までなら受給資格がなかった人も受給できるようになった「10年年金」について解説します。
目次
厚生年金とは
会社員や公務員が加入する年金
国民年金、共済年金、厚生年金などをまとめて公的年金保険と呼んでおり、厚生年金は会社員や公務員が加入するものです。ただし、厚生年金でも会社員と公務員や私学教員とでは厚生年金の種類が異なっており、会社員の場合は厚生年金、公務員や私学教員は共済年金に加入します。
自営業者などが国民年金の保険料を全額負担するのに対し、厚生年金は会社などの事業主と被保険者が保険料をそれぞれ半額ずつ負担します。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に年金を受け取れるため、2階建てと呼ばれることがあります。1階の部分は国民年金であり、20歳から60歳未満の人は、国民全員が加入することになっています。2階の部分が厚生年金となり、国民年金に上乗せされます。
厚生年金に加入している場合は、1階と2階を合わせて老齢厚生年金と呼びます。
厚生年金の受給資格期間とは
3つの期間を合わせたもの
老齢厚生年金を受け取るために必要な期間のことを、受給資格期間と言います。受給資格期間を満たさなければ、たとえ保険料を払っていても年金を受給できません。しかし、経済状況によっては保険料を支払えない場合もあるかもしれません。
保険料を納めているのにも関わらず年金を受け取れない事態を防ぐため、保険料が支払えなかった期間も含めた以下の3つの期間で受給資格期間は算出されます。
保険料納付済期間
保険料を納めた期間です。厚生年金や共済年金の場合は、給与から差し引かれるので勤務先が厚生年金に加入していれば、毎月納付していると考えても良いでしょう。国民年金の場合は、納付書によって自分で支払わなければなりません。口座振替を利用すれば、定期的に保険料が納められるため納付漏れを防げます。
保険料免除期間
災害や失業などによって国民年金保険料が支払うことが困難な場合、申請することで保険料の納付が免除されます。免除期間があると、年金の受取額も少なくなります。納付期限から2年を経過していければ、遡って保険料免除を受けることが可能です。
合算対象期間
国民年金に加入していない期間がある、あるいは保険料を納められなかった期間がある人でも国民年金が受給できるように作られた考え方です。年金を一定期間納めていれば、納めていない期間も合算して受給資格期間に組み入れることができます。いつからいつまでが合算対象期間に該当するかは、年齢や未納になっていた時期によって異なります。
厚生年金の受給資格は?
老齢基礎年金は受給資格期間10年以上
老齢基礎年金と老齢厚生年金とでは、受給資格である保険料納付済期間が異なります。平成29年7月31日までは、原則として老齢基礎年金は保険料納付済期間が25年以上必要であることが定められていました。しかし、平成29年8月1日からは受給資格が10年以上に引き下げられたため、保険料納付済期間が10年以上であれば老齢年金を受け取ることが可能となりました。
老齢厚生年金は加入期間1カ月以上
老齢厚生年金は老齢基礎年金に比べて受給資格である保険料納付済期間が短く、1か月以上保険料を納めていれば老齢厚生年金の受け取りが可能です。例えば、1か月だけ厚生年金に加入したとしても、老齢基礎年金に加えて65歳から老齢厚生年金を受給することができます。ただし、加入期間によって受給額は異なります。
特別支給の老齢厚生年金とは?
支給開始年齢の引き上げによる措置
年金は、国の情勢によって支給年齢などが引き上げられることがあります。老齢基礎年金も昭和60年の法律改正によって受給できる年齢が60歳から65歳に引き上げられました。年齢の引き上げに伴い、段階的に老齢厚生年金を受給できるようになりました。この段階的な措置というものが、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)と老齢厚生年金(定額部分)です。
受給資格には生年月日の制限がある
生年月日によって老齢厚生年金の報酬比例部分と定額部分の受給年齢は決められています。例えば男性の場合、生年月日が昭和16年4月2日から昭和24年4月1日までの人は、60歳から特別支給の報酬比例による老齢厚生年金の受け取りが可能です。定額部分は、生年月日によって61歳から64歳まで段階的に引き上げられていきます。
まとめ
10年以上の保険料納付済期間があれば、老齢年金を受給可能になったため、今まで年金を受給できなかった人でも受給できる可能性が高くなりました。しかし、受給期間が短ければ、その分受給できる年金額も減額されます。「10年年金」と呼ばれる制度ですが、できれば長い納付済期間で、老後の生活資金を確保できるように努めると良いでしょう。