成年後見人についてはよく理解していない人も多いのではないでしょうか。成年後見人についての知識がないと親が認知症になった場合などに、財産管理で親族とトラブルになる可能性があります。今回は、成年後見人の費用や手続き方法、そして生活保護受給者の助成制度などについて解説します。
目次
成年後見人制度とは?
2つの種類の総称のこと
成年後見人制度は、精神上の障害により判断能力が低下している人が不利益な契約をさせられたりしないように、保護する人や支援する人を家庭裁判所に申請する制度です。成年後見人には「法廷後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
「法廷後見制度」は認知症などで判断能力が低下した後に申請する方法で、家庭裁判所に後見人を選択してもらう制度です。一旦開始すれば本人の判断能力が回復したときや、死亡したときまで継続されます。「任意後見制度」は判断能力があっても事前に後見人を決めておく方法で、どの範囲まで支援するかなどを決められます。
後見人になれる人・なれない人
後見人になるためには条件があり、未成年者や破産者、行方不明者は対象外です。また、家庭裁判所から解任された法定代理人、後見人に訴訟をした本人や配偶者と直系血族も対象外です。それ以外の人は後見人になることは可能ですが、家庭裁判所が適当でないと判断した場合には認められないケースもあります。
任意後見制度では申し立てができるのは以下の人に限られています。法定後見人制度の場合は家庭裁判所から選任されることが一般的です。
・本人
・配偶者
・四親等以内の親族
家族や親族であっても選ばれない事も
家族や親族でも後見人になることは可能ですが、遠方に済んでいる場合や親族の間で紛争があるときは選ばれにくい可能性があります。また、70歳以上の高齢者や申し立て書類の不備が多い人も選ばれにくくなります。
そのほかに後見人に選ばれにくい条件としては、住宅ローン以外の借金がある、あるいは本人の預貯金が1,200万円以上ある、などが挙げられます。
成年後見人の費用とは?
申立人は専門家、もしくは本人など
成年後見人制度の申し立ては、司法書士や弁護士などの専門家や「本人」「配偶者」「四親等以内の親族」が行います。専門家に依頼しなかった場合にかかる費用には、収入印紙代や切手代と登録手数料、鑑定費用、成年後見人への報酬があります。
印紙代は800円から2,400円程度かかり、後見型、補佐型、あるいは補助型によって異なります。切手代は3,000円から5,000円前後かかり、登記費用手数料は2,600、鑑定費用は5万から10万円程度の費用となります。成年後見人の報酬は、生命保険や預金残高などの管理財産額が1000万円以下なら基本報酬が2万円で、それを超える場合は管理財産額によって決まります。
司法書士や弁護士だと20万円前後
成年後見人を専門家に依頼した場合、通常は相談料や基本費用、個別の依頼内容に対する費用がかかります。相談料は1時間につき5,000円が相場で、基本費用は30,000円となるケースが多くなっています。
個別の依頼内容は、補佐・補助・後見によって費用が変わりますが、15万円から20万円ほどになり、合計した費用は21万円前後になることが一般的です。
生活保護受給者でも利用は可能?
金銭的な決まりは無いため利用可能
成年後見人への報酬は後見人の財産から支払うことが原則です。しかし、成年後見制度の利用条件には特に収入による制限はありません。そのため、生活保護を受けているために報酬の支払いが困難な人や、収入があっても報酬の支払いに十分な金額でないときにも、後見人の利用ができる場合もあります。
申し立て時の費用援助で利用できる制度
成年後見制度の申し立て時費用の援助を受ける場合には、法テラスの民事法律扶助制度の利用が可能です。民事法律扶助制度は経済的に余裕のないときに無料で法律相談を受けられる制度で、弁護士や司法書士にかかる費用の立て替えも行います。
親が認知症になり悪徳商法などで経済的な被害を受けないように、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる場合などの代理人費用も立て替えてもらうことができます。民間であれば生命保険会社の介護保険の給付金などで費用を支払うことも一つの方法です。
後見人報酬の助成制度、基金も
成年後見人の報酬についても、自治体による助成や成年後見助成基金など金銭的な支援があります。助成は各自治体によって違いますが、補助する報酬費用に月額の上限を決めて、対象月数を限度として助成を行うのが一般的です。
また、成年後見監督人や補佐監督人、補助監督人への報酬についても別途助成を受けられることがあります。各自治体の窓口で確認することをおすすめします。
まとめ
成年後見人制度は、本人の判断能力がなくなった場合に申請するものと思われることが多いですが、本人に判断能力がある場合でも事前に申請することも可能です。相続による財産分与などで後のトラブルにならないように、事前に決めておくことも一つの方法です。
相談は何度でも無料!FPによる徹底解説&無料相談サービス実施中!