個人年金保険の契約方法や受け取り方で、年金にかかる税金が変わることをご存じですか?今回は、年金の受け取りに関する税金の話を分かりやすくまとめました。せっかく形成した資産を無駄にしないように、対策の確認をしておきましょう!
目次
契約者や受取人による税金の違い
個人年金保険の契約者や受取人に誰を指定するかによって、年金受取時にかかる税金が異なります。税金の種類によって実質の年金額も変わりますので気をつけましょう。
「契約者・保険料負担者=受取人」は所得税
契約者(保険料負担者)が年金の受取人と同一人物の場合は「雑所得」となり、所得税と住民税の課税対象になります。年金種類や年金額、払込保険料の総額に応じた金額(必要経費)を年金額から差し引いた残額が課税対象で、残額が25万円以上の場合、残額に所定の税率を乗じた金額が源泉徴収される仕組みになっています。
「契約者・保険料負担者≠受取人」は贈与税
契約者(保険料負担者)と年金の受取人が異なる場合は、贈与税の対象になります。贈与税を計算するには、まず「年金受給権の評価額」を算出する必要があります。「評価額」は大きく分けると次の3つで、一番大きい金額が課税対象となります。
1.契約返戻金の金額(解約した場合などに支払われる金額)
2.一時金相当額(一時金の給付可能な場合)
3.年金年額×残存期間や平均余命に応じ、所定の利率を用いて計算
贈与税には110万円の非課税枠が設定してあり、110万円とは別の控除額も設けられています。贈与税を求める計算式は以下の通りです。
(年金額-110万円)×税率-控除額=贈与税
年金を毎年受け取る場合は、初年度の年金額に対し、贈与税が課せられます(初年度のみ所得税は非課税)。2年目以降の年金は所得税の課税対象になり、課税部分が段階的に増加する方法で計算します。保険料負担者と年金受取人が異なる場合は、所得税の源泉徴収は行われませんので、申告をする必要があります。
年金受取人や被保険者が死亡した場合にかかる税金は?
被保険者(保険の対象になっている人)が死亡した場合は、年金受取開始前か開始後かによって課税関係が変わります。また、保険料を誰が負担しているかによっても異なります。それぞれのケースに分けてみていきましょう。
年金受取開始前に被保険者が死亡した場合
保険料負担者=被保険者のときは相続税が課税されます。死亡給付金受取人が相続人の場合、「500万円×法定相続人数」の控除が認められています。保険料負担者=死亡給付金受取人のときは、死亡給付金受取人に所得税(一時所得)が課税されます。保険料負担者=被保険者および死亡給付金受取人以外の人のときは、贈与税が課税されます。
年金受取開始後に被保険者が死亡した場合
保証期間付終身保険や確定年金などの年金支払が開始された後に年金受取人が死亡した場合は、残存する期間の年金が「継続受取人」に支払われます。この場合、年金受給権については「相続税」、年金については「所得税(雑所得)」が課税されます。
個人年金の受け取り方による課税の違い
保険料負担者と年金の受取人が同じである場合、年金を一括受取にする際には契約の種類によって所得の種類が変わります。
保証期間付終身年金の場合
保証期間分の年金を一括で受け取る場合は「雑所得」として課税されます。保証期間経過後に年金受取人が生存していた場合、その後に支給される年金も「雑所得」として課税されます。
確定年金の場合
年金支給の期間をあらかじめ設定しておいた契約を一括受取にすると、その受取額は「一時所得」として課税されます。毎年受け取る場合は「雑所得」に区分されます。
個人年金で確定申告が必要な人とは
給与所得がある人の場合
給与以外の雑所得が年間20万円を超える場合は確定申告の必要があります。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額で、計算式は以下の通りです。
個人年金の課税対象額=受取年金額 -(年金年額×払込保険料の合計額/年金年額×A )
※ Aに該当する値は、契約の種類によって異なります。終身年金は余命年数、確定年金は支給年数、保証期間付終身年金は余命年数と保証期間のうち長い方の年数、有期年金は支給期間と余命年数のうち短い方の年数 となります。
(参考 : 年金の支給開始日における年齢別余命年数)
公的年金を受け取っている人の場合
国民年金や厚生年金などの公的年金は雑所得にあたり、年金支給の際に所得税が源泉徴収されています。個人年金など公的年金以外の収入があり、下の2項目のいずれかに該当する場合は確定申告が必要です。
・年間の公的年金総支給額が400万円を超えている
・公的年金以外の所得が20万を超えている
上記2つのいずれにも当てはまらない場合であっても、医療費控除やふるさと納税などの寄付金控除に該当するものがあれば確定申告をしましょう。確定申告をすることで正しい所得税額となり、還付を受けられる場合もあります。なお、遺族年金と障害年金は所得税の課税対象ではありませんので、確定申告は必要ありません
個人年金だけでも確定申告が必要なケースとは
「保険料負担者=受取人」で「年間年金額 – 必要経費=25万円以下」の場合は、確定申告が必要です。
まとめ
年金の種類や受取人・受取方法と課税関係について紹介しました。個人年金保険と課税に対する理解を深めることは将来の節税につながります。必要があれば契約形態を見直したり、年金受取方法を再確認したりして、確実な資産設計に備えましょう。
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