ソルベンシーマージン比率。普段の生活では、あまり聞きなれない言葉だと感じる方が多いかもしれません。この数字の活用法や私たちの生活との関連について詳しく解説します。これから保険の加入や見直しを考えている人はもちろん、保険会社の経営状態に興味がある方にも役立つ情報です。
目次
ソルベンシーマージン比率とは
「ソルベンシー」と「マージン」の意味
ソルベンシー(Solvency)の直訳は「財務上の支払い能力」、同様にマージン(Margin)は「(時間・経費・活動などの)余裕」です。よって、ソルベンシーマージン比率は「支払い余力の比率」と言い換えることができます。
例えば、大きな災害など、保険会社の積立額を上回る保険金支払い事由が発生したとします。このような場合に「予測を超えた保険金支払いに対してどの程度対応できるのか」という点を数値化したものがソルベンシーマージン比率です。生命保険各社から四半期ごとの業績報告時および決算時に発表されています。
保険会社の財務健全性を示す指標
支払い余力の数値(比率)が高いほど、保険金の支払い資金に余裕があると判断されます。ソルベンシーマージン比率は保険会社の財務健全性を示す一つの指標ですが、この数値だけで経営の良し悪しを判断せず、ほかの情報も参考にしながら総合的に考えましょう。
ソルベンシーマージン比率の計算方法
ソルベンシーマージン比率の計算式
ソルベンシーマージン比率は、以下の計算式を使って算出しています。
「 ソルベンシー・マージン比率= 支払余力(マージン)/(1/2) × 通常の予測を超える危険(リスク)に対応する額 」(金融庁監督局保険課 ソルベンシー・マージン比率の概要について http://www.fsa.go.jp/singi/solvency/siryou/20061120/01-04.pdf)
これを簡単に表すと「保有資産額/(0.5×通常以上のリスク対応額)」となります。通常の保険金支払などにおけるリスクについてはあらかじめ見込み額を設定して保険料を積み立てており、多くの場合問題は生じません。
しかし、予測の範囲を超える事態(大きな災害や株の暴落など)が発生した際にどの程度の対応が可能であるかという点は、その会社の財務力に左右されます。財務上の支払余力が数値化によって明確となるソルベンシーマージン比率は、多くの人にとって分かりやすい指標と言えます。
保険監督者国際機構による新しい規制の方向性
保険監督者国際機構(IAIS)は、1994年に「効果的かつ国際的に整合的な保険監督の促進 」「 世界の金融安定への貢献」「 国際保険監督基準の策定及びその実施の促進 」「 保険監督者間の協調の促進」「他の金融分野の監督機関との連携」という5つの目的で設立されました。140カ国以上、200地域以上の保険監督当局等で構成される国際組織で、日本からは金融庁が参加しています。
(金融庁・保険監督者国際機構(IAIS)について http://www.fsa.go.jp/inter/iai/gaiyou.pdf)
日本ではソルベンシーマージン比率を算出するにあたり、資産にあたる部分は時価で、負債にあたる部分は簿価で評価しています(2017年現在)。一方、IAISでは資産・負債の両方を時価で評価する新しい規制作りが進められています。まだ新評価方式(資産・負債とも時価評価)を採用するに至っていない日本でも、今後の世界情勢によっては新方式へ移行するかもしれません。IAISに組織に携わることで日本は国際保険監督基準に精通し、そのことは加入者の保護へも役立っています。
金融庁のソルベンシーマージン比率による規制
200%が健全性の基準
ソルベンシーマージン比率は、私たちが保険会社を選ぶときの指標になっていると同時に、監督当局が保険会社の財務健全性を判断する基準の一つにもなっています。健全・不健全のボーダーとなる比率は200%であり、それを下回る状態になると、保険会社に対して必要な是正措置命令等が段階的に発動されます。
金融庁による規制内容
比率が200%を下回った場合、金融庁が保険会社に対する是正措置は以下の通りです。
100%以上 200%未満…経営の健全性を確保するため改善計画の提出と実行の命令
0% 以上 100%未満…配当の禁止・抑制、役員賞与の禁止・抑制、事業費抑制、業務縮小など
0% 未満…期限を付した業務の全部または一部停止命令
(金融庁・資料8-3-2 保険会社に係る早期是正措置制度の概要 http://www.fsa.go.jp/common/paper/27/zentai/03.pdf)
まとめ
ソルベンシーマージン比率は保険会社の経営状況を示す指標の一つです。会社の財務健全性を反映する数値であるため、金融庁もさまざまな規制を設け、是正措置を取っています。保険商品を選ぶ際には、ソルベンシーマージン比率とその他の情報を照らし合わせて総合的に判断すると良いでしょう。