保険会社には相互会社や株式会社などの種類があります。また、外資系の会社やインターネットで保険の通信販売をする会社などもあり、どの会社を選んでよいのかわかりにくいと感じる人もいるかもしれません。今回は保険会社の種類や、比較するときのポイントなどを解説します。
目次
保険会社と代理店の違いとは
保険業を営む「保険会社」
保険会社とは、健全で適切な運営と公正な保険募集により、保険契約者を保護する目的で制定された「保険業」を営む会社のことです。銀行や証券会社などと同じ金融機関ですが、保険商品の開発や販売、各種手続きなど保険に関する運営全般を行っています。
保険会社は、外務員の自宅訪問などによって商品の普及を行う地域密着型の会社が多い点が特徴です。内勤の社員は受付事務や給付金の手続きを行ったり、社員のスキルアップを指導したり、部署によって業務内容はさまざまです。
販売と保全を担う「保険代理店」
保険代理店とは、保険会社から委託を受けて保険の営業やサービスを行う会社で、生命保険会社とは異なります。保険商品の紹介・提案・アドバイスなどのほかに、保険金の給付手続きや契約変更、解約なども行います。
保険代理店の形態には「専業」と「副業」があり、専業は保険の販売や保全業務がメインですが、副業の場合は旅行代理店や自動車のディーラーなどを兼ねていることもあります。
保険料はどちらで入っても同じ
保険会社で販売している保険と代理店で取扱っている保険が同じ商品である場合、どちらで加入しても保険料は同じです。保険会社が自社商品のみの販売を行うことに対して、保険代理店は複数の保険会社の商品を取り扱うこともあり、商品の比較ができる点が大きな特徴です。
保険会社の種類
「生保」と「損保」の2種類
保険業法によると、保険会社にはあらかじめ決められた額の保険金を支払う「生命保険会社」と、実際に損害を受けた額が補償される「損害保険会社」があります。生命保険は人の生死に対して保険金を支払うもので「第1分野」に分類され、生命保険会社が取り扱います。損害保険は事故による人や物の損害を補償する「第2分野」であり、損害保険会社が販売を行います。
第一分野の保険には「終身保険」「定期保険」「養老保険」などが該当し、第2分野には「火災保険」や「自動車保険」などが該当します。また、現行の保険業法ではどちらにも属しない中間の保険を「第3分野」として分類しており、「医療保険」「介護保険(民間)」「就業不能障害保険」などが該当します。「第3分野」の保険は生命保険会社・損害保険会社のどちらでも取り扱いが可能です。
生命保険会社の特徴
生命保険会社は主に「第1分野」の保険を取り扱っています。多くの場合、死亡時の保険金・入院時の給付日額などは契約時に決定され、実際に支払いが発生したときにはその金額がそのまま支払われるケースがほとんどです。また、契約期間を10年以上とする商品が多く、長期にわたる保障の提供が前提となる点も生命保険会社の特徴です。
外務員などが自宅や職場に訪問して契約を行う形態のほか、インターネットを通じた申込の取り扱いなども増えています。
損害保険会社の特徴
損害保険会社は主に「第2分野」の保険を取り扱っており、「自動車保険」や「火災保険」ではあらかじめ支払いの上限額や免責金額(補償金額のうち契約者の自己負担となる金額)を決めてから契約を行います。保険金の支払いが発生した際には、上限額を超えない範囲で実際の損害額が支払われるケースが多くなっています。
保険期間が1年などの短期に設定された商品が多い点、代理店や自動車販売店からの加入が多い点なども損害保険の特徴といえます。
生命保険会社の種類
国内生保
国内資本によって運営されている生命保険会社を国内生保と呼びます。日本初の生命保険会社は1880年に設立されており、140年近い歴史があります。当時から外勤職員が各家庭や職場を訪問することで新規・継続契約を結ぶ形態を主とし、現在でも対面式の保険販売や定期訪問などが多く行われています。
また、大型の定期保険と特約をセットで販売する商品を主力に据えるケースが多い点が国内生保の特徴です。
損保系生保
損保系の生命保険会社は、損害保険会社の系列の子会社として設立されたケースが多く、1996年10月から営業が開始されています。それまでは損害保険会社で生命保険を扱うことができませんでしたが、保険業法の改正を受け、子会社を設立することで販売が可能となりました。当初の損保系生保には社名にひらがなを用いる会社が多かったため「ひらがな生保」と呼ばれていました。
「収入保障保険」や「医療保険」「がん保険」「終身保険」など、第3分野の商品や特徴のある商品を多く取り扱っています。損害保険の代理店が販売するケースもありますが、生命保険を得意とする代理店が扱うケースも多くなっています。知名度は高くない会社もありますが、保険商品自体は加入者のニーズに合わせたものがあることが特徴です 。
外資系生保
外資系の生命保険会社とは、外国の資本を基に設立された生命保険会社を指し、外国法人の保険会社や国内法人であっても外国法人が1/3以上の株式・持ち分を所有する保険会社のことをいいます。複数の保険会社の取り扱いが可能である乗合代理店を設けている点などが特徴です。国内の保険会社と比較すると保険料が安い傾向にあり、オーダーメイドで設計できる商品も多いため、自分に合った保険を選びやすい点がメリットとして挙げられます。
一方、国内生保に比べると加入後の訪問やアフターフォローなどが少ない場合や、請求手続きなどを自分主体で進める必要性が生じる場合もあります。
カタカナ生保
カタカナ生保とは、生命保険以外を本業とする国内企業が資本を持つ生命保険会社です。カタカナの社名が多いことからこのように呼ばれます。カタカナ生保は外資系の保険会社ではありませんが、販売している保険の種類や性格が外資系生保の商品と似ている場合もあります。
カタカナ生保ではインターネットで保険販売が行われるケースも多く、対面販売では専門資格を持った「ライププランナー」と呼ばれる担当者がオーダーメイド形式で保険を設計してくれる点などに特徴があります。
ネット系生保
ネット系生保とは、インターネットを通して保険のシミュレーションや申込ができる生命保険会社のことです。人件費・店舗維持費などのコストが低く抑えられることから、保険料も安価に設定される場合が多くなっています。
取り扱う商品は「医療保険」や「がん保険」「終身保険」などが主流で、貯蓄性のある保険は少ない傾向にあります。加入の際にはインターネットから代理店経由で申し込む方法・直接保険会社へ申し込む方法があります。担当者を通して手続きを行うことが少ない分、自分で重要事項などを確認する必要があるため、ある程度の保険に対する知識が必要となることもあります。
共済発展系生保
共済から発展して生命保険会社となったのが、共済発展系生保です。生命保険業の免許を取得し、元々行っていた共済事業の代理店を通じて保険を販売するケースが多くなっています。
取り扱っている主な商品は「定期保険」や「終身保険」などで、それほど種類は多くありません。しかし、保険料や保障額が何パターンかに限られたものが多く、商品の仕組みを理解しやすい点や、プランを選びやすい点などがメリットといえます。掛け捨てタイプだけでなく、満期時に返戻金がある保険・積立型の保険などが提供されている場合もあります。
保険会社の比較・ランキングの基準は?
ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率は生命保険会社の財務の健全性をはかる指標とされており、「生命保険会社がどれだけ保険金を支払う余力があるのか」について知ることのできる数字です。「保険業法第130条」に定められており、
支払余力 / 通常の予測を超えるリスクに対応する額 × 1 / 2
という式で算出することができます。
支払余力とは、「自己資本や準備金がどれだけあるか」ということを示しており、予め支払いを見込んでいる保険金以外の部分を指します。通常の予測を超えるリスクとは「株の大暴落」「金利の低下」「大災害」など、社会情勢や自然災害などによって発生する急激で大規模な損害のことをいいます。
各保険会社が健全な経営を行っているかどうかは、ソルベンシー・マージン比率が200%以上であるかどうかが目安とされています。通常、各保険会社のホームページなどで数値が公開されているため、確認してみましょう。
ソルベンシー・マージン比率についてさらに詳しく知りたい場合は以下の記事も参照してみてください。
ソルベンシーマージン比率とは?算出方法や金融庁の規制を解説
生命保険会社のソルベンシーマージン比率ランキング
S&Pやムーディーズなどによる格付け
保険会社には格付けがあり、AAAやA+などの記号によって経営の健全性を表しています。格付けは複数の格付け会社が独自に行っており、自社で数値を出すソルベンシー・マージン比率よりも信ぴょう性があるという意見もあります。
米国の格付け会社には「S&P」の略称で呼ばれる「スタンダード・アンド・プアーズ」があり、生命保険会社だけではなく、政府が発行する国債や企業の社債なども評価しています。格付け記号については、AAAが最高位でBBBまでが「投資適格」と評価しています。
ムーディーズも米国の格付け会社で、S&Pと同様に保険会社や国債・社債の評価を行っています。格付け記号はAaaが最高位で、Baaまでを「投資適格」と評価しています。
R&Iは日本の格付け会社である「格付投資情報センター」の略称で、やはり国債・社債の格付けまで行っています。AAAが最高位・BBBまでが「投資適格」という格付け記号を用いています。
保険会社でみられる相互会社って?
保険会社のみ認められている会社形態
国内の保険会社の中には「~相互会社」という社名がありますが、これは株式会社・有限会社などと同じように経営形態の一つです。相互会社とは保険会社だけが認められているスタイルで、会社の構成員である社員が「契約者」となります。保険契約者(社員)が相互会社の持ち主となって配当金を受け取ることができる、という仕組みで運営されています。
保険契約では各契約者が保険料を出し合う「相互扶助」を目的としていることから、保険業法によって保険会社のみに認められている組織の形態です。
相互会社のメリット
株式会社として経営されている生命保険会社は、会社法に基づく営利法人です。そのため、会社に利益が出たときには、契約者だけではなく株主へも配当を行う必要があります。
しかし、相互会社は非営利法人であり、構成員は株主ではなく社員である保険契約者となります。利益は余剰金として契約者(社員)へ配当を行えばよいため、利益が優先されることとなる契約者(社員)にとってはメリットが大きい形態であるといえます。
相互会社のデメリット
相互会社の最高意思決定機関は、すべての社員で構成される「社員総代会」です。株式会社では「株主総会」が意思決定機関であり、最大でも数十万人規模ですが、相互会社の社員総代会は数百万人・数千万人の規模になることもあります。そのため、選出された「社員総代」が社員総代会へ出席するという形をとっています。
しかし、社員総代に選出される社員が経営陣の意向を反映した人物である場合、「社員総代会」が形だけのものとなってしまう可能性があります。株式会社に比べ、契約者の意見が経営サイドに届きにくい面があることが相互会社のデメリットの一つと考えられます。
進む株式会社化
2000年に保険業法が改正されたことによって、相互会社から株式会社への変更が容易となり、多くの保険会社が株式会社に移行しました。また、この改正で、生命保険相互会社にも「会社更生法」が適用されることとなりました。競争が激化した点・株式会社に移行した会社が増えた点などにより、保険料の低価格化が促進されたともいえます。
相互会社は契約者である「社員」へ余剰金を配当する形態ですが、配当を出さずに保険料を下げる無配当保険の販売は法律で制限されています。株式会社にはこのような制限がなく、安い保険料で無配当の商品を販売することも可能であるため、保険商品の開発がしやすいという面があります。今後はインターネット専門の保険会社が増えたり、保険業界の競争がさらに激化したりすることも考えられ、株式会社へ移行する保険会社が増える可能性もあります。
まとめ
生命保険会社の種類や形態などについて紹介しました。取り扱う商品・加入方法なども会社によって異なるため、自分一人では保険を選ぶことが難しいと感じる人もいるかもしれません。保険のことがよくわからない・身近に頼れる人がいないという場合には、いろいろな保険会社の商品を扱っている保険代理店へ相談に行ってみるのもひとつの方法です。保険の仕組みや特徴の説明や、自分に合った保険選びのアドバイスを受けることができます。
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