扶養する家族がいる人は万が一のときの備えが必要ですが、収入保障保険はどういった保険なのでしょうか。収入保障保険が必要な人もいれば、必要ではない人もいます。収入保障保険の特徴やメリット、デメリット、向き不向きなどについてまとめました。
目次
収入保障保険とは
収入保障保険はとはどういった保険なのか、定義や所得補償保険との違いについてみていきましょう。
年金形式で受け取る生命保険
収入保障保険は死亡や高度障害に備える生命保険の一種で、万が一の際に残された家族の生活を保障が必要な期間支えることを目的としています。死亡保険金は年金形式で、残りの保険期間の間、受け取ることができるため、受け取れる保険金の総額は、被保険者が死亡したタイミングによって変わります。
たとえば、30歳から60歳までの保険期間で、万が一の際には、月々10万円の保険金を受け取る場合、40歳で亡くなった場合に受け取れる保険金の総額は20年間で2,400万円です。50歳で亡くなった場合は、10年間で1,200万円になります。
収入保障保険は、決められた保険期間だけ保障を受けられる掛け捨ての保険です。ただし、2年や5年の最低保障期間が決められ、保険期間満了の直前に亡くなった場合も、最低保障期間の間は、保険金を受け取ることができます。
保険金の受け取り方は、毎月受け取るタイプと毎年受け取るタイプがあり、商品によって選ぶことも可能です。保険金を一時金として受け取ることもできますが、年金形式で受け取る総額よりも減ります。
また、収入保障保険には、がん保障つきや三大疾病保障つきなど、がんや三大疾病にかかったときに、保険料の支払いが免除され、保険金が支払われる商品もあります。ただし、通用の収入保障保険よりも保険料は割高です。
所得補償保険との違い
収入保障保険と混同しがちなものに、所得補償保険や就業不能保険があります。所得補償保険と就業不能保険は同じもので、病気やケガで働くことができなくなった場合に、一定期間、毎月、保険金を受け取れる保険です。
所得補償保険は死亡したときに備える収入保障保険とは、加入の目的が異なります。また、収入保障保険は10年、20年といった長期の契約が中心ですが、所得補償保険は1年ごとに更新する商品が多いです。収入保障保険は掛け捨てなのに対して、所得補償保険は保険金を受け取らなかった場合には、保険金の一部が戻ってくるタイプが多いという違いもあります。
収入保障保険のメリットとは
収入保障保険にはどういったメリットがあるのでしょうか。収入保障保険の特徴をもとにみていきます。
保険料が安い
収入保障保険は、定期保険よりも割安な保険料で大きな保障を用意できることがメリットです。
定期保険は10年ごとに更新し、更新のたびに保険料が上がっていく更新型の商品が多く、死亡リスクが高まる40代や50代になると保険料が高くなっていきます。一方、収入保障保険は55歳や60歳、65歳、70歳までといった年齢までの保険期間を選んで加入します。保険期間中の保険料は一定ですので、保険料が上がることなく、割安な保険料が維持されるのです。
効率的に保障を用意できる
収入保障保険は、効率よく必要な保障を備えられることもメリットです。生活費や住居費、教育費など、残された家族に必要な保障の総額は、保険に加入した時点から、年月が経過するにつれて減っていくことが一般的です。また、生活費や教育費などは、亡くなった時点で一度に必要になるわけではありません。
収入保障保険は、亡くなった時点で必要な保障を分割して年金形式で受け取っていくため、保険料を抑えた効率的な保険といえます。
また、下記の記事では収入保障保険の基本について深堀りされています。加入を考えている人は参考にしてみてください。
収入保障保険のデメリットとは
一方で、効率的に万が一の事態に備えられる収入保障保険にもデメリットがあります。
掛け捨てで無駄になる可能性がある
収入保障保険は、決められた保険期間の間だけ保障が受けられる、有期の掛け捨ての保険です。死亡や高度障害に見舞われることなく、保険期間が満了すると、保険金を受け取ることはなく、保険料も戻ってはきません。また、保険期間を1日でも過ぎてから亡くなった場合も、保険金は支払われません。
ただし、収入保障保険は貯蓄機能がないことがデメリットですが、少ない保険料で万が一の際の大きな保障を用意できることの裏返しです。
受け取れる保険金の総額が減っていく
収入保障保険は、受け取れる保険金の総額が減っていくことはデメリットともいえます。最低保障期間はあるものの、大学の入学金や学費といったまとまった出費がある場合、残された保険期間に支払われる保険金では足りないことがあります。また、収入保障保険はまとまったお金を手に入れるために、一括で支払いを受けようとすると、年金形式で受け取れる保険金の総額よりも減ってしまうため不利です。
ライフプランにもとづいて、まとまったお金が必要な時期に向けて、学資保険などほかの備えもしておくか、十分な貯蓄を用意しておく必要があります。
収入保障保険の受け取りに税金はかかる?
収入保障保険の保険金は課税対象になります。契約形態や保険金の受け取り方によって、課税される税金は変わってきます。
一時金として受け取る場合
夫が被保険者であり保険契約者で、妻、あるいは子どもが保険金受取人の場合など、被保険者と保険契約者が同一で、保険金受取人が別のケースでは、一時金にかかる税金は相続税です。生命保険の保険金は相続財産には含まれませんが、みなし相続財産という位置づけです。
相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除がありますが、生命保険の保険金には別枠で、「500万円×法定相続人」の非課税枠があります。たとえば、法定相続人が妻と子ども2人の3人の場合、1500万円まで非課税です。
被保険者が夫で、保険契約者と保険金受取人が妻の場合など、保険契約者と保険金受取人が同一で、被保険者が別の場合は、一時金は一時所得となり、所得税の対象です。一時金から払込済み保険料と特別控除額の50万円を引いた額が一時所得となります。一時所得は1/2が課税対象額となり、給与所得などほかの所得と合計した所得に対して、所得税が課税されます。
被保険者が夫、保険契約者が妻、保険金受取人が子どもの場合など、被保険者と契約者、保険金受取人が異なる場合は、一時金は贈与税の課税対象です。贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
年金で受け取る場合
収入保障保険の死亡保険金を年金で受け取る場合、1年目に受けとる保険金に課税される税金は、一時金として受けとる場合と同様に契約形態によって異なります。
2年目以降の年金は、雑所得として所得税の対象となります。ただし、1年間の保険金の受取総額から金、受給権評価額や必要経費として払込済み保険料の一部を按分した金額が差し引かれ、給与所得者の場合、20万円以下の雑所得には確定申告の義務がありません。実際には所得税がかからないことが多く、課税された場合も少額であるケースが少なくないです。
収入保障保険が必要で向いている人
収入保障保険は割安な保険料で、万が一の際に定期的に保険金が受け取れるのが特徴です。収入保障保険による備えが必要で向いている人とはどんな人でしょうか。
子どもが小さく貯蓄が少ない
子どもが小さいときには、生活費や住居費、学費など、将来に向かって大きな額のお金が必要になります。しかし、若い夫婦の場合、貯蓄が少ない人が少なくないでしょう。万が一の際に、家族の生活を維持するために保険による備えが必要です。
収入保障保険は長期間、定期的に保険金を受け取れるため、残された家族の生活を支える備えとして向いています。また、高額な保険料を長期間払い続けることは家計への負担が大きいですが、収入保障保険は残りの期間だけ保険金が支払われる収入保障保険は、保険料が割安なことも向いている理由です。
子どもがいて今後の生活が変わらない人
収入保障保険は受け取ることができる保険金の総額は、亡くなったタイミングによって変わります。最低保障期間はあるものの、保険期間満了に近づくにつれて、保険金の総額が減ることに不安を感じる人もいるかもしれません。加入時よりも子供の人数が増えると、必要な保障額は上がります。
子どもがいる人で十分な貯蓄がない人は、何かしらの備えが必要です。子どもの人数が今後増えない人、年齢を重ねても生活が贅沢にならない人など今後の生活が変わらない人に、収入保障保険は向いています。
収入保障保険が必要ない人
掛け捨てで万が一の際に定期的に保険金が受け取れる収入保障保険は、誰にでも向いた保険ではありません。収入保障保険が必要ない人とはどのような人でしょうか。
独身の人や扶養する家族のいない人
独身の人や共働きで子どものいない夫婦など、扶養する家族のいない人には、終身保険は必要ありません。基本的に収入保障保険は残された家族を維持していくために加入する保険です。
ただし、独身の人や共働きで子どものいない夫婦は、必ずしも保険による備えが不要というわけではありません。亡くなったときには、葬儀費用やお墓代、身の回りの物などの処分費用など死亡保険金として、お墓がある場合は200万円~300万円程度、お墓がない場合は500万円程度必要です。
収入保障保険は一時金として受け取ると不利であり、受け取れる保険金の総額は年月の経過とともに減っていくため、死亡整理金にあてる目的での加入は向いていません。死亡整理金を保険で備える場合には、終身保険や定期保険への加入を検討しましょう。
十分な蓄えのある人
残された家族の生活を賄える十分な蓄えがある人は、収入保障保険は必要ありません。収入保障保険や定期保険などの掛け捨ての保険は、万が一の事態が起こらなければ、保険料の分損をしています。
お金が手元にあると使ってしまわないか不安な人は、終身保険がおすすめです。終身保険は一生涯保障が続くので、必ず保険金が受け取れ、解約した場合には解約返戻金が支払われます。相続税の基礎控除とは別に、生命保険の死亡保険金には非課税枠がありますので、相続税対策としても有効です。
まとまった保障が欲しい人
収入保障保険は基本的に年金方式で受け取る保険ですので、一時金として受け取ると、年金として保険金を受け取った場合の総額よりも、少ない額になってしまいます。収入保障保険は、大学や専門学校への進学費用など、まとまったお金を用意する目的で保険への加入を検討している人には不向きです。
定期保険や終身保険であれば、万が一の際には、死亡保険金を一括で受け取れます。また、教育資金が目的であれば、学資保険に加入すると進学するタイミングで、まとまった資金を手にすることができます。
収入保障保険の選び方
収入保障保険にはさまざまな生命保険会社の商品がありますが、保険料以外にどんな点を比較して選んだらよいのでしょうか。収入保障保険の選び方をまとめました。
月額の年金の選択範囲
収入保障保険の保険金の月額は、「10万円・15万円・20万円」といった形で、5万円単位で設定されている商品や、5万円から選べる商品、20万円以上の金額も選択できる商品、1万円単位で設定できる商品などさまざまです。
収入保障保険は、万が一の際に支払われる保険金は月額でいくら必要なのか計算し、自分に合った金額が選択できる保険を選ぶのが基本です。遺族年金など公的に支給されるお金を踏まえたうえで考えましょう。
支払い保証期間の選択
収入保障保険は死亡や高度障害の状態になったときから、残りの保険期間の間、保険金を受け取ることができますが、保険期間満了となる間際に亡くなった場合に備えて、最低保障期間が設けられています。
最低保障期間は2年、または5年から選べる商品が多く、1年や10年といった期間を設定できる商品もあります。基本的に保障が必要な期間を保険期間としますが、保険期間満了となる間際に亡くなった場合に、生活を立てなおすために、どの程度の期間の保障が必要か考えて選びましょう。
保険期間の選択
収入保障保険は、「55歳・60歳・65歳・70歳」といった5歳刻みで、保険期間満了の年齢を選ぶ商品が多く、70歳が設定されていない商品もみられます。保険料の支払いは、保険期間と同じ商品が中心ですが、保険料払込期間を選び、早期に支払いを終えられる商品もあります。
保険期間は子どもが独立するまでの期間や定年退職するまでの期間など、家族が被保険者の収入を必要とする期間ですので、ライフプランに合わせて検討しましょう。
まとめ
収入保障保険は万が一の際に定期的に保険金を受け取れ、割安な保険料が特徴です。保険料の負担を抑えたい人でも、大きな保障を手に入れることができます。家族の状況を踏まえたうえで、収入保障保険など自分に合った保険に入り、万が一に備えておきましょう。