入院した時に受け取る給付金や死亡保険金にも税金がかかるの?と疑問に思ったことはありませんか?保険会社から支払われるお金は、種類によって税金がかかったり、かからなかったりします。また、契約の仕方によって税の種類も変わるため、納める税額も変わります。今回は、保険金と税について説明します。
目次
医療保険金の受取にかかる税金は?
医療保険の給付金は非課税
医療保険の対象となっている人(被保険者)がけがや病気で入院をした場合、入院給付金が保険会社より支給されます。入院給付金とは被保険者が入院をしたときに支払われる給付金で、契約時に定めた入院日額(1日あたりの金額)を、入院した日数分受け取ることができます。
被保険者が受け取る入院給付金は、所得税法上で非課税と定められています。また、給付金の受取人が被保険者本人でない場合でも、被保険者の配偶者や直系血族(祖父母・父母・子・孫)や、生計を一にするその他の親族が受け取る場合は非課税です。ただし、被保険者の死亡後に入院給付金が支払われた場合や生前に受け取っていた給付金が死亡後も預貯金として残っている場合は、相続税の課税対象になります。
非課税となる給付金の具体例
・入院給付金…契約時に定めた入院日額が入院日数分給付される
・手術給付金…手術をしたときに給付される
・通院給付金…通院をしたときに給付される
・疾病(災害)療養給付金…入院時初期費用などを保障する一時金
・障害保険金(給付金)…不慮の事故や指定伝染病で死亡の場合に支払われる保険金もしくは不慮の事故で身体障害状態になった場合に支払われる給付金
・特定損傷給付金…不慮の事故で保険会社所定のケガをした時に支払われる給付金
・がん診断給付金…がんと診断されたときに支払われる給付金
・特定疾病(三大疾病)保険金…がん・急性心筋梗塞・脳卒中にかかったときに支払われる保険金
・先進医療給付金…公的医療保険制度の対象とならない先進医療を受けたときの治療費が給付される
・高度障害保険金(給付金)…保険会社所定の高度障害状態になった時に支払われる保険金(給付金)
・リビング・ニーズ特約保険金…余命6ヶ月と診断されたときに、死亡保険金の一部を前払いで受け取ることができる
・介護保険金(一時金・年金)…保険会社所定の介護状態になった時に支払われる保険金
参考:生命保険文化センター・主な非課税となる給付金 / 保険金
事故による損害保険金受取にかかる税金は?
自動車保険の損害賠償や補償など、個人が受け取る損害保険の保険金は原則として非課税です。しかし、傷害保険などの死亡保険金は契約形態に応じて、相続税や所得税あるいは贈与税などの課税対象となります。
非課税となる損害保険金の具体例
・対人補償保険…自動車事故で他人を死傷させた場合の賠償として支払われる保険
・対物補償保険…自動車事故で他人の物や自動車を損壊した場合の賠償として支払われる保険
・人身傷害保険…自動車事故で死傷した場合の、実際の損害を補償する保険
・搭乗者障害特約…自動車事故で入院や後遺障害がある時に、あらかじめ契約で決められた金額が支払われる保険
・無保険車傷害保険…自動車保険に入っていない車との事故が原因で死傷して、十分な損害賠償を受けられない場合に賠償の不足分が支払われる保険
・自損事故保険…相手がいない事故に対して支払われる保険
・車両保険…自分の車の修理代などを補償する保険
・火災保険…火災や爆発などの事故に対し、支払われる保険
・傷害保険…ケガが原因の後遺障害や入院、手術、通院に対して支払われる保険
参考:日本損害保険協会
満期保険金や解約返戻金にかかる税金は?
所得税がかかる場合
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、保険差益に対して所得税・住民税が課税されます。保険差益とは、払い込んだ保険料よりも受け取った保険金の方が多かった場合に生じる利益のことです。例えば、払込保険料300万円で満期保険金や解約返戻金が400万円の場合、払込保険料よりも受け取った金額が100万円多いため保険差益は100万円になります。
満期保険金や解約返戻金の保険差益は、「一時所得」という所得に該当し、「一時所得(保険差益) × 1/2」で算出した金額に税率を乗じたものが「所得税」として納付する金額です。具体的な計算式は次のとおりです。
400万円(満期保険金) – 300万円(払込保険料)- 50万円(特別控除額) = 50万円(一時所得)
50万円(一時所得)× 1/2 = 25万円(課税所得)25万円(課税所得)× 税率 = 所得税
※ 一定要件を満たす生命保険を5年以内に解約した場合は、課税方式が異なります。
贈与税がかかる場合
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が別人の場合、満期保険金に対して贈与税が課税されます。贈与税を求める計算式は次のとおりです。
贈与税額 =(満期保険金 + 積立配当金 – 基礎控除110万円)× 贈与税の税率
例えば、「満期保険金 = 500万円、積立配当金10万円」という場合を計算してみましょう。
500万円(満期保険金)+ 10万円(積立配当金) – 110万円(基礎控除)= 400万円(課税所得)
400万円(課税所得)× 20%(贈与税の税率)- 25万円(控除額) = 55万円(贈与税額)
※ 上記の計算式に用いた「贈与税の税率」と「控除額」は、一般税率の400万円以下に該当するものです。
死亡保険金の受取にかかる税金は?
所得税がかかる場合
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合、一時金で受け取った死亡保険金は一時所得になり、所得税と住民税の課税対象になります。一時所得の計算式は次のとおりです。
一時所得の金額 =(死亡保険金 – 正味払込保険料総額)- 特別控除額50万円課税される金額 = 一時所得の金額 × 1/2
※正味払込保険料総額 = 保険料払込総額 – 積立配当金の合計額
もし、死亡保険金を年金で受け取る場合は「雑所得」になります。また、毎年受け取る年金に対し、原則として所得税が源泉徴収されます。
贈与税がかかる場合
契約者(保険料負担者)と被保険者、そして保険金受取人がそれぞれ異なる場合、受け取る死亡保険金は贈与税の対象になります。贈与税額を求める計算式は次のとおりです。
贈与税額 =(死亡保険金 + 積立配当金 – 基礎控除110万円)× 贈与税の税率
例えば「契約者 = 夫、被保険者 = 妻、死亡保険金受取人 = 子」の契約形態で「死亡保険金 = 1,000万円、積立配当金 = 0円」を受け取った場合は下記のようになります。
1,000万円(死亡保険金)- 110万円(基礎控除)× 贈与税の税率(40% – 控除額125万円)= 231万円
※ 上記の計算式に用いた「贈与税の税率」と「控除額」は、一般税率の1,000万円以下に該当するものです。
相続税がかかる場合
契約者(保険料負担者)と被保険者が同じ場合、受け取った死亡保険は相続税の対象です。ただし、保険金受取人が被保険者の相続人の場合は、「500万円 × 法定相続人の数」の金額が非課税となります。(相続を放棄しなかった場合のみ適用)
死亡保険金を年金形式で受け取る「生活保障保険」や「収入保障保険」は、原則として年金を受給する「権利」に対して相続税が課税されます。しかし、保険金受取人が相続人の場合は、非課税枠の対象です。
また、実際に受け取る「年金」に対しては、年金を受け取るごとに所得税が発生します。年金受け取り初年度は全額非課税ですが、2年目以降は所得税を徴収されるようになっています。
生命保険を使った賢い相続税対策とは?
保険金契約者と受取人の設定に注意
契約形態の違いにより、受け取る保険金にかかる税の種類が異なります。家族により多くの生命保険を残したい場合は、契約者と被保険者を同一にして保険金受取人を法定相続人にしましょう。法定相続人とは、配偶者や直系血族(祖父母・父母・子など)、そして兄弟姉妹です。
例えば「契約者・被保険者 = 夫、保険金受取人 = 妻・子」の契約形態の場合、受け取った保険金は相続税の対象になります。しかし、法定相続人が受け取る場合の非課税枠が適用されるので、多額の遺産相続がない限り相続税は発生しないケースが多いです。
また、相続では住宅を兄弟2人で相続するケースも考えられますが、住宅を2つに分けることは考えにくいため、兄弟のどちらかが住宅を相続することになるでしょう。どちらかが住宅を相続する場合、住宅を相続しない方に対して住宅の資産価値の半分に相当する「別の資産」を準備する必要があります(代償分割)。「別の資産」の準備として保険金を活用することもできます。
相続税は、被相続人が死亡した日から10カ月以内に納付する必要があります。相続税は、土地や建物あるいは権利などにも課せられます。また、納付する相続税額が高額になり相続した現金や相続人の預貯金で相続税の支払いが困難な場合も、保険金で支払うことが可能です。
まとめ
契約者や被保険者、受取人を誰にするかによって、税の種類や納税額が大きく変わることが分かりました。もし、現在加入している契約が贈与税を生じさせる形態になっている場合は、(特別な理由がない限り)受取人の変更手続きを進めた方がいいかもしれません。保険と税への知識を深めて、賢い対策をしておきましょう。