賃貸住宅へ入居中に火災を起こしたときには、どのような責任が生じるのでしょうか。今回は賃貸住宅でも火災保険に加入する理由や、火災保険の補償範囲などを解説します。
目次
賃貸で火災保険に入る目的
失火で大家への賠償責任は生じない
賃貸住宅へ入居中に火災を起こすと「失火責任法」が適用されることになりますが、重大な過失がないとみなされたときは損害賠償責任の対象外になります。その場合、原則として「失火」扱いとなり、建物や部屋などの建て替え費用負担が免除されます。そのため、大家側では火災保険や家財保険へ加入することで賃貸物件での火災に備えています。
重大な過失がある場合賠償責任が発生
賃貸住宅の火災で借主に重大な過失があった際には「賠償責任」が発生することがあります。重大な過失にあたるのは、「台所のガスコンロの火をつけっぱなしにした」「煙草の吸殻を火が付いたまま放置した」「ストーブをつけたままにした」などの行為が挙げられます。
裁判では案件によって判例が異なる場合もありますが、「失火」と「賠償責任」の違いは火災保険の加入を検討する上でのポイントであると言えます。
部屋の原状回復と家財の補償が目的
賃貸住宅へ居住する際に加入を求められる火災保険は、部屋の原状回復と自宅の家財への補償が目的とされています。そのため、賃貸住宅の入居者は「借家人賠償責任補償」と「家財保険」へ加入することが一般的です。
「借家人賠償責任補償」とは、賃貸契約の原状回復義務にもとづき、火災などによって損なわれた部屋を入居前の状態へ戻す必要がある場合に適用されます。「家財保険」は家財の新価(同等のものを新たに購入する際に必要と考えられる金額)の範囲内で保険金額の設定が可能ですが、1個または1組あたり30万円を超える場合には申告が必要となる場合もあります。
個人賠償責任補償がついている保険も
賃貸住宅の保険に「個人賠償責任補償」がセットされている場合、火災以外についても補償されることがあります。「個人賠償責任補償」とは、第三者の身体や財物に対して損害賠償を負った際に適用され、日常生活でも多くのケースが対象となります。
賃貸住宅においては、漏水により下の階の部屋に損害を与えたり、ベランダから物を落として人に怪我をさせたりした際に補償対象となることがあります。
賃貸では不動産会社の保険に入るべき?
不動産会社の保険プランがある場合も
不動産会社で賃貸契約を行う際に火災保険へ加入する場合もありますが、セット内容や補償額が一定の火災保険プランが提示されることがあります。保険料を切りの良い金額に設定している場合もあります。不動産会社から勧められる火災保険には特定のプランが多く、自分のニーズに合わせたものではない可能性もあることを念頭に置いておきましょう。
家財補償は減額が可能
家財保険は家族構成や所持家財によって補償額が変わりますが、不動産会社から勧められる火災保険は個々の状況が反映されていない場合があります。単身での居住だと補償額が大きすぎる場合や、家族が多いと補償額が不足する場合なども考えられます。契約する際にはよく補償内容を確かめ、必要に応じて保険金額を減額・増額するなどの対応が可能です。
火災共済などほかの保険も選択肢
不動産会社から勧められるもの以外にも、損害保険会社が発売する火災保険、生協やJAが提供する火災共済などさまざまな選択肢があります。火災保険に加入する際には、補償内容・保険料・特約などを考慮し、自分に合ったものを検討するようにしましょう。
賃貸借契約の期間中に引越した場合は?
転居後の住宅で継続することも可能
転居をしても、加入している火災保険の継続が可能となる場合があります。加入先の火災保険会社へ住所変更手続きをすればそのまま引継ぎができることもありますが、建物の構造・材質などによって補償の追加や変更が必要となることもあります。管理会社指定の火災保険へ加入しなければならない賃貸物件へ転居する場合などは、加入中の火災保険を解約し、新たに指定の火災保険へ加入する必要があります。
解約時には解約返戻金が戻る
「一定期間の保険料を一括で支払ったものの、保険期間の途中で転居する」という場合、解約時には期間に応じた返戻金を受け取れることがあります。賃貸契約では、指定の保険へ加入を義務付けている場合がありますが、解約については定められていないケースもあるため、一度確認してみましょう。
まとめ
賃貸住宅でも火災保険に加入するのは、部屋の原状回復や家財への補償などが目的であると言えます。内容がよくわからないまま火災保険へ加入しているという場合には、補償内容や解約金などについて把握しておくとよいかもしれません。