死亡保険の加入を検討すると、商品の違いがわからず、戸惑う人も多いのではないでしょうか。死亡保険に加入する際は、種類による特徴の違いや契約形態によって死亡保険金を受けとるときの税金が異なることを理解しておくことが大切です。
目次
死亡保険とは?
まず、死亡保険とはどういった保険なのか、定義をみていきましょう。
被保険者の死亡等に備える保険
死亡保険は被保険者が死亡や高度障害の状態になった場合に備える保険で、万が一の際には死亡保険金や高度障害保険金が支払われます。
たとえば、一家の大黒柱となっている人が亡くなったとき、葬儀費用や残された家族の生活費、子どもの学資金など、多額のお金が必要になりますが、貯蓄だけですべてを賄うのは難しいケースが多いです。そこで、万が一のときに残された家族にまとまったお金を用意するために加入するのが、死亡保険なのです。
死亡保険と生命保険の違い
死亡保険は、「生命保険(死亡保険)」と書かれていることもありますが、生命保険と死亡保険に違いはあるのでしょうか。生命保険には広義と狭義での使われ方があり、広い意味では死亡や病気、ケガ、介護状態になったときに備える保険を言います。生命保険会社が扱う保険商品を生命保険と呼ぶこともあります。一方、狭い意味では生命保険は、死亡や高度障害の状態に備える保険です。つまり、生命保険は狭義では死亡保険と同じ意味になります。
死亡保険にはどんな種類がある?
死亡保険は保険期間や解約返戻金、満期保険金の有無などから、おおまかに定期保険、終身保険、養老保険の3つに分類されます。それぞれの保険の特徴を紹介するとともに、運用方法などによる死亡保険の種類について解説していきます。
掛け捨てが中心で保険料が安い「定期保険」
定期保険は保険期間が決まっていて、死亡や高度障害の状態にならなければ、保険金の支払いがない、いわゆる掛け捨てタイプの保険です。
定期保険の保障期間の決め方は2種類あり、年満了型は加入時から、5年、10年などの期間で保険期間が決められます。もうひとつの歳満了型は、加入時の年齢に関わらず、60歳や65歳といった年齢を満期とした保険期間になります。短期間の契約は年満了型、長期間の契約は歳満了型とされていることが多いです。
定期保険は更新の方法も2種類あり、年満了型は更新型がほとんどで、期限ごとに自動更新され、保険料が上がっていくことが一般的です。歳満了型に多い全期型は、更新がないタイプの保険で、満期に保険期間が終了すると、保険契約も終了します。
定期保険は終身保険や養老保険よりも保険料が安く、更新型を選ぶと若い頃は保険料を抑えられることがメリットです。定期保険には、年数が経過するにつれて、保険金の額が決められた割合で減っていく逓減定期保険もあり、保険料をさらに抑えられます。
一方で定期保険には、満期の際に満期保険金がない、保険期間が過ぎたら保障が受けられないといったデメリットがあります。
一生涯保障が続き貯蓄性がある「終身保険」
終身保険は保障が一生涯続き、確実に死亡保険金が受け取れ、途中で解約した場合も解約返戻金がある貯蓄性がある保険です。解約するタイミングによっては、払込済み保険料を解約返戻金が下回るケースもあります。
終身保険の保険料支払い方法の主な種類は、保険料も終身払い続ける終身払い、保険料払込期間は60歳までにするなど、決められた期間で支払う有期払い、一回で支払う一時払いです。
終身保険は保険料が加入時から変わらないことや保障が一生涯続くことがメリットですが、定期保険よりも保険料が割高なのがデメリットです。そこで、終身保険には、保険料払込期間中に解約した場合の解約返戻金を少なくすることで、保険料を安く抑えた低解約返戻金型保険というタイプもあります。
保険料が高い貯蓄型の「養老保険」
養老保険は保険期間が決められている有期の保険で、満期の際には死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるのが特徴です。保険契約期間中は死亡保障の役割があり、満期を迎えた場合には満期保険金を受け取れるので、高い貯蓄性があります。途中で解約した場合には、解約返戻金が受け取れますが、払込済み保険料を下回ります。
ただし、養老保険は昨今では積極的に販売されている保険商品ではありません。最近の商品は利回りがさほど高くありませんが、バブル期に販売された養老保険は利回りが高く、「お宝保険」と呼ばれています。
「外貨建て保険」や「変額保険」も
死亡保険の運用方法などによる種類では、外貨建て保険や変額保険といった種類があります。外貨建て保険は、保険料が外貨ベースで決まり、外貨で運用され、保険金も外貨ベースで支払われる保険です。米ドルかユーロ、豪ドルで運用される商品が中心です。
保険料や保険金は為替によって変わるため、たとえば、月額100ドルの保険料の場合、1ドル100円のときは月額の保険料は1万円ですが、1ドル90円になると月額の保険料は9,000円になります。
保険金も同様に為替の影響を受けますので、死亡保険金が30ドルの場合、1ドル100円のときは3,000万円ですが、1ドル90円になると2,700万円になってしまいます。
日本は低金利が続いているため、金利の高い外貨で運用することで保険料が比較的安いことがメリットですが、為替リスクがあることを認識しておくことが大切です。
また、一般的な保険は保険金の金額が決まっている固定型の保険ですが、変額保険は、保険金が運用実績によって変動する保険です。商品によっては最低保障額が決められていますが、払込済み保険料を下回ることもあり、ハイリスクハイリターンの保険商品と言えます。
死亡保険の選び方は?
死亡保険を選ぶ際の死亡保険金の保険金額の考え方や、無理のない保険料で必要な保障をカバーするための保険料の考え方をみていきましょう。
必要保障額をもとにする
死亡保険を選ぶ際に、死亡保険金をいくらにするのか考えるうえで基本となるのが、必要保障額です。まず、被保険者となる人が亡くなったときに必要となる、葬儀代やお墓代などの死亡整理金、残された家族の住居費や生活費、子どもの教育費などの費用を積み上げていきます。そして、ここから死亡退職金や遺族年金、家族の収入など家族が受け取れるお金と貯蓄を引くと、必要保障額を出せます。
たとえば、一家の大黒柱が亡くなった場合、子育て中の生活費はこれまでの生活費の70%、子どもの独立後の生活費は50%が目安です。住居費は住宅ローンを組んでマイホームを購入している場合、原則として団体信用保険に加入しますので、維持費のほか、マンションの場合は管理費や修繕積立金のみで済みます。一方、賃貸の場合は家賃が必要です。
教育費は、幼稚園から大学まですべて公立であれば750万円程度ですが、すべて私立の場合は2,000万円ほどかかりますので、進学先の考え方によって差が出る部分です。
また、国民年金や厚生年金に加入していると、18歳未満の子どもがいる妻、あるいは子ども本人に遺族基礎年金が支給されます。会社員など厚生年金に加入している場合は、要件に合致すると遺族厚生年金の支給対象になります。必要なお金ともらえるお金や貯蓄をもとに、必要保障額を算出しましょう。
支払える保険料と必要な保障を考慮
死亡保険を選ぶ際には、支払える保険料で必要な保障をできるだけカバーできるように商品を選んでいきます。
保険料は終身保険よりも掛け捨ての定期保険の方が割安ですので、子育て中で保険料を抑えたい場合には、逓減定期保険が向いています。家計にややゆとりがあり、保険料を抑えつつ貯蓄性も持たせたい場合には、終身保険の低解約返戻金型終身保険がおすすめです。また、子どもを養っている間の保障を手厚くしたい場合、終身保険と子育て中を保険期間とする定期保険を組み合わせる方法もあります。
また、独身の人や子どものいない共働き夫婦の場合は、葬儀代やお墓代などに備えて、300万円程度の死亡保険金の終身保険への加入が向いています。
死亡保険金にかかる税金は?
死亡保険金にはどんな税金がかかるのでしょうか。契約形態の違いによる税金の違いについてみていきます。
契約形態でかかる税金は変わる
死亡保険金にかかる税金は、被保険者と保険料を負担する契約者、保険金受取人の組み合わせによって異なり、相続税と贈与税、所得税の3つのケースがあります。
相続税の課税の対象となるのは、被保険者と契約者が同一で保険金受取人が異なるケースです。たとえば、夫が被保険者と契約者で、子どもを保険金受取人とする場合です。
贈与税が課税されるのは、被保険者、契約者、保険金受取人がすべて異なるケースです。たとえば、被保険者が夫、契約者が妻、保険金受取人が子どもといった場合が挙げられます。
所得税の課税対象になるのは、契約者と保険金受取人が同一で、被保険者が異なるケースです。たとえば、夫が被保険者で、妻が契約者と保険金受取人という場合が当てはまります。
相続税がかかる場合の計算方法
死亡保険金に相続税がかかる場合は、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。法定相続人の人数は相続放棄した人も含まれ、養子は実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで含まれます。ただし、相続放棄した人や法定相続人以外の人は、非課税限度額の適用の対象外です。また、複数の法定相続人が死亡保険金を受け取る場合は、受け取る死亡保険金の額に応じて按分されます。
相続税はほかの遺産と合算した総額に対して、1000万円以下の部分の10%~6億円超の部分の55%までの超過累進税率で課税されます。
贈与税がかかる場合の計算方法
死亡保険金に贈与税が課税される場合、その年にほかに贈与が行われなかった場合は、贈与税の基礎控除額の110万円の控除を受けられます。贈与税は、基礎控除後の課税価格200万円以下の部分の10%~3,000万円超の部分の55%までの超過累進税率による課税です。祖父母や父母から20歳以上の直系尊属の子や孫などへの贈与は特例贈与財産となり、税率の変わる贈与額が異なります。
相続税には生命保険の非課税限度額があることと、贈与税の方が相続税よりも税率が高いことから、相続税と比較して贈与税が適用されると不利なケースが多いです。贈与税は特例贈与財産のケースでも、1500 万円を超えて3000万円以下の部分の税率は45%ですが、相続税は1,000万円を超えて3,000万円以下の部分の税率は15%となっています。
所得税がかかる場合の計算方法
死亡保険金にかかる所得税は一時所得に該当します。一時所得の計算式は、「総収入金額-直接支出した金額-特別控除額最高50万円」ですので、一時所得が死亡保険金のみの場合は、「死亡保険金-払込済み保険料―最高で50万円」になります。
また、課税対象となるのは、「一時所得×1/2」です。所得税は給与所得や事業所得などほかの所得と合算した額に対して課税され、195万円以下の部分の5%~4,000万円を超える部分の45%までの超過累進税率が適用されます。
死亡保険金の受け取り方は?
死亡保険金を受け取る際には、どのような手続きが必要なのか、流れをみていきましょう。
金受取人に伝えておくべきこと
死亡保険金は被保険者が亡くなったら、保険金受取人に自動的に振り込まれるわけではありません。死亡保険金を受け取るためは請求手続きが必要ですが、亡くなった被保険者が請求を行うことは現実的に不可能です。そのため、死亡した際に備えて、契約している死亡保険の情報を保険金受取人に伝えておくことが大切です。
死亡保険の請求を行うためには、保険会社名と連絡先、担当者、加入している保険商品、契約者番号、被保険者の氏名といった情報は保険金受取人に伝えておきましょう。
生命保険会社への連絡
死亡保険金や高度障害保険金の支払い事由が発生したときには、契約者、または保険金受取人から保険会社に連絡を入れます。保険会社が確認する一般的な項目は、被保険者の氏名はもちろんですが、そのほかに保険証券番号、死亡した日と原因、死亡保険金の受取人の氏名と連絡先などです。
死亡する前に持病があったか、手術をしたことがあるかといったことも聞かれます。また、連絡を入れた人について、被保険者との続柄や連絡先を明らかにすることも求められます。
請求手続き書類の提出と支払い
保険会社に被保険者が死亡したことを連絡すると、請求に必要な書類や請求書が送付されます。死亡保険金の請求にあたっては、請求書と保険証券、医師の死亡診断書あるいは死体検案書、被保険者の死亡の事実がわかる住民票、死亡保険金受取人の戸籍抄本と印鑑証明書、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要です。実際は保険会社や商品によって請求手続きは異なります。
保険会社が支払可否判断を行い、無事、支払いが認められると死亡保険金は支払われます。死亡保険金には支払い期限があることが一般的ですので、事前に確認しておきましょう。
まとめ
死亡保険は種類や商品の特性によって、同じ保険料でも備えられる保障や将来の保険料、解約返戻金の有無などが異なります。ライフプランを踏まえたうえで、必要な保障を備えておくことが大切です。死亡保険の種類による特徴の違いを理解したうえで、フィナンシャルプランナーなどのプロに相談し、自分に合った死亡保険に入りましょう。