金利が下降傾向にある現代において、少しでも金利の高いところにお金を預けたいと考えるのは自然なことです。数ある保険の中でも、貯蓄性の高い商品の代表として個人年金保険が挙げられます。今回は、個人年金の利率や加入する際の注意点についてご紹介します。
目次
個人年金保険における利率とは
個人年金保険の利率
個人年金保険の利率の中で一番重要なのは「予定利率」です。保険会社は、保険加入者が支払う保険料を運用し、将来支払う年金(責任準備金)を確保します。保険料は、予定事業費率(運営に関わる経費などを予測して算出)と、予定死亡率(加入時の年齢や性別などから死亡・高度障害などの可能性を予測して算出)をもとに計算されます。
予定利率とは、保険料の運用によって得られる一定の収益を見込んで、あらかじめ保険料から割引された利率のことをいいます。予定利率が高いほど、安い保険料で将来高い年金を受け取れるということになります。
利率と返戻率の違い
利率が高い商品の場合、受け取れる保険金の返戻率も高くなります。しかし、利率と返礼率は似ているようで異なるものです。
利率とは、保険会社が見込んだ利益分を保険料から割引いたものであることはすでに説明しました。一方の返戻率は、「支払った保険料に比べてどれだけ多くの年金を受け取り、得をすることができるか」というものです。よって、払い込み期間が長ければ長いほど返戻率も高くなり、将来受け取れる金額も増えるということになります。
個人年金保険を利率で選ぶメリット
自分で将来の年金を作ることができる
個人年金保険は、老後の資金を自分で準備することができる商品です。利率が高いときに加入すれば実際に受け取る年金の金額も高くなるため、口座に貯金するよりもお金を増やすことができます。長期的にみると、資産形成の一つとして有効な商品です。さらに、源泉徴収の対象ともなるため、年末調整や確定申告の際に所得税や住民税からの控除を受けることができ、節税にもつながります。
気になる商品を絞り込める
現在、日本にはたくさんの生命保険会社があり、さまざまな個人年金保険の商品を扱っています。利率の高さに注目することも大切ですが、利率以外の特徴についても比較しながら加入する保険を検討するのも良い方法です。評判のいい商品のランキングをインターネットで調べるなどして、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
個人年金保険を利率で選ぶデメリット・注意点
外貨建て商品には為替リスクがある
外資系の保険会社では外貨建ての個人年金保険も扱っており、通常の個人年金よりも利回りが高いことが特徴です。保険会社や運用する外貨の種類によって予定利率に違いはありますが、利率は日本よりも高くなります。
利回りが良いということは預けたお金をより増やすことができるということですが、デメリットもあります。利率は加入する時期によって常に変動するものですが、外貨建て個人年金では「固定利率型」の商品が一般的です。契約時に決まっている利率はその後も変動しないため、受け取る金額も一定となります。
また、受け取り時にも注意が必要です。外貨で受け取る場合はいいのですが、日本円に両替して受け取りたい場合にはその時点での為替相場が大きく影響します。円安になっていれば受け取り金額が増え、円高になっていれば減ることになります。タイミング次第で損をする可能性があることを覚えておきましょう。
インフレリスクには対応できない
インフレとは、物価の上昇に反してお金の価値が下がることをいいます。インフレのリスクは個人年金保険のみならず、他の積み立て型の商品にも伴います。個人年金保険の場合、加入時の予定利率で運用されるため、受け取る年金額は一定です。景気によって受け取る金額が増減しないため、一見あまり影響がないように思えます。しかし、年金を受け取るタイミングでインフレが起きた場合、積み立てていたお金の価値は下がってしまいます。
銀行の定期預金などにも同様のリスクはありますが、定期預金の場合は途中で解約してもその時点までに貯まっているお金は戻って来るため、個人年金保険に比べるとインフレの影響を受けにくいとも言えます。インフレリスクを避けたい場合、外貨建ての保険を検討するというのも一つの方法です。
途中で解約してしまうと元本割れしてしまう可能性がある
定期預金と違い、個人年金保険を途中解約すると払った保険料よりも返戻金が少なくなるケースが多数です(加入してからの年数にもよります)。払い込み期間の満了以降であれば、解約しても解約返戻金が元本割れすることはありません。
また、受け取る期間を長く設定するほど多くの金額を受け取ることができるため、年金として受け取る方が得をします。短期でまとまった資金を増やしたい場合にはあまり向かない保険と言えるでしょう。
保険会社が破綻するリスクもある
どの保険にも言えることですが、保険会社が破綻するリスクも少なからずあります。実際1997年~2001年にかけて、生命保険会社の経営破綻が相次ぎました。万が一生命保険会社が破綻した場合、他の救済保険会社もしくは生命保険契約者保護機構が設立する承継保険会社が契約を引き継ぐ救済措置がとられ、契約は継続されます。
しかし、契約の引き継ぎにはいくつかの条件があり、責任準備金(保険会社があらかじめ準備する保険金)が減らされてしまったり、予定利率などの契約条件が変更になって本来受け取れるはずの保険金が減らされてしまったりする可能性もあります。貯蓄性が高い分、破綻の際に受ける影響も大きくなります。保険会社を選ぶ際には、保険会社の経営状態などのデータをよく確認してから加入するのがおすすめです。
まとめ
個人年金保険の利率や注意点についてポイントをまとめました。メリットやデメリット、自分に合った貯蓄方法なのかどうかなどをよく考えて加入されることをおすすめします。保険商品について迷いが生じた場合には、家計の収支やライフプランなども含めてFP(ファイナンシャルプランナー)などのプロフェッショナルへ相談するのも良い方法です。