退職金共済は、労働者の老後を保障するための共済の1つですが、その中にはいくつかの種類があります。今回はそれぞれの共済の内容や加入の方法、加入した際のメリットやデメリットを中心に紹介します。
目次
退職金共済と退職金制度の違いとは?
退職金共済とは
退職金共済とは、会社組織や法人組織が共済金を積み立てることで従業員の退職金を給付する仕組みです。制度を運営する際には、自社内部で積み立てを行うのではなく、社外の組織等に依頼します。そのため、「積立額が社内事業に回されて退職金の金額が減少してしまった」などのリスクは発生しにくくなると言えます。
退職金制度とは
退職金制度は退職金共済とは異なり、年金の原資を社内に積み立てます。そのため、組織の事業の状況によって退職金の金額が変化する可能性があります。事業が好調の場合は退職金が増額されるケースがその一例です。
なお、どちらかの制度の一方だけでなく、組織によっては退職金共済と退職金制度の両方を取り入れている場合もあります。
退職金共済の種類や内容は?
中退共(中小企業退職金共済)
中小企業退職金共済(以下、中退共)は、規模が中小企業以下の企業に適用される退職金共済制度で、「勤労者退職金共済機構」という独立行政法人によって運営されています。加入者に該当するのは「企業」であり、共済掛金は各企業が中退共に対して積み立てを行っています。積立金を社内で管理するコストが掛からないため、中小企業でも安定的に制度を運営しやすい点が特徴です。
社会福祉法人の退職金共済
退職金共済制度の中には、社会福祉法人を対象としたものもあります。社会福祉法人に適用される退職金共済制度は、社会福祉法人事業に携わる人に対する福利厚生の一環として導入されています。制度の仕組みとして「従業員と法人によって支払われる掛金を原資として、受給権者に退職金を支払う」という形が取られています。
特定退職金共済
特定退職金共済制度は、各地の商工会議所によって運営される制度であり、その内容は商工会議所ごとに若干の差があります。企業や個人が加入対象となりますが、掛金として支払ったお金は経費や損金に算入するため、非課税とすることが可能です。また、掛金は過去10年分まで遡って納付できるため、これまで納付実績が少なかった人でも退職金を確保することができます。
中退共に加入するには?
上記のように、退職金共済にはいろいろな種類があります。ここから後は、中でも規模の大きい中退共を例にとって説明します。
加入手続きは企業側が行う
中小企業退職金共済制度に加入する場合、その手続きは従業員ではなく企業が行います。実際の手続き手順は次の通りです。
1. 制度に加入させる従業員の合意を獲得する
2. 月額掛金を定める
3. 退職金共済契約申込書、預金口座振替依頼書の2枚の書類に記入、押印する
4. 中小企業の事業者であることを示す各種証明書を確認する
5. 金融機関に用意した書類を提出する
個人企業が加入できるケースもある
事業規模の小さな企業の個人事業主などが加入できる共済制度もあり、これを「小規模企業共済制度」と言います。この制度は、中退共とは異なる「中小企業基盤整備機構」という独立行政法人によって運営されており、個人事業主の他、小規模の会社組織等の役員などが対象となっています。
掛金に関するメリット・デメリット
個人ごとに金額を決められるメリット
中退共では、掛金を支払う上でいくつかのメリットがあります。1つ目は月額掛金を個人ごとに決定できる点です。掛金の金額は5,000円~30,000円(短時間労働者の場合は2,000円~4,000円)の範囲内と定められており、自分の収入や家計とのバランスを考慮した上で、任意の金額に設定することができます。
消費税が非課税となるメリット
従業員は個人ごとに決めた金額を掛金として支払いますが、運営団体に納付する際には事業主がまとめて納付します。その際、掛金は全額損金に参入することが可能とされています。
損金算入とは、税務上の経費として扱われるものであり、消費税が課されることはありません。そのため、事業主にとっては節税というメリットが発生することになります。
減額・天引きができないデメリット
共済掛金の金額を決定した後、増額することは可能でも、減額することは不可能と決められています。従業員から「やはりもっと少ない金額にしたい」と申し出があったとしても、掛金を減らすことは原則としてできません。
また、掛金は厚生年金保険料などのように給与から天引きすることができないため、全員からの確実に徴収することが難しいという面があります。
退職金はいくらか計算できる?
自分で計算する
退職金を計算する方法の1つ目は、自分で計算することです。中退共事業本部が公開する基本退職金額表をもとにして計算を行うと、月額の掛金と納付した月数によって、受け取れる退職金の総額を算出することができます。例えば、毎月2,000円を47年間納め続ければ1,439,920円の退職金が受給できる計算になります。
試算結果を郵送してもらう
退職金の試算を中退共事業部に依頼することも可能です。中退共のホームページから退職金試算依頼書をダウンロードし、必要事項を記入・押印して企業の担当窓口へ申し出ます。試算結果が算出され次第、企業宛に結果が送付されます。
退職金はいつもらえるのか
退職金は、退職後に所定の手続きを踏むことで受給できます。まず、事業主から退職金共済手帳を受け取ります。次に、退職金共済手帳に含まれる退職金請求書を記入し、金融機関に提出して押印してもらいます。
その後、マイナンバーや身分が確認できる書類を添付し、中退共本部給付業務部へ送付してください。審査が通れば退職金が給付されます。
まとめ
退職金共済の種類や、中退共の特徴などについて紹介しました。メリット・デメリットや事業状況などを踏まえ、導入の可否を検討しましょう。