『保険に入ってみようかな?と思ったけど、どの保険が良いのかわからない』という声をよく聞きます。今回は、現役保険営業マンの筆者が、医療保険を比較検討する上で、重要だと思われるポイントを解説していきます。年代別や職種別に気を付けるべき点も記載しているので、ランキングやおすすめという言葉に惑わされることなく自分に合った医療保険の選び方を考えるヒントにしてください。
目次
医療保険を選び始める前の心構え
医療保険を比較検討する場合に肝心なことは、入院した場合どのような保証が必要かということをしっかり考えてから比較検討を行うことです。入院した時に漠然と心配だからという理由で、パンフレットに記載されているプランを容易に選ばないことも大切です。保険商品は自分が必要な保障だけを選択できるようになっています。自分のオリジナルとしてカスタマイズし独自の保険を作ることが出来るのです。そういったことを知ったうえで比較検討することにより自分のためだけの独自の医療保障を手に入れることができます。
事前に確認しておくべき事項
加入している健康保険証の発行先と保障内容
まず最初に行っておくべき重要なことは、ご自身がお持ちの健康保険証の発行先がどこなのかを知ることです。自営業の方は国民健康保険。会社員の場合2種類あり、『協会けんぽ○○支部』と『○○健康保険組合』です。公務員の場合は、『○○共済保険組合』となります。保険証の発行組織により公的保障制度がどのようになっているのかをしっかり確認することが大事です。
日本の医療保障制度は他の国と違ってかなり手厚くなっています。国が中心となっている国民健康保険制度、会社の健康保険制度の内容をしっかり理解したうえで医療保険を比較検討することが大事です。
まず医療費については、健康保険の適用される医療行為を受けた場合医療費の自己負担は3割負担で済みます。また一か月の医療費が一定額を超えた場合は、高額療養費制度により支払った医療費が還付されます。さらに会社員で『○○健康保険組合』発行の健康保険証をお持ちの場合、組合の付加給付としてさらに支払った医療費が還付される制度があります。国の制度の高額療養費制度と健康保険組合の付加給付制度の2重の還付が受けられます。
まずはご自身がお持ちの健康保険証を確認し公的保障がどのようになっているのかを確認し、医療保険を比較検討されることをお勧めします。
日本の公的医療保障の内容
医療費は健康保険証により自己負担が3割になります。その他に医療費が高額になった場合は高額療養費制度があります。高額療養費制度とは、1ヵ月にかかった医療費の合計が定められた上限を超えた場合、上限額を超えた部分が還付される制度です。1ヵ月の上限額は収入により5段階に区分されています。自分がどの区分に該当するかを把握しておくことは非常に大事なことです。なぜなら、この区分により入院給付金額をいくらに設定すれば良いかの目安になるからです。
また、高額療養費に該当しない費用としては、差額ベッド代(個室料金)、食事代など直接医療行為とは関係のない費用があります。高額療養費の該当となる費用と該当にならない費用があるので注意が必要です。高額療養費の計算は一カ月単位で計算されますので、月をまたがって各月の支払いが高額療養費の上限を下回った場合は両月とも還付を受けることができないので注意してください。この制度は1ヵ月単位での計算となりますので覚えておくことが大事です。
知っておきたい医療保険の保障内容8種類
次に医療保険の補償内容について詳しく見ていきます。医療保険には以下のような保障があります。
入院給付金
- 入院した日数×給付金額で支払われる
- 一回の入院に対しての限度日数がある
- 60日、120日など、特定の疾病には無制限になる特約をつけることができる
手術給付金
- 健康保険の適用される手術を受けた場合に給付される
- 手術の種類により給付金額が違う会社と入院の有無により給付金額が違う会社がある(保険会社により違う)
- 最近は手術給付金の支払い条件を入院時か通院時かにより決める会社がほとんど
先進医療給付金特約
- 厚生労働省の定める先進医療を該当の施設で受けた場合に技術料相当額が支払われる
- 同時に一時金を支給する会社もある
三大疾病保険料払込免除特約(特定疾病保険料払込免除特約)
- 特定の三大疾病に罹患した場合、適用条件に該当すれば以降の保険料の支払いが免除される
- 保険会社により三大疾病の内容や支払い条件が違う
三大疾病一時金特約(特定疾病診断一時金特約)
- 保険会社が定める三大疾病(特定疾病)を発症し保険会社が定める支払い条件に該当した場合一時金を受け取れる
- 複数回受け取れる会社と一回だけの会社がある
- 複数受け取れる場合最初と条件が異なることがあるので注意
健康お祝い金特約
- 決められた期間に入院などの給付金を受け取らなかった場合支給される
- 給付金を受け取っても一定の条件下であれば支払いされる会社もある
通院給付金特約
- 入院後や入院の前後の通院治療に対して支払われる
- 支払い条件が会社により異なるので注意
- 支払い制限がある
生活習慣病入院無制限特約
- 保険会社が定めた疾病により入院し60日、120日以上入院した場合や入退院を繰り返した場合
- 支払い限度に関係なく無制限で支払われる
保障内容を検討する際に注意すべきポイント
現在主流の医療保険は入院給付金、手術給付金、先進医療給付金となっています。このタイプの保険は人気があり各保険会社がこぞって新商品を開発して販売した結果、今は価格競争となっています。
日額給付金タイプの保険は入院期間が長引けば受け取れる給付金の額も大きくなります。しかし保険会社は、「給付金の支払いを一定以上は支払いません」というように上限を設けています。いわゆる60日型とか120日型と呼ばれるものです。これらの制約があり入院が長引いても60日、120日までしか給付金が支払われないようになっています。
また入退院を繰り返した場合給付金支払い対象日が通算されますので注意が必要です。支払い対象日のカウントが元に戻るのは退院後6ヶ月経過後からとなります。
タイプ別医療保険の選び方①(年代別)
それでは、前述した内容を踏まえて、年代別に医療保険を選ぶ際のポイントを確認していきましょう。
10代・20代
- 最低限の保障を確保
- 将来は変更することを考える
30代
- 20年先、30年先を見据えての選択が重要
- 医療技術の進歩、医療制度の改革を見据えて考える
40代・50代
- 突発的な入院などに対応できるように考える
- 収入の減少にも対応できるように考える
60代以降
- 長期入院や入退院の繰り返しに対応できるように考える
- 退職後は収入減にも対応できるようにする
タイプ別医療保険の選び方②(職業別)
次に、職業による違いを説明していきます。年代別と組み合わせて、ご自身に必要な観点を確認してください。
会社員の場合
- 健康保険組合の付加給付を確認し最低限の保障を持つ
自営業の場合
- 医療費と所得の両方をカバーすることが大事
- 日額を少し高めに設定するのがポイント
専業主夫・主婦
- 自分の保険証を確認し、配偶者の扶養者であれば、配偶者と同じ考え
- 違う保険証をお持ちの場合、付加給付の内容を確認することが大事
タイプ別医療保険の選び方③(その他)
年代別、職業別以外にも、医療保険を選ぶ際に、考慮すべきポイントがあります。
商品タイプ
- 日額タイプの場合、限度日数に注意して、特約の契約を検討する
- 一時金タイプの場合、保険金が支払われる条件をしっかりと確認する
女性向け
- 女性特有の病気(妊娠高血圧症候群や子宮筋腫 など)や 、がん(子宮頸がんや乳がん)を保証する特約を検討
医療保険を比較検討する際の注意点
医療保険の比較検討においては各保険会社により保障内容に若干の違いがあります。パンフレットなどで記載されている保障内容はほとんど同じです。詳しくは約款を読み込まないとわからないことです。
一例をあげると医療保険には入院給付金の支払い日数の上限があり各社約1000日となっています特定疾病無制限の日数が限度日数と連動している会社があり1000日を使い切ると特定疾病以外の病気で入院した場合給付金が受け取れなくなります。
(がんで通算1000日以上入院した場合他の病気で入院すると給付金を受け取れない)
保障以外のサービスも考慮する
医療保険では保障内容もさることながら、それ以外の付帯サービスもぜひ確認することが大事です。健康や病気に関する無料相談サービスを提供してくれている保険会社が多くなってきています。
医療保険を比較選択する場合は商品ありきで検討するのではなく今の健康保険証で自分が受けることができる公的保障がどの程度まで医療費をカバーしてくれるのかを先に調べておくことが大事です。
万が一、入院となった場合の困ることは何かを考え、「収入」なのか、「治療費」なのか、それとも「両方」なのか。これにより一日当たりの給付金額を設定します。会社員の場合は5,000円以上が基本、自営業の場合は10,000円以上を基本とします。その他心配なことを特約でカバーすることをお勧めいたします。また個室を利用する場合もその金額を上乗せする必要があります。
まとめ
以上のことを踏まえて医療保険の比較検討を行ってください。保険の比較サイトなどのランキングやおすすめ医療保険の情報に惑わされることなく自分に合った医療保険をお選びください。