相続が発生した場合、相続財産すべてに相続税が課税されるわけではありません。法定相続人の人数によって基礎控除を適用することで、相続税の軽減が可能となります。この記事では、相続税の基礎控除の計算方法などについて説明します。
目次
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除とは、亡くなった人の財産の総額に対して、一定の金額までは非課税とするものです。基礎控除額を求めるには、まず法定相続人が何人いるかが問題となってきます。亡くなった人に配偶者がいた場合妻は法定相続人になり、配偶者以外の法定相続人が何人いるかによって相続税における基礎控除額が変わります。
相続財産に税金が掛けられない範囲
基礎控除額の範囲で収まる範囲であれば、非課税です。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と決められています。
例えば、配偶者と子供が2人いる場合、3,000万円+600×3人で、合計で4,800万円が基礎控除となるので、4,800万円を超える相続財産でなければ非課税です。また、子供がいない場合は、配偶者と親もしくは祖父母が法定相続人となり基礎控除額が決まります。
相続税の基礎控除は2015年に改正
2014年12月31日までは、相続税の基礎控除は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で計算されていました。しかし、2015年1月1日以降は基礎控除額が減額となり、現在の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」です。」
改正に伴い、相続税の税率も変更になりました。相続税として課税される金額に対する税率は6つに分類されていましたが、改正後は8つの分類に分けた税率です。
相続税の基礎控除の計算方法
相続の対象となるものは、現金や株式、不動産、生命保険などです。相続する総額から借入金や葬儀費用を差し引いた金額が、相続税の対象となる遺産相続額になります。基礎控除は、遺産相続の総額から差し引かれることになります。
相続税の基礎控除額の計算の基本
基礎控除を受ける場合、配偶者に相続する権利が発生します。次に法定相続人とされるのは1位が子供、2位が親や祖父母、3位が兄弟姉妹です。
例えば、子供が法定相続人になった場合には、配偶者と子供だけに相続権が発生します。そして、2位や3位となる親や祖父母、兄弟姉妹には相続権が発生しません。
養子がいる場合
実の子供が存在する場合と存在しない場合とで、養子が何人法定相続人になれるかが決まります。実の子供がいる場合は、養子は2人まで相続権を持つことができ、実の子供がいない場合は1人しか相続権を持つことができません。ただし、特別養子縁組や、配偶者の実の子供で養子となっている場合などについては、人数に関係なく法定相続人としてみなされます。
相続放棄した人がいる場合
配偶者と子供が2人いる場合に子供の1人が相続放棄したとすると、放棄した子供が受け取る予定だった相続額が配偶者と相続をする子供に分けられます。相続税の計算上、放棄がなかったこととして計算されますが、基礎控除における法定相続人の数は減ります。1人あたりの相続税が高くなる可能性があるので、相続放棄する人がいる場合には注意が必要です。
相続税の評価方法とは?
相続する対象が何かによって相続の評価が変わります。
現金
現金に対する評価は、相続開始日現在の残高、つまり亡くなった日の現金残高が相続税の対象となります。ここで注意しなければならないのが、死亡する3年以内に現金による贈与を受けている場合も、その贈与額に対して相続税が課せられるということです。もし3年以内に贈与を受けていたのであれば、相続税の申告が必要となります。
有価証券
上場株式の相続税評価は、死亡したその日に金融商品取引所が公表している最終価格が有価証券の評価価格です。公社債の相続税評価は、銘柄ごとに券面額100円あたりで評価されます。
イメージとしては、公社債を解約して現金化した場合に発生する金額が相続税の評価額の目安となります。投資信託の場合は、解約や買取請求を行い、証券会社から支払われる金額が評価額です。
不動産
不動産を相続する場合、土地と家屋それぞれに評価価格が計算されます。土地は原則として、宅地・田畑など地目ごとの評価です。
路線価が決められている地域は路線価方式、路線価が決められていない地域は倍率方式で評価します。家屋に対しては、固定資産税評価額に1.0倍して評価することになるので、家屋の評価額は固定資産税評価額と同額ということになります。
生命保険や退職金
生命保険の場合は、相続税の基礎控除に加えて、500万円×法定相続人の数という特別な非課税枠があります。死亡退職金の場合は死亡から3年以内に受け取ると、生命保険と同様に500万円×法定相続人の非課税枠を適用することができます。
相続税の申告の必要性は?
相続税の課税金額が、基礎控除額以内かどうかで、相続税の申告の必要性が変わります。しかし、基礎控除内だからといって、必ずしも申告をしなくて良いわけではありません。1億6,000万円か法定相続分のいずれか高い金額までは相続税がかからない、配偶者の税額軽減の特例を受けるには申告が必要となります。
相続財産が基礎除額を下回るケース
相続をした場合、相続税に関して税務署に届け出る必要があります。しかし、相続財産の課税価格の計算をした結果、基礎控除以内(3,000万円+600万円×法定相続人の数)であれば、基本的には申告は不要です。課税価格とは、相続財産にプラスされる死亡保険金などから葬儀費用などを計算して算出された金額のことです。
相続財産が基礎控除額を上回るケース
基礎控除額を超える財産を相続する場合には、控除額を超える金額に対して相続税が課税されます。そのため、相続税の申告を税務署へ届け出しなければなりません。死亡した人から過去3年以内に現金などの贈与を受けた人が相続人となっている場合は、その時の財産贈与も相続税の対象となるので、相続財産の計算には注意が必要です。
まとめ
相続財産は、現金に加えて不動産などの評価額も相続の対象に含まれます。しかし、基礎控除や死亡保険金や死亡退職金の場合には、基礎控除に加えて特別控除を受けることが可能です。いざという時に慌てないよう、相続の控除について調べてみてはいかがでしょうか。