貯蓄とは一般的にはお金を貯めるという意味ですが、マクロ経済における貯蓄の意味をご存じでしょうか。また、貯蓄と似た言葉で貯金や備蓄などがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。今回は貯蓄について、マクロ経済や保険との関連も含めて解説します。
目次
「貯蓄」の意味や類語って?
漢字で書くと「貯める」「蓄える」
貯蓄は「貯める」と「蓄える」を合わせたもので、金銭や財貨を蓄えることに使われます。貯蓄は貯金と類語で使われることが多いです。また、国民所得上では消費されなかった所得のことを貯蓄と呼ぶ場合もあります。
貯蓄の類語には貯金以外にも、今後のためにお金を貯める「積立」や「備蓄」があり、予備として持っておくための「預金」や、今後のために維持する「貯蔵」なども類語です。
公民で習う「貯蓄」は家計単位
公民で習う「貯蓄」は、経済を動かす「経済主体」の中の家計単位から見たものです。家計とは、主に企業にお金を払って財やサービスを購入し、納税によって社会保障を受ける生活のことです。
家計の支出は食糧費、教育費、通信費などがありますが、将来への消費と考えられるものが「貯蓄」とされます。
マクロ経済学では「貯蓄=投資」
マクロ経済とは政府、企業、家計をまとめたもので、経済社会全体の動きを指します。マクロ経済では貯蓄は投資と同じものとして扱われます。その理由は、下記の投資に関する式が要因として挙げられます。
所得 = 消費 + 投資 = 消費 + 貯蓄
この式を用いると投資は貯蓄とイコールです。そのため、マクロ経済学では「貯蓄」は「投資」と考えられています。また、マクロ経済では「国内総生産」と「海外所得受取」を足したものから「税」「消費」「投資」を差し引いたものが「準貯蓄」です。
貯蓄と貯金の違い
貯蓄と貯金は類語で一般的には同じものとして考えられていますが、本来は違う意味があります。貯金とはお金を貯めることで、銀行や郵便局でお金を貯めたり財形貯蓄や定期預金で積み立てたりすることです。
貯蓄とは金融資産のことで、株式や投資信託、不動産の投資商品なども含まれます。保険や個人年金も貯蓄に該当しますが、貯金も金融資産で貯蓄に含まれ、貯蓄の一部が貯金になります。
年代別の貯蓄額や老後の必要金額は?
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」と総務省統計局家計調査(貯蓄・負債編)を基に、年代別の貯蓄額や老後の必要金額を見ていきましょう。
20代の平均貯蓄額
20代の平均貯蓄金額は321万円です。金融資産を保有している人は64.4%で3人の内2人は保有をしています。一方で、口座を所有していない人が9.7%もいます。
ちなみに、20代は貯金がゼロの人がいる一方で、500万、1000万を貯めている人もいます。20代は独身者と既婚者などに分かれることが多いため、平均貯蓄額に差が出やすいです。
30代の平均貯蓄額
30代の平均貯蓄額は470万円で20代を上回り、増加率も146.4%です。一方で年収が300万円未満の場合、半数以上に貯金がありません。
データを順番に並べたときに真ん中にくる数字である中央値は200万円で、20代を上回っています。中央値が高い原因は、20代より貯蓄できる期間が長いことが考えられます。また、30代は年収などにより貯蓄額に大きく差が出てくる年代でもあります。
40代の平均貯蓄額
40代での平均預貯金額は643万円で、20代、30代より多いです。40代の貯蓄額が増えている要因としては収入が増えることと貯蓄する期間が長くなることが挙げられます。
一方で、教育資金や住宅資金の負担が大きくなる世代のため、中央値は220万で30代と比べてそれほど増えていません。家族がいる世帯と独身世帯で貯金額に大きく差がつく世代です。
老後までに貯めておくべき金額
金融広報中央委員会が平成29年度に調査した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、老後までに貯めておくべき貯蓄の金額は2080万円です。老後の予想生活費は27万円で、厚生労働省が発表した年金受給額の22万とは5万円ほどの差があります。
将来的に物価が上昇し出費が増えることや病気による入院なども考えられるため、老後までにきちんと貯蓄しておく必要があると言えます。
銀行で貯蓄をしたい時のポイントは?
預金種目の種類を知っておく
銀行での預金には「普通預金」「貯蓄預金」「定期預金」などがあります。「普通預金」の特徴は出し入れが自由なところです。一方で金利が安いことも特徴の一つです。
「貯蓄預金」は普通預金より金利は高めで出し入れも自由ですが、給与振り込みや公共料金の引き落としに利用できません。「定期預金」は期間を指定して貯める預金です。普通預金や貯蓄預金と比べて金利が高い一方で、満期までは引き出せない特徴があります。
銀行口座を使い分ける
銀行で貯蓄をする際には、口座を使い分けると良いです。例えば、定期預金は普通預金よりも金利が高いですが、いつでも引き出せないためすべてのお金を定期預金にしてしまうとリスクが高いです。そのため長期に利用してなるべく多くの貯蓄をするための定期預金と、いつでも自由に引き出せる普通預金を使い分ければ、リスクと貯蓄のバランスが取れます。
また、生活費と別に貯蓄預金を利用すれば貯まっていく額も明確になり、計画的な積み立てができます。
保険で貯蓄をしたい時のポイントは?
貯蓄性や返戻率に着目する
貯蓄性や返戻率を考えて加入すれば、保険でも貯蓄をすることが可能です。貯蓄しながら保障も得られる貯蓄型保険には、「養老保険」や「終身保険」「学資保険」などがあります。商品によっては、満期まで継続すれば払い込んだ保険料よりも多く満期の返戻金を受け取ることができます。
保険で貯蓄するメリット・デメリット
保険で貯蓄する場合のメリットとして、保険会社の運用実績が良ければ満期保険金だけでなく配当金を受け取れることが挙げられます。また、死亡や重高度障害などが保障される保険であれば、万が一の際に保険金が支払われるのでメリットと言えます。
一方、途中で解約した場合は受取金額が払い込んだ保険料よりも少なくなるためデメリットと言えるでしょう。また、運用利率が固定になっている商品の場合は、将来好景気になり金利が上がっても利率が変わらないため、デメリットだと言えます。
まとめ
日々の生活を豊かにするためにも、貯蓄は必要なものです。銀行などで確実に貯めていくのか、保険のように長期の運用をして貯めていくのか、自分の生活設計に合わせて計画的に増やしていくと良いでしょう。