国民年金や厚生年金などの公的年金制度は、国内に住むすべての日本人に加入が義務付けられているものです。公的年金の受け取りは所得としてみなされますが、条件を満たせば控除を受けられることはご存じでしょうか。今回は公的年金の控除や確定申告の有無も合わせて詳しく解説します。
目次
公的年金の控除とは?
公的年金は「雑所得」の分類
公的年金制度に加入している人が65歳に差し掛かった際に受け取る年金は、税法上では雑所得に分類されます。雑所得には所得税が課税されますが、課税されるか否かは雑所得の金額によって異なります。つまり、年金を受給する際に必ず所得税が生じるというわけではないため、自分の受給額に適した税法上の処理が必要です。
公的年金控除が適用される
年金の受給には公的年金控除が適用されます。控除とは、所得額から一定の金額を差し引きできる制度のことです。公的年金控除の額は、対象となる受給者が65歳以上かどうかで決まります。
年金の控除額の計算方法とは
65歳を境に控除の上限の金額は違う
公的年金控除の上限金額は、65歳以上か未満で変化します。65歳以上の場合、課税の基準は158万円です。
65歳未満の場合は、公的年金控除は70万円まで適用されます。基礎控除の適用範囲と合わせて所得金額が108万円未満であれば、所得の全額が非課税となります。一方、108万円以上の場合は課税対象です。
公的年金の控除額の計算式
公的年金の控除額は、収入金額の合計と控除額、そして所得状況や年齢によって決まる割合から計算します。具体的な計算式は以下の通りです。
収入金額の合計 × 所定の割合 - 控除額
ここでの控除額は、年齢が65歳未満か65歳以上のどちらかで決まります。
65歳未満の年金の控除額
65歳未満の人で、収入金額が70万円未満の場合は公的年金控除が70万円まで適用されるため、非課税です。一方で、収入が70万円を上回る場合は70万円を上回った部分が課税対象となります。
この時の所定の割合と控除額は、70万1円から130万円未満の場合には100%と70万円、130万円から410万円未満の場合には75%と37万5,000円です。410万円以上770万円未満の場合には所定の割合は85%、控除額は78万5,000円、770万円以上の場合は95%と155万5,000円となります。
65歳以上の年金の控除額
65歳以上の人で、収入が120万円未満の場合は非課税で、120万円以上330万円未満の場合は所定の割合は100%で控除額は120万円となります。330万円以上410万円未満の場合は所定の割合と控除額はそれぞれ75%、37万5,000円です。410万円以上770万円未満の場合は85%で78万5,000円、770万円以上の場合は95%で155万5,000円となります。
年金に税金が掛かる場合は?
年金が一定額を超えると源泉徴収
年金によって受給する年金の金額が一定の金額を超えた場合は、所得税などが源泉徴収されます。源泉徴収の対象となる金額の基準は、年齢によって異なります。
65歳未満の人の場合は収入が108万円、65歳以上の人の場合は158万円を超える場合に源泉徴収されることになります。なお、ここでの年金とは公的年金だけではなく民間保険会社から支給される年金の金額も計上されるため、注意が必要です。
「公的年金等の受給者の扶養親族等の申告書」を提出
年金に税金がかかる場合は、所得控除額を決定するために「公的年金等の受給者の扶養親族等の申告書」の提出が必要です。申告書には、扶養者の基礎年金番号や年金コードなどの情報の他、寡婦もしくは寡夫の有無などを記入します。また、マイナンバーの記載も必要です。
ちなみに、「公的年金等の受給者の扶養親族等の申告書」は、課税対象者に日本年金機構から送付されます。送付された場合は、内容を確認して記入するようにしましょう。
公的年金の受給者は確定申告が必要?
年末調整はないので原則として必要
公的年金や生命保険会社による年金を受給している人の場合、所得税などの源泉徴収は行われますが、年末調整は行われないため自分で確定申告を行う必要があります。確定申告を行った結果、支払った税金が実際支払うべき額よりも多かった場合には還付されることもあります。ただし、確定申告を行う際には源泉徴収票の原本を添付しなくてはなりません。
確定申告不要制度
源泉徴収された場合は原則として確定申告が必要ですが、一定の条件を満たしている場合には確定申告は必要ありません。一定の条件とは、公的年金などによる年収の合計が400万円以下であり、さらに雑所得以外の所得金額が20万円以下の時です。
この制度は確定申告不要制度と呼ばれています。自分が条件に該当しているかどうかは年収から確認する必要があります。
まとめ
ここまで、公的年金の控除額の計算方法を収入などの観点からチェックしました。確定申告の必要性も受給している年金額によって変化します。1年間の収入の水準をチェックして、必要な手続きを確実に行い、公的年金控除を受けられるようにしましょう。