大学まで進学するには多くの教育資金が必要になるため、子どもが生まれると学資保険への加入を検討する人が少なくありません。一方で、学資保険は必要性を感じる人も、不要と考える人もいる保険です。そこで、そもそも学資保険とは何か踏まえたうえで、学資保険が必要な理由や必要ない理由について解説していきます。
目次
そもそも学資保険とは?
学資保険とはどういった性格の保険なのでしょうか。学資保険の一般的な定義についてみていきます。
子どもの教育資金を準備するための保険
学資保険は子どもの教育資金を準備するための貯蓄性のある保険で、親などの契約者に万が一の事柄があった際の死亡保障を兼ねています。子どもが進学するタイミングに合わせて、祝い金や満期金といった名称で保険金が支払われ、保険契約期間中に親が亡くなったり、高度障害の状態になったりした場合は、保険料の払込が免除されるとともに、保障は継続します。
祝い金や満期金が支払われるタイミングは、大学入学時のみとする商品もあれば、中学や高校に入学するときにも支払われる商品もあるなどさまざまです。学資保険で契約者が支払う保険料の総額に対する、祝い金や満期金などの保険金の割合は、100%を超える商品が中心です。ただし、医療保障などの特約が付加された商品の中には、返戻率が100%に満たない商品もあります。
教育資金はどの程度必要?
学資保険に入る必要性はあるのか、まずは必要な教育資金に関するデータをもとに、どの程度の教育資金が必要なのかみていみましょう。
幼稚園から高校までに必要な費用
文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」によると、学校に支払う授業料や修学費、塾代など学習費の総額は幼稚園から高校まで、すべて公立の場合で542万4,000円、すべて私立の場合で1,771万5,000円です。幼稚園から高校までの15年間をすべて私立に通う場合は、公立の3倍以上のお金が必要になります。
1年間の学習費をみていくと、幼稚園は公立23万4,000円、私立48万2,000円、小学校は公立32万2,000円、私立152万8,000円です。中学校は公立47万9,000円、私立132万7,000円、高校は公立45万1,000円、私立104万円となっています。
大学で必要な費用
大学でかかる費用は、独立行政法人日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査」によると、1年間の授業料などの学校納付金だけでも、国立50万6,700円、公立53万7,200円、私立121万円です。これは文系や理系のさまざまな学部の学生のデータを平均した数値ですので、実際には私立大学の場合、文系よりも理系の方が学費がかかります。
さらに、修学費や課外活動費、通学費を合わせたデータでは、1年間で国立64万2,500円、公立66万1,300円、私立136万900円の費用が必要です。4年間で、国立257万円、公立264万5,200円、私立544万3,600円にも及ぶ計算です。これに加えて、初年度には入学金などの費用も必要になります。
また、大学進学にあたって、自宅を出て一人暮らしを始める場合には、アパートなどの敷金や礼金、家具や家電の購入費用などの初期費用をはじめ、家賃や水道光熱費、食費などの月々の生活費もかかります。
すべて公立の学校で学ぶ場合でも、大学へ進学するまでに大きな費用がかかります。子どもの教育資金は大きな額になるため、必要になる時期に合わせて、計画的に準備しておくことが大切です。
学資保険が必要な理由
学資保険が必要と考える人はどのような理由を持っているのでしょうか。学資保険に加入する理由をみていきましょう。
強制的に教育資金を貯められる
お金を計画的に貯めようと思っても、貯金が苦手な人にとっては難しいものがあります。毎月、残ったお金を貯めようとしても、なかなか貯まりません。確実にお金を貯めるためには、一定の日に自動的に普通預金から定期預金に振り替えられる、銀行の自動積立定期貯金などを利用して、先取り貯金をする方法があります。
学資保険は毎月保険料が引き落とされるので、自動積立定期貯金と同様に強制力があり、教育資金を貯めやすいです。さらに、中途解約すると解約返戻金が払込済み保険料の総額を下回ってしまうことから、解約をとどまる抑止力になります。
銀行に預けるよりも有利
さらに学資保険の魅力として、銀行の金利よりも利率が高いことが挙げられます。昨今では日本は低金利のため、定期預金の金利は大手都市銀行では0.01%、ネット銀行で金利が高いところでも0.1~0.3%程度です。一方、学資保険は返戻率が104%や108%といった商品もあり、銀行に預けるよりも有利になります。
学資保険は長期にわたって保険料を支払っていく積立型の保険ですので、利率のよい学資保険を選ぶことが選択肢になるのです。
万が一にも備えられる
学資保険は親などの契約者に万が一のことがあった際は、保険料払込免除になる商品が多くを占めています。以降の保険料の払込みが免除され、祝い金や満期金などの保険金は、契約時に設定した通りに支払われます。
一方、教育資金を貯金している場合は、万が一の事態が起こると、これまで通り貯めていくことが困難なことも考えられるでしょう。死亡保障や高度障害保障を備えながら、教育資金を計画的に準備していくことができる面でも、学資保険は必要といえるのです。
学資保険が必要ない理由
一方で学資保険は必要ないと考える人もいます。学資保険はなぜ、不要といわれることもあるのでしょうか。
資金の流動性が低い
学資保険は10年や18年といった長期の保険期間の間、資金の流動性が低いことが難点です。商品によっては大学の入学時だけではなく、中学校や高校の入学時にも祝い金が支払われますが、長期間資金を預けた状態になります。
保険期間の間に、マイホームを買ったり、病気やケガで入院してお金がかかったりしても、学資保険から自由にお金を引き出すことはできません。中途解約すると解約返戻金の支払いを受けられますが、払込済み保険料を下回るので損をすることになります。
また、解約返戻金までの金額で、契約者貸付制度を使ってお金を借りる方法がありますが、利子が膨らんでいくと、保険が失効してしまうリスクがあることに注意が必要です。
インフレリスクがある
学資保険には、金利の上昇によるインフレリスクがあることも、必要ないとされる理由のひとつです。学資保険は、たとえば0歳から18歳が保険期間の場合、18年間、固定された利率で運用することになります。日本は、現状は低金利のため、銀行の定期預金の金利よりも学資保険の利率の方が有利です。
しかし、18年間の間に金利が上昇すると、定期保険の金利が学資保険の利率を上回る可能性があります。
低金利のときは、変動金利か短期間の固定金利の商品を選ぶのが運用の基本ですので、学資保険で長期にわたって運用するのはセオリーに反しているのです。
学資保険の代わりになる保険もある?
生命保険の中には、学資保険代わりに利用されている商品もあります。養老保険と終身保険を学資保険と比較していきます。
養老保険の場合
養老保険は保険期間を設定する有期の保険で、万が一の際には死亡保険金や高度障害保険金が支払われ、無事、満期を迎えた場合には、満期保険金が支払われます。死亡保険金と満期保険金は同額で、必ず保険金が支払われるのが特徴です。
たとえば、子どもが生まれたら、保険期間を大学に入学するまでの18年間に設定して養老保険に入ると、教育資金として利用できます。保険期間中に被保険者である親が亡くなった場合は、死亡保険金が入りますので、学資保険と同様に万が一の場合の備えになります。
終身保険の場合
終身保険は一生涯保障が続く保険で、死亡保険金あるいは高度障害保険金が必ず受け取れる保険です。終身保険も、学資保険や養老保険と同様に掛け捨てではありませんので、中途解約すると解約返戻金が支払われます。
終身保険の解約返戻金は、保険料払込期間が終わる頃以降のタイミングで解約すると、払込済み保険料の総額を上回ります。教育資金としてまとまったお金が必要になる時期に合わせて、保険料払込期間が終わるようにしておくと、学資保険のように万が一に備えながら資金を準備することが可能です。
学資保険との比較
学資保険は、教育資金が必要な時期に合わせてお金が受け取れるように、商品設計されていますので便利です。とくに、中学校や高校の入学の際にも祝い金を受け取りたい場合、使いやすいです。
ただし、学資保険は子どもの年齢によって、加入できる年齢が制限されています。加入するタイミングを逃した場合には、養老保険は保険期間などを柔軟に選びやすいので活用しやすいです。家族の状況やライフプランに合った保険を選びましょう。
学資保険の選び方
学資保険は多くの生命保険会社から商品が打ち出されていますが、何を基準に選んだらよいのでしょうか。学資保険の選び方についてみていきましょう。
返戻率をチェック
学資保険を選ぶ際に重視するべきなのは返戻率です。返戻率は、「支払う保険料の総額÷祝い金や満期金など保険金の総額」で計算されています。返戻率が高いほど、コストパフォーマンスがよく、貯蓄性の高い保険です。
返戻率は100%超えるものが中心ですが、医療保障や育英年金などが付加された商品の中には、100%を下回り、元本割れするものもあります。医療費は、小学生、あるいは中学生まで助成を受けられる自治体が多く、ほかの保険で賄うという選択肢もあります。
育英年金は、親などの契約者が亡くなったときに、祝い金や満期金とは別に、育英費用として年金が支給されるものです。生活費に関する備えは、ほかの生命保険でカバーできていれば、不要といえます。保障が充実している学資保険は、返戻率が低くなります。保障と利回りと何を優先するか考えて商品を選びましょう。
満期や保険金の受け取り時期
学資保険は商品によって、満期金を受け取り保険期間が終わる満期の時期や祝い金を受け取る階数や時期に違いがあります。たとえば、「小・中・高の入学時に祝い金+大学の入学時に満期金」、「大学の入学時の満期金のみ」、「大学の入学時から在学中に祝い金と満期金」といったパターンが挙げられます。
大学の入学時の満期金に加えて、小学校や中学校、高校の入学時に祝い金をもらうタイプよりも、大学の入学時の満期金のみのタイプの方が返戻率は高いです。
また、一番教育資金が必要となるのは、受験費用や入学金などがかかる大学に進学するタイミングです。大学入学時に必要となる教育資金をベースに、保険金を受け取りたいタイミングで支払われる商品を選択しましょう。
保険料の払込期間や支払い方法
学資保険の保険料払込期間は、満期を迎える子どもが17歳や18歳までの期間が一般的です。ただし、保険会社や商品によっては10歳や12歳、15歳といった年齢までの保険料払込期間や、一括で支払う全期前納払いも選ぶことができます。短期間での支払いの方が保険料は安いため、返戻率は有利ですが、1回の保険料の支払額が大きくなりますので、無理なく支払っていかれる方法を選びましょう。
また、月払いよりも年払いにした方が保険料は安くなります。
契約者は家計を多く支えている人
学資保険の契約者は、父親と母親のいずれがよいということはなく、多くの収入を得ている方とするのが望ましいです。多くの商品で付加されている保険料払込免除が適用されるのは、契約者が亡くなった場合です。父親が一家の大黒柱として働いていて、母親が契約者だった場合、父親が亡くなっても保険料の支払いは免除されません。
一方で、父親よりも母親の方が収入が多い場合には、母親を契約者にするべきです。また、学資保険は告知書の提出が必要ですので、収入が多い方の親が健康状態などの問題から加入できない場合は、もう一方という選択肢もあります。
まとめ
学資保険を利用すると、現状では定期預金よりも高い利回りで教育資金を準備することができます。万が一に備えられるという点でも、学資保険は定期預金で貯めていくよりもメリットがあります。子どもが大きくなってから教育資金の準備がなくて困ることがないように、学資保険の活用も検討しながら、マネープランについて考えておきましょう。