給与から厚生年金保険料を引かれている人は少なくありませんが、どのように計算されているのか把握しているでしょうか?この記事では厚生年金保険料の計算方法や、国民年金・健康保険との違いなどを紹介します。
目次
厚生年金保険とは?
会社員などが入る公的年金
自営業者やフリーター、無職の人などが国民年金へ加入するのに対し、会社員は厚生年金の被保険者となります。以前公務員が加入していた共済年金は、平成27年10月に厚生年金へ統一されたため、現在は公務員も厚生年金の加入者となっています。国民年金には20歳~60歳の40年間加入するのが原則ですが、厚生年金は就職によって20歳前から加入する人もおり、定年後も働き続ければ最長70歳まで資格が継続します。
保険料の負担は半分ずつ
国民年金保険料は全額を被保険者が支払いますが、厚生年金保険料は事業主と被保険者がそれぞれ半分ずつ負担しています。また、国民年金保険料は被保険者がコンビニや金融機関から納付書を使って納付するのが一般的ですが、厚生年金保険料は全被保険者分を事業主がまとめて国に納付しているため、被保険者自身が納付の手続きをする必要はありません。
国民年金へ上乗せ支給
公的年金は、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金で構成される「2階建て」の制度設計になっている点が特徴です。厚生年金に加入すると、1階部分の国民年金に加え、2階部分にはそれまで支払ってきた保険料額に応じた厚生年金が上乗せで支給される仕組みとなっています。そのため、国民年金に比べて厚生年金の加入者の方が将来の年金額が多くなります。
厚生年金保険料額表の見方
厚生年金保険料は、被保険者の報酬月額に基づいて決定される標準報酬月額へ保険料率を掛けて計算します。事業主は、計算された厚生年金保険料の全額を納付し、そのうちの半分を被保険者の毎月の給与から控除しています。厚生年金は標準報酬月額に応じて全31等級に区分けされており、日本年金機構のホームページからは厚生年金保険料額表を確認することができます。
厚生年金保険料の計算方法は?
給与にかかる厚生年金保険料
厚生年金保険料は、給与と賞与とで計算方法が異なっており、給与にかかる厚生年金保険料については、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出します。標準報酬月額とは、原則として毎年4月から6月までの3か月間に受け取る報酬の平均額を厚生年金保険料額表の等級に当てはめて決定し、その年の9月から翌年8月までの1年間適用されるものです。基本給だけでなく、通勤手当や残業代を含めて計算します。
保険料率は平成16年から段階的に引き上げが行われてきましたが、平成29年9月をもって引き上げが終了し、以降は18.3%で固定されています。
賞与にかかる厚生年金保険料
賞与にかかる厚生年金保険料は、賞与の額から端数(1,000円未満)を切り捨てた標準賞与額へ保険料率を掛けて算出します。ただし、1か月あたりの上限が150万円となっているため、例えばその月の賞与額が200万円であれば上限を超えているため、150万円を標準賞与額とみなして保険料の計算をします。
実際の計算例
4月から6月までの平均報酬月額を275,000円、賞与額を500,500円と仮定した場合の、被保険者負担分の保険料は次の通りです。
給与については、275,000円を厚生年金保険料額表に当てはめると18等級となり、標準報酬月額は28万円です。したがって、28万円×18.3%×1/2=25,620円となります。
賞与は、1,000円未満を切り捨てた50万円が標準賞与額となるため、50万円×18.3%×1/2=45,750円となります。
厚生年金基金や健康保険との違いは?
厚生年金基金は企業年金
厚生年金基金は企業年金の一種で、保険料の一部を国に代わって受け取り、運用によって得た利益を将来の年金へ上乗せ支給することを目的とした制度です。国に代わって給付の一部も行うため、厚生年金基金へ加入したことがある場合は、国だけでなく厚生年金基金もしくは企業年金連合会へも請求をしないと年金の受け取り漏れが生じてしまう可能性があります。
健康保険は被用者保険
健康保険は医療保険制度の一つで、病気やケガをしたとき・入院や出産で休業するときなどに保険給付を受けることができるものです。厚生年金の加入上限が70歳であるのに対して健康保険は75歳までとなっており、40歳からは介護保険へも加入が必要です。なお、健康保険の保障が及ぶ範囲は「業務外の病気やケガ」であり、業務中や通勤途中の病気やケガについては労災保険の保障対象となります。
厚生年金保険と健康保険はセット
健康保険には、主に大企業や同じ業種の企業で組織される「健康保険組合」と、中小企業が加入する「協会けんぽ」があります。協会けんぽに加入している場合、被保険者に関する手続き(資格の取得など)は、所定の用紙を年金事務所に提出するだけで済みます。年金事務所から協会けんぽへ必要なデータが送られるため、直接協会けんぽへ手続きを行わなくても保険証が発行される仕組みになっています。
まとめ
厚生年金は保険料の負担が事業主と折半である点や、将来の年金給付に上乗せされる点が国民年金との違いであるといえます。会社員の多くは厚生年金の加入者でもありますので、この機会に厚生年金や健康保険などの社会保険制度全般に対する理解を深めておきましょう。
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