「医療保険は本当に必要なの?」と考えたことはありませんか?保険のかけ過ぎはお金がもったいないと感じても、いざという時に費用が足りないと不安になったり、困ったりしてしまうこともあります。入院時にカバーしてくれる公的制度についても解説しながら、医療保険の必要性を考えていきましょう。
目次
医療保険の必要がない理由
公的医療保険制度が充実している場合であれば、個人で医療保険に加入する必要性は高くないかもしれません。まずは、公的な保険制度がどのような内容なのかを紹介します。
高額療養費の制度がある
高額療養費制度とは、1カ月の医療費が一定額を超えるとその分の払い戻しを受けられる制度です。つまり、1カ月分の医療費の実質負担金額はこの制度における限度額を超えないようになっているということです。なお、医療費には差額ベッド代や食事代は含まれないため、その点には注意してください。
1カ月あたりの医療費の自己負担限度額は年齢や収入によって異なり、70歳未満の人に関する計算方法は次の通りです。
・標準報酬月額が83万円以上…252,600円 + ( 医療費 – 842,000円 )× 1%
・標準報酬月額が53万〜79万円…167,400円 + ( 医療費 – 558,000円 ) × 1%
・標準報酬月額が28万〜50万円…80,100円 + ( 医療費 – 267,000円 ) × 1%
・標準報酬月額26万円以下…57,600円
・低所得者(※)…35,400円
※ 生活保護の被保護者や市町村民税非課税世帯などの人
標準報酬月額とは、4・5・6月の給料の平均を指します。また、この制度を年に4回以上利用した場合、4回目以降の限度額については一定となります。
70歳以上75歳未満の人は以下のように計算します。
区分 | 外来(個人単位) | 外来 + 入院(世帯単位) |
---|---|---|
現役並み所得者 | 44,400円 | 80,100円 +( 医療費 - 267,000円 )× 1% |
一般 | 12,000円 | 44,400円 |
低所得者Ⅱ(※) | 8,000円 | 24,600円 |
低所得者Ⅰ(※) | 8,000円 | 15,000円 |
※低所得者Ⅱ…市町村民税非課税世帯に属する人、低所得者Ⅰ…市町村民税非課税世帯の一定基準所得に満たない人(年金収入80万円以下など)
現役並み所得者にあたる人がこの制度を年に4回以上利用した場合、70歳未満の人と同様に4回目以降の限度額は一定となります。
健康保険から傷病手当金が支払われる
企業や団体に勤務している人の健康保険には「傷病手当金」という給付制度があります。これは被保険者が病気やケガで仕事を連続4日以上休み、事業主から給料の支払いを受けられない場合に、休業4日目から支給されるものです。手当金の支給は1年6カ月を限度とし、事業主から給料の支払いを受けられる場合にはその額を控除した金額が支給されます。
例えば、8月初めに傷病手当金の支給が始まる場合、手当金額の計算には「支給開始前月から直近12カ月間の標準報酬月額(各月)の平均」を使用します。平均した額を30日で割り、その額の3分の2に相当する額が、1日あたりの傷病手当金です。平均標準報酬月額を26万円として、実際に計算してみましょう。
平均標準報酬月額260,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 5,780円(1日あたりの支給額)
30日で割った際、1の位は四捨五入します。また、計算式に小数点がある場合は小数点第1位も四捨五入します。
医療保険が必要な理由
入院期間が長期になることもある
たとえ高額療養費制度や傷病手当金制度が整っていても、収入が減ったり医療費(毎月の自己負担限度額)の出費がかさんだりという事態は避けられません。入院期間が長くなればなるほど貯蓄の切り崩しが増え、治療に専念できなくなってしまうケースも十分に考えられます。
入院したときの精神的な負担が軽減できる
もし入院することになっても、医療保険に加入していれば費用の補助を受けられるため、不安も軽くなるのではないでしょうか。ケガや病気の程度によって入院の長期化が予想される状態であればなおさら、精神的な負担の軽減は大切であるといえるでしょう。
医療保険が特に必要となる人とは
貯蓄が十分にない人
入院期間の長さにかかわらず、入院には費用がかかります。毎月かかる生活維持費に医療費が加わるため、貯蓄に回せるお金が減ったり、貯蓄を切り崩したりしなければならないケースも考えられます。十分な貯蓄がない人や貯蓄の切り崩しをしたくない人は、医療保険を準備しておいた方が心強いのではないでしょうか。
自営業の人
自営業者などが加入している国民健康保険には「傷病手当金」がありません。そのため、一度入院すると収入がない状態になることも考えられます。一時的な休業や業務の代行依頼が可能であっても、事業運営費などの経費が発生するケースもあるかもしれません。治療に専念するためにも、仕事の心配や経済的な不安は解消しておきたいものです。
主婦
収入のない主婦が入院した場合、子供の年齢が低いほど必要経費は増える可能性があります。ベビーシッターや家事代行サービスを利用したり、入院に伴って子供を幼稚園に預けることにしたりする場合も考えられます。扶養に入っている人には「傷病手当金」制度がないため、医療費などの備えはより重要であるといえます。
まとめ
医療保険の必要性は、その人が置かれている環境や健康保険の種類、充分な貯蓄の有無、貯蓄に対する考えなど、さまざまな要素によって異なるものです。もし入院したら自分の生活にどのような変化が起こるのか、どんなお金がいくら必要なのかということを把握し、万が一の場合に備えておきましょう。