「普段から保険には必要性を感じていない」というフリーターの人もいるかもしれません。しかし、日本に住んでいれば原則として加入しなければいけない保険制度もあり、すべての人が保険とはまったく無縁というわけにもいきません。また、いざという時の備えはあった方が安心という見方もできます。この記事では、フリーターが加入しなければならない保険・加入することもできる保険について詳しく紹介します。
目次
職業を問わず加入すべき保険制度とは?
国民年金
20歳以上60歳未満の人には、国民年金への加入義務があります。加入者は第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者の3種類に分類され、フリーターは第1号被保険者に該当します。
第2号被保険者(厚生年金保険適用の企業で働く会社員など)や第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者であり、収入が一定以下である20歳~60歳の人)と異なるのは、第1号被保険者は自分で保険料を納付しなければならないという点です。
年金保険料を支払った期間や金額に応じて将来受け取ることができる年金の金額も変わるため、納め忘れや滞納などはなるべく避けなければいけません。「収入が十分でなく、支払いが難しい」という人は保険料の減額や免除が受けられる場合もあるため、最寄りの年金事務所などへ相談してみましょう。
国民健康保険
ケガや病気の際に保障を受けられるのが、国民健康保険です。会社の健康保険に加入している人や、その扶養に入っている人を除いて、加入義務があります。義務教育就学後から70歳までの人については医療費の自己負担額が3割となる他、高額療養費制度を利用することができます。
また、40歳以上の人は介護保険にも加入する義務があります。介護保険制度とは、要介護の認定を受けた際に必要な介護保険サービスを受けられる制度です。65歳以上の人は第1号被保険者、40歳~64歳の人は第2号被保険者となり、フリーターの介護保険料は国民健康保険への上乗せという形で納付することになります。
加入基準がある社会保険とは?
前述の通り、国民年金・健康保険・介護保険については、フリーターであっても加入義務があります。その他、特定の基準を満たしている人が加入対象となる社会保険について、以下で紹介します。
厚生年金保険
厚生年金保険は、平成28年10月1日・平成29年4月1日よりそれぞれ段階的に加入資格者が拡大され、保険料は「労使折半(事業主と加入者本人が半分ずつ支払う)」という形を取っています。国民年金のみに加入している人は、基礎年金部分を年金として受け取ります。しかし、厚生年金へ加入している人は、基礎年金部分に加えて厚生年金部分(二階建て部分とよく言われています)も受け取ることができます。
厚生年金保険適用の企業に勤務しており、1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること・1カ月当たりの決まった賃金が88,000円以上であること等の条件を満たした人が加入対象者となります。
雇用保険
雇用保険とは、失業した際に給付金を受け取ることができる保険です。教育訓練給付金や育児休業給付等の保障も受けることができ、次の仕事が決まらないまま退職した際の生活費や技術資格取得費用などにあてることができます。フリーターであっても一定の条件で加入できるため、自分が加入対象になっているかどうか知りたい場合は雇用主に確認してみてください。
労災保険
労災保険とは、業務中や通退勤中の負傷・死亡等に対して一定の保険金が給付される保険で、保険料は原則として事業主の全額負担です。たとえ1名であっても従業員を雇用している企業・事業所は加入が必須となっており(一部の業種を除く)、従業員は正社員・派遣社員・パートタイマー・フリーターなどの雇用形態によらず保障対象となります。
社会保険の加入条件とは?
健康保険と厚生年金保険の条件は同じ
健康保険と厚生年金保険については、どちらも加入条件が以下の通りとなっています。
・1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
・1カ月当たりの決まった賃金が88,000円以上であること
・雇用期間の見込みが1年以上あること
・学生でないこと
・勤務先の従業員が501人以上であること(従業員が500人以下である場合、社会保険の加入について労使間で合意がなされていること)
「ダブルワークをしていて、両方の勤め先が上記の条件にあてはまる」というケースでは、どちらの会社で加入するのかを決め、収入額を合算して算出した保険料を支払うことになります。判断に迷った場合は両方の勤め先に相談してみるとよいでしょう。
雇用保険はフリーターもOKの可能性大
一方、雇用保険に加入するための条件は次の通りです。
・所定の労働時間が1週間で20時間以上あること
・雇用期間の見込みが31日以上あること
健康保険・厚生年金保険に比べて緩やかな条件であるため、加入対象となるフリーターも多いことが考えられます。こちらも不明点があれば勤め先に確認してみてください。
労災保険は加入条件がない
すでに説明したように、従業員を雇用している企業・事業所は労災保険の加入が必須であり、保障の対象は雇用形態を問わずすべての従業員となっています。そのため、従業員側には特別な加入条件が設けられていません。
社会保険へ加入するメリットとは?
傷病手当や出産手当がある
社会保険の健康保険は、給付される手当金・一時金の種類が国民健康保険より多くなっています。中でも、傷病手当金や出産手当金は生活に大きくかかわる給付金と言えます。
保険料が労使折半になる
一時金や手当が手厚い分、健康保険の保険料は国民健康保険より高額になる傾向があります。しかし、保険料は労使折半であるため、結果として自己負担分は国民健康保険料より安く済むケースがあります。すでに紹介したように、厚生年金保険料も労使折半で負担するため、会社が半分支払ってくれることになります。
将来の年金が二階建てになる
厚生年金の加入者は自動的に国民年金へも加入している扱いとなるため、厚生年金保険料は国民年金保険料を含んだ形で徴収されています。そのため、将来受け取る年金は「基礎年金(国民年金)部分+厚生年金部分」となり、国民年金のみへ加入している場合より増えることになります。
扶養制度を利用できる
扶養制度を利用すると、社会保険に加入した人だけでなくその扶養に入った人も保険の給付を受けることができます。扶養されている人は健康保険料・厚生年金保険料の支払い義務がなくなるという利点もあります。
社会保険の扶養制度は、税金の扶養制度とは認定基準が異なるため、扶養に入れたい家族がいる場合には詳細を確認してみましょう。
まとめ
職業を問わず加入が必要な保険や、フリーターも条件次第で加入できる保険などについて紹介しました。社会保険へは一定の条件を満たしていれば加入でき、加入によって得られるメリットもあります。フリーターという働き方を選びながら活用できる保険や制度を知っておき、必要に応じて検討してみてはいかがでしょうか。