保険を途中解約した際に受け取るお金を「解約返戻金」と呼びます。この記事では、終身保険の解約返戻金について紹介します。解約を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
終身保険の解約返戻金とは?
解約返戻金とは「解約時に戻るお金」
保険の契約中、被保険者に万一のことがあったときに支払われるお金は「保険金」ですが、解約をしたときに支払われるお金は「解約返戻金」と言います。加入から解約までに支払った保険料の総額と同額とは限らない、という点がポイントです。
解約返戻金は、保険の種類や解約タイミングなどによって金額が変わります。解約返戻金がいくらなのかということは、保険会社へ確認すると知ることができます。支払った保険料の総額と比較し、納得ができたら解約の手続きに進むと良いでしょう。
保険解約返戻金には税金がかかる
解約返戻金を受け取ったときに税金がかかるのは、解約までに支払った保険料の総額と解約返戻金とを比較し、返戻金のほうが多かった場合です。契約者と受取人が同一人物であったときには、所得税が課税されることになります。
解約返戻金を一時金で受け取ったときに支払う所得税は、「一時所得」という扱いです。一時所得の計算方法は、以下の通りです。
【(解約返戻金-支払保険料総額-50万円(特別控除))×1/2】=課税対象額
一時所得の税金額は、課税対象額に税率を掛けて求めます。税率は、その他の所得状況や控除などにより異なるため、詳細は確認を行ってください。
解約返戻金を年金形式(分割)で受取ったときに支払う所得税は、「雑所得」となり、年金形式で受け取る場合は、毎年支払うことになります。雑所得の計算方法は、以下の通りです。
【その年の受取年金額-必要経費(その年の受取り年金額に対応する払込保険料)】=課税対象額
課税対象額が25万円以上だった場合、課税対象額の10.21%が年金額より源泉徴収されます。課税対象額が25万円未満の場合、源泉徴収は行われません。
保険解約返戻金の金額はいくら?
定額終身保険は契約時の確定額
多くの定額終身保険では、契約時に保険金・解約返戻金の金額が決まります。契約後の各タイミングでの返戻率(支払った保険料に対してどのくらいお金が戻って来るか)が分かっているため、終身保険の貯蓄の面を利用した資産作りがしやすい商品だといえるでしょう。
低解約返戻金型終身保険も契約時の確定額
低解約返戻金型終身保険には、「保険料払込期間中に限り、解約返戻金額が通常の70%程度に設定されている」という特徴があります。低解約返戻金型の終身保険についても、返戻金の金額は契約時に決まります。
保険料払込期間は解約返戻金額が抑えられている分、保険料が割安であるという点がメリットと言えます。払込期間が終了してしまえば通常の解約返戻金額に戻るため、保険料を支払っている期間に解約することがなければ効率良く資金を増やすことができると言えます。
一方、デメリットは、保険料払込期間中に解約したときには解約返戻金額が少なくなるという点です。できるだけ途中解約をすることのないよう、内容や保険料について確認してから加入するように心がけましょう。
積立利率変動型終身保険は金利による
積立利率変動型終身保険は、積立金(支払った保険料からその保険を維持するための手数料などを差し引き、実際に積み立てられるお金)に適用される利率が、市場金利に応じて一定期間ごとに見直される保険です。商品によっては「利回り変動型」と呼ばれることもあります。
メリットは、保険の契約中に金利が上がれば保険金額や解約返礼率がアップするという点です。市場の金利が利率という形で反映されるため、インフレにも対応しやすい商品です。
金利が上がらなかった場合には、契約時に決まった最低保障の数字が適用されるという点がデメリットと言えます。最低保障の金利は保険会社や商品によって異なりますが、場合によっては積立金がほとんど増えないということもあるため、契約時には詳細を確認することが大切です。
解約返戻金をより多く受け取るには?
保険料払込満了前の解約は避ける
保険料払込期間中に解約をすると、解約返戻金が支払った保険料の総額より少なくなってしまうことがあります。そのため、保険料払込期間中の解約は避けた方がよいとされています。
資産状況の悪化などにより解約を検討しなければならなくなったときには、保険料の減額や契約者貸付(解約返戻金を担保にお金を借りる)の利用、払済保険への変更(以降の保険料の支払いをストップする)などの方法で、出費を抑えながら保険契約を継続するという選択肢もあります。保険料払込期間は安易に解約へ踏み切らず、よく考えてから決めるようにしてください。
解約時期はできるだけ先送りする
保険料払込期間が終了した後も積立金が増えていくというのが終身保険の仕組みです。そのため、出来るだけ長く契約を続けたほうが、解約返戻金が多くなるという傾向があります。保険料支払期間が終了したからといって、すぐに解約をするのは得策ではないかもしれません。
資金が必要となったからと言ってすぐに解約を選択するのではなく、他の資産のことも考慮してライフプランを見直すようにしましょう。自分だけで考えるのが不安だという人は、保険会社のスタッフやファイナンシャルプランナーに相談するという方法もあります。
外貨建ての終身保険を活用する
金利が低い状態が続く傾向にある日本においては、終身保険の積立利率もそれほど高くありません。そこで、積立利率の高い商品として発売されたのが「外貨建ての終身保険」です。
外貨建ての終身保険のメリットは、利率の高い外貨で積み立てを行うことで、通常の終身保険よりも高い積立利率を実現できる点にあります。為替の状態によっては、差益を利用してより多くの解約返戻金を受け取れることも考えられます。
デメリットは、手数料が多めに掛かる点です。手数料額は商品や保険会社によって異なるため、契約の前にきちんと確認してください。また、為替や景気の変動次第で、外貨から日本円に戻したときに解約返戻金が減ってしまう可能性があるという点についても覚えておかなければなりません。
終身保険の解約返戻金に税金はかかる?
たいていの場合は非課税
前述の通り、解約返戻金を一時金で受け取った場合の所得税は【(解約返戻金-支払保険料総額-50万円(特別控除))×1/2】で計算できます。
つまり、支払った保険料の総額より解約返戻金が少ない場合であれば、所得税は原則としてかかりません。解約返戻金が支払った保険料を上回る場合でも、50万円の特別控除によって非課税となるケースが多いと考えられます。
ただし、変額終身保険で多額の解約返戻金を得た場合や、利率が高い終身保険を解約した場合などについては所得税がかかることもあります。解約の手続きをする際には、所得税の有無も確認しておきましょう。
税金がかかる主な例を紹介
すでに説明した通り、契約者(保険料を支払う人)と受取人(保険金や解約返戻金を受け取る人)が同一人物の場合には所得税が課税されます。しかし、契約者と受取人が異なる場合には「贈与税」の対象となるため注意しなければなりません。契約者と受取人が異なるケースとしてよくみられるのは、「契約者が本人で、受取人がその配偶者」「契約者が親で受取人が子供」「契約者が祖父母で受取人が孫」というパターンです。
贈与税には1年間で110万円の贈与までは非課税となる基礎控除がありますが、110万円を超した分に関しては返戻率に関わらず受取った解約返戻金の全てに税金が掛かります。また一般的には、所得税よりも贈与税のほうが高くなることが多いため、解約返戻金が贈与税に該当するような契約を進めたい場合には税金のことをよく理解しておきましょう。
まとめ
終身保険は、万が一のときの保障が一生涯続く保険です。しかし、資産状況によっては、途中で解約する必要が生じるかもしれません。商品の種類や解約のタイミングによって、受け取れる解約返戻金額は異なります。損をしてしまうことが無いよう、解約に際しては保険会社や専門家などに相談してみてください。