老齢年金は生存している場合だけでなく、被保険者が死亡した場合にも遺族年金として支給されます。遺族厚生年金も、すでに厚生年金を受給している人が死亡した場合や厚生年金の保険料を払い込んでいる途中でも受給可能です。遺族厚生年金はいくらもらえるのか、計算法や受給資格を解説します。
目次
遺族厚生年金の計算方法
厚生年金の支給額を計算
遺族厚生年金の具体的な計算方法は、被保険者期間を分けて算出します。平成29年度現在、計算式は本来水準と従前額保障の2種類で、上回る方の額が支給されます。
・本来水準
1.平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
2.平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
上記の1と2を足し、3/4を掛けたものが本来水準です。
・従前額保障
1.平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
2. 平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
上記の1と2を足し、3/4を掛けたものが従前額保障です。ただし、昭和13年4月2日以降に生まれた人はさらに0.998を掛けます。
遺族厚生年金の受給金額の目安
遺族厚生年金は被保険者の収入によって受給額が変わります。遺族厚生年金の受給額の概算では、月額が20万円の人なら年額32,4911円(月額2,7076円)になります。平均標準月額が30万円の場合は年額487,366円(月額40,614円)です。
遺族厚生年金の受給額は遺族基礎年金のように家族構成は考慮されず、平均標準月額によって支給額が決められます。
受給資格がある遺族と受給条件
夫は妻死亡時の年齢制限あり
遺族厚生年金の受給条件には「死亡した人によって生計を維持されていた」ことが必要で、対象者の中で順位が一番高い人が受給できます。夫が妻の遺族厚生年金を受け取るときには年齢制限があります。
妻の死亡時に55歳未満であれば受給権がありません。55歳以上であっても原則は60歳を超えてからの支給になります。夫が受け取れない場合は、次に順位が高い人が受給権者になります。
妻は夫死亡時の年齢制限なし
妻は年齢制限なしで遺族厚生年金を受給できます。「子のある妻」なら遺族厚生年金の受給順位が「第一順位」の対象者の中でも優先して支給されます。
夫の死亡時に妻が30歳以上、あるいは子供がいる場合は、遺族厚生年金を一生涯受給可能です。30歳未満で子供のいない妻でも受給は可能ですが、5年間の有期給付になります。子がある妻の場合でも、30歳になる前に遺族基礎年金の受給権が消滅すると受給期間は5年になります。
故人の子供
厚生年金の被保険者に配偶者がいない場合は、18歳の年度末を経過していない子供、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の子供が遺族厚生年金の支給対象者です。子供は配偶者と並んで遺族厚生年金の受給順位が「第一順位」のグループですが、配偶者が受給する場合には子供には遺族厚生年金の受給権がありません。
故人の父母・祖父母・孫
厚生年金の被保険者が死亡時に、配偶者も子供もいない場合は、故人の父母・祖父母・孫が遺族厚生年金を受給できます。配偶者・子供より下位の受給順位は以下の通りです。
第二順位 父母 (被保険者が死亡した時点で55歳以上)
第三順位 孫 (被保険者が死亡したときで18歳の年度末以前、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級)
第四順位 祖父母(被保険者が死亡した時点で55歳以上)
受給者が死亡などで受給権が無くなっても、下位順位者には支給されません。
遺族厚生年金はいつまでもらえる?
遺族厚生年金の受給期間
夫の死亡時に妻が30歳以上、または子供がいる妻が遺族厚生年金を受け取る場合、一生涯受給できます。30歳になる前に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合、受給期間は消滅後5年です。
夫の死亡時に子供が無く30歳未満の妻は5年間受給可能です。子供と孫は18歳の年度末まで受け取れます。ちなみに、障害等級1級・2級に該当する子と孫は20歳まで受け取れます。
遺族共済年金はいくらもらえるか
遺族共済年金の受給額
平成27年10月に、厚生年金と共済年金に分かれていた「被用者年金制度」が厚生年金に統一されました。平成27年9月30日までに地方公務員共済組合員期間がある人は、職域部分の年金が支給されます。ただし、年金は加入期間に応じた金額になります。
遺族共済年金の受給額の目安は、平均標準報酬月額が20万円なら295,965円(月額24,664円)で、30万円なら443,948円(月額36,996円)です。
遺族厚生年金についての補足情報
遺族厚生年金は非課税
厚生年金保険法41条2項に「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。」とあるように、遺族厚生年金は基本的に非課税です。一時所得などで確定申告をする必要もありません。
遺族厚生年金の注意点
遺族厚生年金は、受給期間は残っていても受給権が無くなる場合があります。受給権が無くなる例は以下の通りです。
・受給者が死亡した場合
・故人の祖父母、または配偶者の父母、祖父母以外の人の養子になった場合
・受給者が婚姻した場合
・受給者が離縁して故人との親族関係が無くなった時
まとめ
遺族厚生年金は、受給年齢やだれが受け取るかで大きく差が出ることがあります。また、老齢基礎年金とプラスして払われる場合と、遺族厚生年金しか支払われない場合もあります。自分の受給条件がよくわからない場合は、「年金事務所」や「年金相談センター」で確認すると良いでしょう。